ジェンダー研究の第一人者・渡辺真由子さんが、論文剽窃の疑いで慶應義塾大学から博士号剥奪

(写真:西村尚己/アフロ)

 かねてから話題になっていた、ジェンダー研究の第一人者である渡辺真由子さんの博士論文は、慶應義塾大学の審査の結果、博士学位取り消しの結果となりました。渡辺さんはこの決定に対し異議申し立てをするとのことです。

博士学位の取消しについて:[慶應義塾](慶應義塾 19/3/20)

博士学位を取り消すにあたって(大学院政策・メディア研究科委員長

村井純 19/3/20)

 取り消しに至る経緯については、朝日新聞の大内悟史さんがまとめていますが、博士論文を踏まえて刊行された書籍において、全7章のうち第6章がまるまる転載であるとの指摘が外部からもあり、発行していた勁草書房はお詫びを掲載のうえ、本書の改訂ではなく絶版・回収する決定をしていました。

児童ポルノ考える本に「無断転載」、慶大が博士論文調査(朝日新聞デジタル 18/12/11)

渡辺真由子著『「創作子どもポルノ」と子どもの人権』の論文無断転載についての経緯とお詫び(勁草書房 18/11/28)

 渡辺真由子さんの主張や研究テーマは、いわゆる「非実在の少女」がゲームや漫画、アニメなどで暴力の対象となる場合の規制や保護について先鋭的に論じられるものであったため、都道府県や自治体が定める青少年健全育成条例などで暴力表現が有害指定される方針が拡大していったり、コンテンツ接触を制限するゾーニング議論が推進される可能性もあっただけに注目されてきました。

 この渡辺さんの事案については、博士号の学位を持ち、表現規制に詳しいジェンダー研究の第一人者として東京都青少年問題協議会委員や2015年度内閣府青少年問題有識者会議委員を歴任し、さらに2011年度文部科学省「ケータイモラルキャラバン隊」講師、2014年度法務省「人権啓発指導者養成研修会」講師、2015年度内閣府「児童ポルノ排除対策シンポジウム」といった政府系の業務も兼任してきたこられるにあたり、慶應義塾の論文審査内容に齟齬はなかったのか、これらの政府系要職に堪える学術的なバックボーンを確認しなかったのかといった課題が大きく残るかもしれません。

 ただ、今回は勁草書房がかなりきちんとした対応をしたことで問題が毅然と処理された部分はあるのですが、渡辺さんの問題だけではないと見られるのは「いま博士号を持ち日本で活躍している学識経験者の少なくない人物が、論文の剽窃や未検証の事実を用いて結論付けて博士号を取得している可能性がある」という点です。それも、戦後の大学教育で教え手の不足もあり座っているだけで教授のポストが回ってきたころの人物があり合わせの論文を学会に出し博士号を取っているケースもありますし、それがそのまま学術研究の筆頭になり大御所に祭り上げられてしまって引っ込みがつかないケースも見受けられます。

 人工知能の分野でも、著名な国立大学の准教授・教授としてネットやテレビ番組にまで有識者として出ているにもかかわらず疑似相関を理解していなかったため、よく調べてみたら論文がおかしかったというケースも散見されるため、いまからでも論文の修正、出し直しもできるキャンペーン期間の設置や、おかしな論文で学位を取った人がごめんなさいを自分から名乗り出た場合には軽いペナルティで済むような弥縫策も考えるべきではないでしょうか。