GoogleMAPやAmazonレビューにみる「善意」を前提にしたウェブサービスに持続可能性問題

(写真:ロイター/アフロ)

 「インターネットは夢の情報化時代のインフラ」とされ、通信の秘密もインターネットの自由も、ネットに関わる無数の人たちの「善意」によって成り立ってきたと言っても過言ではありません。そして、そこに息づくウェブサービスの多くは、無垢の善意をもつ人々の集合知を効率良く拡大してさらにより多くの人々の役に立てるようにしようという理想の下に設計されてきたと解釈するのが妥当でしょう。ビジネスをしたい、情報交換をしたい、いずれも金儲けだフリーライダーだと否定されることも多いわけなんですが、しかし然るべきお金を払い、同じルールを守ってネットを使っていくという根っこの部分は共有されてきたと思います。

 もちろん、いまとなっては、ウェブサービスに集まってくる知識や情報は必ずしも“無垢の善意をもつ人々"だけからもたらされるわけではないことは明白ですし、ウェブサービスを設計・運営する側もそうした現実に対してどう向き合っていくかが問われる時代でもあります。

 しかしながら、問題があることは分かっていても、それらに対してどう適切に対処すべきかという課題については誰もが満足できる答えを見つけられていないのが現状です。

 そもそもウェブサービスを善意で提供したいという志で始めたとしても、現実には運営者はそうした活動を持続させるための資金が必要となりますが、そうした問題の解決方法の一つとしてネット上で配信される広告という手段が受け入れられており、その代表的な成功例がGoogleの提供する各種サービスということになるのかもしれません。

 で、Googleはマップや検索のサービスにおいてさらにより多くの人々の役に立つべく新しい機能を追加したそうです。

「Googleマップ」や検索のビジネスプロフィールに複数の新機能(CNET Japan 19/6/24)

 要するに広告機能の充実が図られたと解釈して読むべき内容ですが、Google社としては高邁な理想があってこうした機能を提供するという口上を述べているように見えます。内容を見る限り、ああGoogleも根幹の部分では自由で平等なネット社会の守護者たろうという気概をいまなお持ち続けているのだなあと純粋に思って感動したりもします。

「最初に世界の地図の作成に着手したとき、われわれが最初に注力したのは、ユーザーがA地点からB地点へと移動するのを助けることだった。やがて、人々はさまざまな店舗について、より多くの情報を求めるようになった」

出典:CNET Japan

 短いセンテンスの中に、技術の進歩、人々のニーズの増大、Googleが担えることの尊さすべてが含まれている、奥行きの深いステートメントだなあと感じます。

 そして、世界中の人々が全て正直な善人だけであればこれは素晴らしい話でめでたしめでたしということになるはずですが、そうではないという悲しい現実もあります。

Googleマップ上の数百万件の企業情報がフェイクとの報道(TechCrunch Japan 19/6/21)

偽情報はそれを専門とする企業が作り、顧客は存在しない支社や子会社などをGoogleマップ上にたくさん載せて、検索結果などにおいて自社を競争上優位に見せかけようとする。

WSJがインタビューした検索のエキスパートによると、2017年にGoogleが研究者たちに金を払ってやらせた調査では、ローカル検索の結果のわずか0.5%がフェイク(偽)とされているが、元データが少なすぎるため、その調査結果自体がフェイクである。

出典:TechCrunch Japan

 記事ではこうした指摘に対するGoogleの反論も取り上げられていますが、残念ながらイタチごっこ状態で抜本的な解決への道のりは近くないという印象です。もちろん、そういう悪質な行為が「できてしまう」、それが「効果的である」、さらに「罰則はそれほどない」のであれば、悪質な行為をやらないほうが損と考える人々も少なくないわけです。

 で、さらに残念なことにこうしたGoogleのサービスの普及率とその影響力を悪用する事業者の存在は米国に限った話ではなく、我が国にも当然あるということになります。こうした偽情報をGoogleのサービスなどに提供することを生業とする事業者があり、そうした事業者を使って客の誘致を効率化しようと考えてしまう人々も少なくないわけですが、その結果として集客効果を上げられるのとは正反対に自分達の信用を失うだけの残念な結果を招いている可能性もあります。こうした事情について詳しいJADEの辻正浩さんが丁寧な記事を書かれていますので、やや長文記事ではありますが是非リンク先をご覧になっていただきたいと思います。

【注意喚起】Google Maps最適化(MEO)業者への依頼は大きなリスクがあります

来客してもらうビジネスでは、Webページを作るよりもGoogle Mapsでのビジネス情報の正しい登録、Google My Business(Googleマイビジネス)の活用のほうが重要と考える人もいますし、それは状況によっては正しいこともあります。

この中、Google Mapsの最適化を謳う業者も増加しています。

(中略)

最近このGoogle Maps最適化を謳う業者の多くはスパム行為、ガイドライン違反行為に手を染めています。

出典:JADE

 Googleマップへの書き込みは当初ユーザーによる口コミ的なものであり、あくまでも善意をもつ人々による情報共有という建て付けでしかありませんでしたが、当然の成り行きとして広告的な要素が強くなり、さらにはライバル店舗への悪意のあるネガティブキャンペーン合戦の舞台と化してしまうなど、こんな状況で信頼性のあるウェブサービスとして持続していけるのかという素朴な疑問を感じます。

 偽情報の氾濫ということでは以前からAmazonのユーザーレビュー問題もありますが、こうした諸々は人間の性であり業であるため改善できる目処はないものなんでしょうか。昨今では、中国系の業者を中心に、発売前の商品がさも良質なよう星5レビューをたくさんつけ、また競合他社の製品やサービスには容赦なく星1をつけるスパムまで堂々と営業されていたことがあり、それらの悪質な業者も水面下に潜りつついまなお猛威を振るっているのを見ると、やはりインターネットを単に善意によって運営される何かとピュアな目だけで見続けることは危険なのかもしれません。

Amazonのアルゴリズムは、こうして「ディストピアな書店」をつくりだす(WIRED.jp 19/6/8)

 プラットフォーム事業者が多国籍化するほどに成長し、毎日地球を何百億回転もするぐらい飛び交う情報の主たるポジションを確保してインターネットを支え続けている一方、この手の悪しき作用に対する抵抗力が身に付かなければ、現在各国で問題にされている「プラットフォーム事業者の横暴」を制裁しようとする政治の動きには抵抗できなくなってしまう可能性が高くなってきます。

 それは、インターネットは本来自由な存在で、ユーザーの手の中に平等にあるものだったのに、いつの間にか政府によって干渉され、情報の流通に介入される政策が世界で次々と決定されると、プラットフォーム事業者に対する要望も負担も相当なものになっていくでしょう。フェイクニュース問題や、情報商材詐欺的な問題ひとつとっても、プラットフォーム事業者が通報をもとにBANできる安易な体制を築くことで結果として法律に基づかない検閲が可能になってしまい、言論の自由が脅かされたり、不当なBANによって不利益を被る利用者が出てしまったりします。

 それがインターネットの現実なのだ、と割り切るのは簡単ですが、そういう弱肉強食が普通にまかり通るインターネットというのは単なる自由の濫用に歯止めが効かない無法地帯に過ぎないとして、情報を統制したい各国の当局や政策によって制限される不自由で不幸なインターネットになってしまう怖れはあります。

 一方で、Google My BusinessやAmazonレビューでのスパム行為は、リアルで例えれば街角の電柱に「この店マズいですよ」と張り紙をされるようなもので、単なる営業妨害も含めて野放しになっているということですから、さすがに対応は必要でしょう。いずれも効果があり、意味も価値もユーザーが感じているからこそスパムを行うことの価値が高まっているとも言えます。

 いま私たちの社会が向き合っているネット社会の課題は、テーマこそGAFA(M)問題として「国際的なインターネット系大企業が起こすものだ」と認識されていますが、GAFA(M)各社を悪者にしてそれで終わることではなく、利便性と双子のように生まれ落ちた悪用の危険をどう定義し、何を根絶していってネットを安全で自由なものに作り替えていくのかを考えていかなければならないのでしょう。

 そもそも、ネットにおいて「何が悪か」という問題は、深淵です。このあたりの問題が、いきなりプラットフォーム事業者や政府の政策によって議論なくいきなり解決されることを求めるのではなく、どう対話していくのかを含めて話し合いが深まっていくことを期待してやみません。