悪質業者による「サクラレビュー」問題が広がり、今度は「サクラプレスリリース」まで出現の怪

(写真:アフロ)

 怪しいネット広告といえば以前は芸能人などを巻き込んだステマブログなどがその典型でした。しかしネットにおける情報流通のトレンドが変わるにつれてステマブログ的なものの影響は小さくなる一方、検索結果を導線とした先にあるAmazonのような巨大ECサイトに表示されるユーザーレビューの影響がいよいよ大きくなってきています。その結果として、怪しい業者が大量の不正レビュー、いわゆる「サクラレビュー」を投入する時代となってしまいました。

 主戦場はAmazonとよく名指しされる背景には、もちろんAmazonがそれだけ多くの人々に浸透したECサイトになったことが主要因です。しかし一方で、Amazonでは中国系業者なども大量に入り込み、これらの悪質業者が偽装IPアドレスや架空アカウントでの売買なども駆使してユーザーをなかば騙すようなサクラレビューをあからさまに増やしていたとしても、Amazonの側でそれを積極的に排除していないように見えることも理由に挙げられます。まだ日本で販売されていない商品が堂々とAmazonで売られ、そこで堂々と日本語で素晴らしい使用感で☆5をつけて絶賛するレビューが10個単位でついてしまうケースや、Amazonの出店ガイドラインも守られないまま、あたかもAmazonオフィシャルの販売であるかのように偽装するサイトを長きにわたり掲載しているといったケースも散見されます。有志が違反を見つけて通報しても対処されるのはそれほど多くない印象で、このあたりはAmazonの怠慢と批判されても仕方がないように感じます。

 Amazonも頑張って対処しているようにも見えるのですが、それ以上に悪質業者によるサクラレビュー問題が後を絶たないのは、それだけサクラによる絶賛レビューに騙されてしまうAmazon利用者がいて、サクラレビューを繰り返すことがAmazonで店を成功させ利益を出すために当然やるべきことというレベルにまで汚染が広がっていることが背景にあると考えられます。みんな、そうすることで儲かる、しなければ儲からないから、やるのでしょう。

 当然ながら、そうしたECサイトに表示されるユーザーレビューの数々が必ずしも信用できるものでないということは多くの消費者が気付いている状況でもありますが、だからといってすべての人がどのレビューを信用できるか判断するまでのリテラシーを持ち合わせていないという事情もあります。そうした悩みは万国共通ということなのでしょう、最近は海外でも国内でも不正レビューを判定するらしい便利なサービスやアプリが登場しています。

Amazonの不正レビューを判定するだけではなく「なぜ不正レビューと判定されたのか」も詳しく教えてくれるネットサービス「ReviewMeta」(GIGAZINE 19/7/16)

Amazonの偽レビューがうざすぎて、「レビュー判定アプリ」を作っちゃった話(BUZZFEED 19/7/25)

 これはこれで、興味深い現象です。

 はたしてこうしたサービスやアプリがどこまで信頼できるのかは対象となる製品ごとにかなり差が生じるのではないかと想像されますが、判定を100%鵜呑みにするのではなく、あくまでも参考意見程度にして最後はユーザー自身が自分で判断するという使い方をするのなら役に立つこともありそうです。ただちょっと危険だなと感じるのは、こうしたツールが出てくれば、当然ながら不正レビューをぶち込んでくる輩はこうしたツールの裏をかいて見事信用できるレビューだと判定されるような工夫をしてくるはずでして、結局はイタチごっこにしかならないだろうなと思うんですよね。なかなかむつかしい…。

 で、ECサイトに不正レビューがあるのは世界の常識という残念な時代であるわけですが、不正レビュー業者はどうやってそうしたレビューを量産しているのかその背景を知ることができるようなニュースがありました。

Facebookはいまだに偽レビューを売買するグループであふれている(TechCrunch Japan 19/8/8)

Facebookのプラットフォームでは、業者が複数のFacebookグループを運営し、商品や現金(またはその両方)と引き換えに偽のレビュー記事を書くライターを募集していた。

(中略)

偽レビューを取り扱うわずか9つのFacebookページで、7月に5万5000件を超える新規投稿を発見したという。つまり、1日に数百の「または数千にものぼる」投稿が生成されていることになる。

出典:TechCrunch Japan

 毎日このペースでサクラレビューが作られているのだとするともはや簡単には止められそうになく、またそうした実態から推し量るに不正レビューを活用して後ろ暗い商売をやらかしているような界隈そのものが相当な過当競争の真っ直中にありそうでして、まさにそうした連中が生き残りを賭けてこんどはPR業界を便利に使っているらしいという話が舞い込んできました。

ライバルセラーの評判を下げる目的か。プレスリリース配信サイトの汚染が加速した日(ヤフーニュース個人 武者良太 19/8/7)

Amazonのカスタマーレビューの場において、ライバル関係にあるセラーの評判を下げるためのレビューテクニックがあると聞いたことはあります。しかしリングを超えて、PR TIMESというプレスリリースサイトで非難をするというのは、アバンギャルドな飛び道具すぎですよね。

出典:ヤフーニュース個人

 いやはや、こんなリリースをPR TIMESもよく受けたなという感じですが、料金を払ってくれるお客さんのリリースであれば機械的に受けて機械的に出すだけでしょうから、おそらくは中身なんていちいち確認してなかったということなんでしょう。記事の中で武者さんも指摘されておりますが普段から「校閲されたとは感じないフリーダムなプレスリリースは(が)ときおり出回って」いるサービスですから、そういうことなんでしょう。色々な意味でやらかした案件ですが、プレスリリースをパブリシティに使うだけでなく、同業他社に対する中傷にまで発展させるというのはいささかやり過ぎの感もあります。もちろん、そういうことをしてしまう悪徳業者も問題ですが、そういうリリースを掲載してしまうPR TIMESも大きな課題を抱えていると言えましょう。

 もう少し流通する情報に対して、供出するメディアの側が目視チェックも含めた品質管理をする体制を取らない限り、こういう問題は恐らくなくならないのでしょう。

 そして何より、AmazonなどECサイトでのレビューの品質問題は主に業者によるサクラが横行している現状に歯止めがかけられないという本質的な課題を有している以上、通販業界の業界ガイドラインなり経済産業省や消費者庁の省令なりで強く制御していく必要はあるのではないかと思うのですが。

 最近では、Instagramもスパム投稿やステルスマーケティングの横行に手を焼いて、掲載された画像や動画などの投稿に対する「いいね」を廃止する方向で検討して、実際にそれが進んでいるという話もあります(実際に「いいね」が廃止されたという話は出ていますが、身の回りでそれがまだ確認できていません)。

Instagram「いいね!」数公開中止を検討、競争圧力の低下狙う(Engadget日本語版 19/4/20)

 インターネットの情報流通を支えてきた「評価経済」的なものが、結果的にその評価方法をハックする悪質な有力者によって評価自体が信用ならなくなるというのは、一種のジレンマではあります。良質なものを求め、ネットで過ごす時間でハズレを掴みたくないという心理をどのように捌くことが一番良いのか、非常に悩ましいところではあります。むしろ、プラットフォーム事業者に対する制約の最たる部分は、このあたりのネットでの信頼をどう確保するのかという命題に行政、プラットフォーム事業者、そこに参画するユーザーや業者といった人たちがいかに真剣に消費者に向き合うかにかかってきているように感じます。