ドローンの進化と普及は民生用だけに限らず軍用でも著しく進み厄介な時代に

(写真:ロイター/アフロ)

 ドローンといえば、従来の交通手段を利用できないような地域での新たな輸送手段として注目されるといった明るい話題には事欠かない昨今であります。運搬重量に対するエネルギー効率はまだ改善の必要がかなりありますが、必要な場所へ高さや道路事情を考えずに直接搬送できるドローンの使い方自体は革命的であり、非常に将来に向けて展望が拓けている、素敵な分野であるのは事実です。

ANA、五島列島でドローン配送実験 離島の利便性向上へ(Aviation Wire 19/9/10)

 民生用ドローンの技術進化に伴う性能向上と大型化によって、生活用品や食品、医薬品などのかさばる荷物を搭載して比較的長距離を飛行できるようになりつつあります。日本では山間部や沿岸部・諸島部など交通・道路事情が良くない地域への日用品搬送の切り札にできる可能性もあります。

 しかしながら、ドローンといえば普段社会の表にはあまり出てこない軍事用途の分野においても普及が急激に進みつつあり、昨年にはベネズエラで反政府組織によるドローンを使った爆撃事件が報じられました。

ベネズエラ大統領を暗殺未遂、演説中にドローン爆発 謎の反体制派が犯行声明(AFP 18/8/5)

 この犯行に用いられたドローンは比較的入手が容易な民生用ドローンを転用したものだったようですが、こうした民生用とはレベルの違う本格的な軍用に特化したドローンも以前に比べれば価格も下がり、軍備に予算をあまり割けないような国家などにも入手が可能となりつつある状況であるといわれています。つまり、高度なミサイル兵器や運行用レーダーを持たない貧相な軍閥でも、ドローンにカメラと爆弾を搭載して送り込むことで充分な戦果が期待できるという意味で「貧者の槍」となっていることは特筆するべきことです。

兵器も安くて高性能…中国製の軍事用ドローンが欧州進出(BUSINESS INSIDER JAPAN 19/9/15)

多くの国、特に、厳しい輸出制限の関係でアメリカからこのテクノロジーを入手するのに苦労している国々が、中国のドローンを購入している。中国は中東で多くのドローンを販売してきた。

出典:BUSINESS INSIDER JAPAN

 こうした形で世界各国に軍用ドローンが普及していけば突発的な有事が起きる可能性を避けるのはかなり困難となりますし、残念ながらすでにそうした事態が起きてしまっています。

サウジの石油施設にドローン攻撃、生産半減 フーシが犯行声明(CNN 19/9/15)

イエメンの反政府武装組織フーシが同日、傘下のテレビ局「アルマシラ」を通して犯行声明を出し、東部アブカイクとクライスにある施設を無人機10機で攻撃したと発表した。

出典:CNN

ドローン10機がサウジ石油施設を攻撃、生産半減(MITテクノロジーレビュー 19/9/17)

イエメンの反政府武装組織フーシは、今年に入ってから多数の攻撃でドローンを使用し、サウジアラビアのミサイル砲台やその他の油田が被害を受けている。このような攻撃では、通常、爆発物を積んだドローンが、高速で標的に向かって飛んでいく。以前の攻撃では市販の標準的なホビー向けドローンが使用されており、飛行距離は限定的だった。だが、最近の攻撃ではより高性能なモデルを使用し、飛行距離は約1500キロメートルを超えると1月に国連は報告している。

出典:MITテクノロジーレビュー

 各種報道などからこの攻撃には民生用を転用したようなちゃちなものではなく高性能な軍用ドローンが起用された可能性が高そうです。はたして先の記事にあった中国製なのかどうかは現時点では不明ですが、中東向けに多く販売されているという事実があることからその可能性は否定できません。

 民生用ドローンの世界市場におけるシェアは中国メーカーが圧倒しているわけですが、軍用ドローンでもそうした流れになりつつあるようです。ドローンの運行については許可制にするべきという議論はすでにかなり出ているうえ、今回のような事態になりますとドローン自体を軍事転用可能な兵器として捉え、輸出管理の対象にしようという話が出てきます。

 今回のサウジ石油施設への攻撃により原油価格が現在急騰しており世界経済への影響は避けられない流れですが、もし攻撃に利用されたドローンの出自が中国製であると判明するようなことがあれば米中貿易摩擦の余波もさらに拡大を避けられない可能性があり、なかなか厄介な話だなと感じます。

 一方で、軍事消息筋の話として、ドローンが如何に革新的な技術であろうと、わずか10機の軍事ドローン(Weponaized Drone)で19か所の重要拠点に壊滅的な被害を与えられるようなオペレーションは組むことは困難で、他の攻撃の伏線があるのではないかという観測も出ているのは事実です。

Saudi coalition says Iranian weapons used in oil attacks(Axios- Rebecca Falconer 19/9/17)

An official told CNN that such a strike could not be carried out with 10 drones, which the Houthis claimed to have used. "You can't hit 19 targets with 10 drones like that," the official said.

(抄訳) CNNは「フーシ(攻撃したとされるシーア派の一派)はやったと言うとるけど、サウジアラビアの当局は10機のドローンで19か所の攻撃をするなんて無理に決まっとるやろ」とコメントしている。

出典:Saudi coalition says Iranian weapons used in oil attacks

 そのサウジアラビアは原油の輸出能力が半分近く毀損されたようだと報じられ、アメリカとイランの間での対立だけではない要素も出てきているようですが、これらの戦争でエネルギー算出のためのインフラが選択的に攻撃されることで混乱が広がるのは日本にとっても望ましいことではなく、アメリカが介入するとどうなるのか、また、日本がどういう役割を果たすべきなのかはそろそろきちんと議論しておくべきタイミングになっていると思います。

 本件では、自由民主党に無事入党した長島昭久さんがホルムズ海峡有事に対する日本の役割について論考し、また、宮家邦彦さんがこの議論に反応していましたが、どうもアラブ世界では事態がより悪い方向に進んでしまっているように思います。

ホルムズ海峡 柔軟に考え、日本ができることをやる(長島昭久 | 毎日新聞「政治プレミア」 19/8/16)

中東の原油、日本はどう守る 「有志連合」へのご意見募集 | 長島昭久さんの寄稿に一言(宮家邦彦 | 毎日新聞「政治プレミア」 19/9/11)

 実のところ、資源輸入国である日本はアラブ地域の平和にエネルギーの安定供給を依存している面は大きいこともあり、いかに対策を取っていくべきなのか(あるいは、関与しない方針でいくべきなのか)は考えていくべきではないかと思います。