高齢化する「引きこもり」調査への違和感と、長らく放置されてきた問題への処方箋は

(写真:アフロ)

 高齢化する引きこもりについて、注目される記事がNHKで公開されていました。

中高年のひきこもりは推計61万人余り 39歳以下を上回る(NHKニュース 19/3/29)

内閣府は「ひきこもり」の実態を把握するために、若者を対象に調査してきましたが、長期化する人が増えていることから、去年12月、40歳から64歳を対象とする初めての調査を行い、全国の男女5000人のうち3248人から回答を得ました。

調査で、「自室からほとんど出ない」や「趣味の用事の時だけ外出する」などの状態が半年以上続いている人を広い意味での「ひきこもり」と定義した結果、これにあたる人の割合は1.45%となりました。

出典:中高年のひきこもりは推計61万人余り 39歳以下を上回る

 内閣府の調査において往々にして起きることではあるのですが、予算の問題なのか、社会的にそれなりに希少な個人の属性についてアンケート調査をやってしまい、本当にその数字をベースに考えて大丈夫なのか、と思うところがあります。引きこもりのように社会的に切り離されてしまっているかもしれない家庭については実数を測定するのがむつかしいので、アンケートをばら撒いて有効回答から割合を調べるという方法を取りたいのも分かりますが、ここで記述のある通り中高年の引きこもりは広く定義した設問に対して1.45%しか該当せず、振れ幅が大きくなり実態調査として流石にもう少し丁寧な方法を考えたほうが良いのではないかと思います。

 平たい話が、「ランダムに男女5,000人にばら撒いたアンケートの有効回答数3,248人のうち、広義の引きこもりに該当すると回答した人は47人であり、全体の1.45%です、その40~64歳の人口は4200万人なので、これをかけておおむね61万人と推計しました」ということで、予備調査ならともかくこの数字が独り歩きしないことを祈るのみです。

 例えば、記事中にあります「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」のようなしっかりとした支援団体や連絡会が補助しつつ、各自治体や医療機関の連携で把握している勤労状況や家族構成から無業者の状況を確認し、サンプリングではなく実数で指さし確認していく方法でない限り、「ネットのアフィリエイトで稼いでいるグレーな引きこもり」や「地元の農作業や期間工などで就労したりしなかったりする人」なども引きこもりに含まれてしまうこともあります。NHKがしっかり実例を取材して類型を示しているのでまだ救われていますが、ガチの引きこもりで部屋から一歩も出ない類は自治体の積み上げで、就業や仕事の継続に苦労する人は別の累計にしないと中高年の引きこもり対策を政府が考えようにもむつかしいのではないでしょうか。

 一口に「引きこもり」と言っても、おそらくは本人や家庭環境によってケースはバラバラです。老いた両親に経済的に規制するパラサイト的な「子ども部屋おじさん」がいたとしても、どういうケースにして対応を進めるのかはもっと考えていかなければなりません。

 それでも、いままで高齢化した引きこもりについての関心が低く、具体的な調査も行われてこなかったという点では、少しでも光が当たることで実態も分かるようになるのでしょう。そしてそれは、引きこもりの生活を支えてきた親世代の死亡と共に本当にどうにもならないおひとりさま高齢者が独居老人としてどっと生活保護に流れてくることになります。この予備軍が具体的にどのくらいの人数おられるのか、本当はもっとちゃんと調べて就業支援も含めた対応はしていかないといけないのでしょうが、これもまた「地域で支え合え」とか丸投げされてしまうのでしょうか。

 「そんなところまで政府が個人の生活に介入しなければいけないのか」という議論もまたあり、引きこもりも自己決定権である、好きにさせろと言われるとそれまでなのですが、どうしても「引きこもりは自業自得」のような話になりがちなので、もっと踏み込んで色々調べていってほしいと思います。