国内自治体が電動キックスケーターのシェアリングサービスに色めきたっているようですが大丈夫でしょうか

(写真:Splash/アフロ)

 昨今流行りの「MaaS」や「マイクロモビリティ」といった謳い文句を掲げて、国内事業者が電動キックスケーターのシェアリングサービス事業について国内5つの自治体と連携協定を締結したというニュースがありました。

電動キックボードのシェアサービスを日本にも--「Luup」が浜松市など5市町と連携(CNET Japan 19/4/18)

 電動キックスケーターのシェアリングサービスは近年欧米諸国の特に都市部などで広まることで話題性には事欠かない感じもありますが、話題になっている理由は有用性がある一方でネガティブな問題も多数引き起こしているからであります。このあたり、国内で提案を受けて協定を結んだという自治体関係者の皆さんは一連の事情をちゃんと把握しているのかは気になるところです。

 電動キックスケーターに限らないことですが、シェアリングサービスやギグエコノミーという言葉で括られる新規ビジネスの多くは既存の利権や古い社会慣習に頓着せず事業展開できるということが売りであり、ポジティブな側面だけを見ると良いこと尽くめで話を盛れるわけです。その一方で、片や事業を継続していくための採算性がほとんど考慮されていなかったり、あるいは社会的モラルや法的規制と相克するような事業構造であったりする側面が明らかにされておらず、実際に事業を始めてみてから初めてそうした問題が明らかになるようなことがままあるわけです。

 電動キックスケーターのシェアリングサービスの場合、米国などでは問題点を指摘する論考が昨年末あたりから目につくようなってきましたが、いまだ日本国内では明るい側面だけが取り上げられネガティブな問題点についてはあまり触れられずにいるような印象を覚えます。

What's the Biggest Threat to Scooter Sharing in 2019?(Hacker Noon 19/1/2)

THE E-SCOOTER TREND: PAST, PRESENT AND FUTURE OVERVIEW OF SCOOTER SHARING(MOVMI 18/12/19)

 現状の電動キックスケーターのシェアリングサービスで一番の問題となっているのは事業として採算を取れないという側面でして、その要因としてユーザーによる扱いが乱暴なため修理不能なレベルで壊されてしまうことが少なくなく、電動キックスケーター1台あたりの稼働期間は平均するとわずか30~90日程度という報告事例もあげられています。あまりにも手軽に利用できる道具であることが逆にユーザーから丁寧に利用してもらえないということなんでしょうか。このあたりは中国の自転車シェアリングサービスが大きな話題となりつつ修理不能な自転車が大量に生み出された事例と重なるものがあります。

シェア自転車の「墓場」、中国全土に広がる 難題は今後のリサイクル(AFPBB News 18/8/26)

 また、事業の継続性という観点では、中国のレンタルサイクル(シェアサイクル)事業者が日本国内で事業展開したにもかかわらず、その採算性の問題から事業継続どころか早々に撤退してしまいました。日本やアメリカだけでなく、海外でもこれらの事業者が風呂敷を広げて大規模な出資を得て事業展開するものの、赤字が続いて資金が底を突いてしまい、撤退に追い込まれる事態の繰り返しが行われているように見えます。

フランスでもうまくいかなかった...自転車シェアサービスがまた終了(GIZMODO 18/3/2)

中国シェア自転車大手、北九州撤退へ(日本経済新聞 18/10/25)

 まあ、国内での電動キックスケーターのシェアリングサービスについては国交省がいまだ首を縦に振っているわけではありませんから、そもそもが事業として実現できるのかどうかもまださだかではない状況です。

規制の壁どう乗り越える?「シェア型電動キックボード」国内実証へ一歩 ―― 国交省「具体化はこれから」(BUSINESS INSIDER JAPAN 19/4/19)

公道の電動キックボード走行にまつわる関連法規制の問題をどうクリアするのか? これについてLuupは「現時点では、具体的な内容について回答できない」としており、記者発表では詳細まではわからなかった。

(中略)

Luupと実証実験についての調整を進めている国土交通省の自動車局技術政策課の担当者は取材に対し、「Luupから話をうかがっているのは事実です。現在は原動機付自転車として適合しているかの確認をしている段階で、具体的な実証実験の話はこれからという認識です」と説明する。

出典:BUSINESS INSIDER JAPAN

 なにやら盛大に打ち上げ花火をあげてみたけれど実態はなにも決まっていないという感じでしょうか。国交省や自治体まで巻き込んでおきながらベーパーウェアみたいなことにならないといいのですが。それにしてもここ数年大いに持て囃されてきたシェアリングサービスビジネスですが、今年から来年あたりで沙汰が下って淘汰される事業者がたくさん出てくるのかもしれないですね。

上場へと向かうUber、見えない黒字化への道筋(WIRED 19/4/22)

 おそらくは、遊休状態の不動産や自転車、自動車など、スキマ時間により良くシェアできれば経済的には生産性が高かろう、と思ってシェアリングエコノミーを推進してみたものの、ビジネスモデル的に如何に効率的でも実際に使うユーザーは情も欲もある生身の人間である限り、雑に扱ったりバックレたりすることも考えておかなければならない、ということに相違ありません。

 現在は、自動車ですら「単独で買うよりシェアで」という市場がどんどん出来上がっていますが、休日に使いたいときに限ってみんなも使いたいわけですから思うように借りることもできず不便する、という事態も頻繁に起きます。「世の中そんなもの」と割り切ってしまえば不便はないのかもしれませんが、いくらICT技術が発達しても世の中なかなかそうは簡単にいかないもののようです。