Facebookがネット上の言論規制問題で、事実上の「お手上げ宣言」

(写真:ロイター/アフロ)

 Facebookが世界中のメディアを牛耳って天下を取るのはもはや時間の問題でしかないと思われていた時代もありました。

ニュースメディア化に拍車がかかるFacebook。その影響力を示す5つのグラフ(DIGDAY 15/9/1)

Facebookが「キング・オブ・ニュース・メディア」であると言い切るには時期尚早だが、近い将来そうなる可能性はさらに高まった。

出典:DIGDAY

 これは4年ほど前の記事ですが、もはやネットで情報を広く拡散するためにはFacebookに頭を下げるしかなく、同社の中の人もイケイケな感じでまさにこの世の春といった趣があったものです。まさかその後に同社がフェイクニュース事件の真っ直中にあって世界的に信用を大きく失うことになるなどとは誰も想像できなかったわけですが、今となっては逆になぜあそこまでFacebookが権勢を誇れたのかが不思議になるほど世界的に様々な形で同社への批判が高まっており、米国内では行政レベルでの訴訟まで起きています。

米住宅当局がフェイスブック提訴、「ターゲット広告で差別」(ロイター 19/3/29)

 Facebookという会社は昔から自分達は単なるテクノロジープラットフォームでありそうしたプラットフォーム上で交わされる情報の中身には関知しないし責任を持たないはずだというスタンスで通してきたわけですが、とくにケンブリッジ・アナリティカ事件発覚以降はそうした言い訳もなかなか通用しづらい立場に追い込まれるような不祥事も続いており、その都度に泥縄的な対応策を発表したりもしていたわけですが、いよいよもってCEOのザッカーバーグさんが切れた感じの声明を出すに至ったようです。

 そもそも、Facebookはユーザーに表示するタイムラインからして「時系列での表示」ではないと明言しています。この時点で、Facebookは個人の興味や対象となる友人やメディアの属性をマッチングし、親しかったり支持している記事は優先表示することでFacebookの利用を促進し、クリックをさせ、ユーザーにコミュニケーションを促したり表示するメディアに読者を誘導してきたわけですから、いまさら「情報の中身には関知しない」という主張は通らないだろうとも思います。

 確かにFacebookは便利ですし、広告をより多くの人に踏ませるための試行錯誤を効果的に繰り返してきたことでそれが達成できたという意味では間違いなく貢献はあるのですが、個人の情報の利用やフェイクニュース対策などの観点からすればとんでもなく邪悪だという意見を持つ人も少なくないのでしょう。

FacebookのザッカーバーグCEO、「ネット規制強化は政府が主導すべき」(ITmedia 19/4/1)

同氏は、有害コンテンツを定義するための基準と、それをオンラインプラットフォームから削除するためのガイドラインを規制当局が設定すれば、Facebookのようなプラットフォーマーが安全のために行動しやすくなると語った。

出典:ITmedia

 短絡的に解釈すれば、お上がルールを決めてくれれば私どもはそれに粛々と従いますのでよろしくお願いいたします、といった感じでしょうか。まあ、このところ散々に叩かれて疲れちゃったのかもしれないですね。

 しかし、こういうザッカーバーグさんの発言に対してメディアもすかさずなかなか意地の悪い論考記事を出しています。

FacebookのCEOが投稿コンテンツやプライバシーで規制を求める(TechCrunch Japan 19/4/1)

 記事を読むと分かるのですが、政府に対して「有害なコンテンツ・公正な選挙・プライバシー・データポータビリティ」という4分野について政府の監査が必要であるとザッカーバーグさんは熱く説いているようなのですが、実はFacebook自身がその4分野に関してはずっと杜撰な取り組みしかしてきていなかったことが具体的に説明されています。

こうしたザッカーバーグ氏の意見表明はいくぶん虚しく響く。というのも、これら4分野で改善を図るために政府のサポートなしにFacebookができることはたくさんあるからだ。

出典:TechCrunch Japan

 まあ厚顔といいますか。Facebookらしいというか、ザッカーバーグさんらしい感じで期待を裏切らないところが興味深いです。これを言われた政府関係者は苦笑するしかないところですが、では実際に国家レベルでネットサービスに対して厳しい監査を実施したらどうなるのかというと、Facebook以外の事業者が色々と割を食わされそうな気がしなくもありません。また、Facebookとしてこう明言した以上は米国以外の国向けサービスにおいてはその国ごとのルールに従うということを意味しており、そうなると中国では中国のルールに従ってサービス展開するとして米国政府も含めて他者には文句を言わせないという意思表示であったりもするのでしょうか。そうした可能性を考えてみるとまた違った意味で今回のザッカーバーグさんの発言は意味深だなと感じるわけですが、実際のところはどうなんでしょうか。単に何もかも面倒になってやけになってお手上げ宣言したというだけなのかもしれませんね。

 そういえばザッカーバーグさんが今回の声明を出したのとほぼ同じタイミングで、彼が過去にFacebookへ投稿した記事のいくつかが誤って削除されてしまっていることが発覚したというニュースがありまして、これは本当に単なる技術的な事故によるものなのか、それとも何らかの思惑で故意に仕組まれたことなのかはどうしても詮索してみたくなるものがあります。なお、同社では誤って削除されてしまった投稿を復元する予定はないそうですが、その中にはInstagram買収に関する話なども含まれていたようですね。

Years of Mark Zuckerberg's old Facebook posts have vanished. The company says it 'mistakenly deleted' them.

 いずれにせよ、ユーザーの行動をより効果的に、便利にするための仕組みを用意することが、結果として有害コンテンツや不正選挙、フェイクニュースといった別の問題を誘発して、その対処はFacebookですら自分たちではできなくなり始めているという世界観は、かなりディストピアなんだろうなあと思わずにはいられません。

 本当にこれ、どうするんでしょうか。