ピエール瀧、薬物逮捕で木村拓哉主演の出演ゲーム「ジャッジアイズ」販売自粛での揉め事

 俳優・ピエール瀧がコカインを使用した麻薬取締法違反の疑いで緊急逮捕されたことを受け、ピエール瀧を起用している映像作品やゲームなどでは登場場面の削除・編集や、販売、ダウンロードなどの閲覧の取りやめが相次いでおり、騒ぎが広がっています。

 木村拓哉主演で話題となった、セガ『ジャッジアイズ』も、ピエール瀧が重要な役柄を演じていることもあり、当面の販売自粛を公式に発表しました。「仕方ない」という意味で、セガの決定は妥当だと思います。

弊社製品『JUDGE EYES:死神の遺言』の販売自粛について | トップページ | トピックス(セガ 18/3/13)

 一般論としては、江川紹子さんも東京スポーツで語っている通りです。ご関心のある方は、ぜひご一読ください。作品としての文化的な価値があるはずの映像やゲームなどで、その出演者である人物が嫌疑をかけられ逮捕に至ったからと言って、その作品が丸ごと閲覧できなくなったり、再放送できなくなるというのは視聴者やプレイヤーにとって痛い話で、望ましくないのは間違いありません。

江川紹子氏 ピエール瀧逮捕による「作品お蔵入り」に異論(Yahoo!ニュース 東スポWeb 18/3/13)

 一方で、少なくともゲームで作品に登場するにあたっては、今回の『ジャッジアイズ』のようにゲーム内にプロダクトプレイスメント広告が置かれ、実在の他の俳優との絡みもある以上は、何らかの容疑が報じられた段階で発禁・販売自粛になってしまいます。映画やテレビドラマ、番組などの配信や再放送などとは少し法的な枠組みは異なりますが、本質的にはゲーム内でのプロダクトプレイスメント広告を広告主に販売するにあたり、ゲームを制作し頒布するパブリッシャーにあたる企業(この場合はセガ)はその責任において「公序良俗に反しない限り」の除外規定を例外なく設けます。この範囲は意外に広く、今回のような出演タレントや俳優の不祥事・スキャンダルに関するトラブルだけでなく、ゲーム内での各種表現や、シナリオの社会性に鑑み、一定の公序良俗に反する内容があった場合には、広告主の側から問題部分の削除や差し替えを求められることが一般的です(制作編集権または拒否権)。ここでいう公序良俗は、明確な線引きこそありませんが、性的表現、暴力表現、差別など社会的に不適切とされる表現に対する問題について、パブリッシャーの側の責任で改修しなければなりません。

 また、タレントや俳優を起用するときにおいても、適切な業務行為を行うよう芸能事務所が起用されるタレントや俳優の名前をキーマン条項として明記のうえで、契約書を締結することが一般的です(いまだに契約書を結ばずに何となく起用される俳優や事務所もありますが、ゲームでは表情などのデータをゲーム内で表現する必要があるためにほぼ確実に契約を結びます。データの他作品などへの流用が容易なため、それを防ぐためです)。これは、対広告主、対パブリッシャー(今回の場合はセガが制作もパブリッシングもしていますが)、対ほかのタレントや俳優、脚本家といった、出演に関するあらゆる関係者に対する風評を維持するために、何事かあった場合の損害賠償もあり得る旨の条項も含めて契約が締結されることになります。

 この公序良俗に関する評価はむつかしいのですが、キャスティングに関する契約において、適法かどうかが線引きというわけではありません。広告の例で言えば、サンミュージック所属のベッキーが「ゲスの極み乙女。」の川谷絵音との不倫交際が週刊文春の報道で問題となりましたが、不倫された川谷絵音の配偶者との民事的な問題は別として特段の違法性のある行為をベッキーが行ったというわけでもありません。しかしながら、不倫は一般的に公序良俗に反するとされ、また、不適切な行為で本人の風評に傷がついたとするならば、そのタレントの風評を活用して商品やサービスの広告に起用したとき不倫という公序良俗に反する行為のイメージが商品やサービスに結びついてしまい損害を受けることになります。違法ではないが充分損害を契約相手に与える行為に他ならず、結果として芸能事務所の側には相応の損害賠償請求がいくことになり、酒井法子の乱に続きサンミュージックはカンニング竹山をフル稼働させて借金を返していくことになるわけであります。

 翻って、今回のピエール瀧の逮捕は公序良俗への問題そのものでありますが、世間一般の通念からすれば現段階ではあくまで容疑であり、仮に本人が薬物の所持・使用を供述に置いて認めていたとしても推定無罪の原則からこの時期に起用していたコンテンツを販売自粛する必要は「法的には」ありません。しかしながら、この公序良俗に反すると考えるのは広告主や共演している俳優やタレントとその事務所であって、そういう事件を起こした(まだ有罪が確定したわけではないのですが)人物と共演していることによって他の俳優やタレントとその事務所が「降ろしてほしい」と言ってきた場合には「キャスティング調整」や「行政」が発生しますし、広告主については自社商品やサービスをゲーム内で登場させるのは控えてほしいと取り下げを要請してくることでしょう。問題となるのは、ゲームなどへのプロダクトプレイスメント広告は「そういうスポンサーがついている広告なのだ」というゲーム会社の側の事情でむしろ広告を入れたい代物であるという点です。時として、単に暴力的な表現がきつくなるゲームにおいて、一般企業の広告が入るほど一般的には認められている表現であり作品なのだと言いたいし、また、企業のロゴが入っていることによってお墨付き感があったり、実際に実在の町を体験しているかのようなエクスペリエンスをプレイヤーに与えることができます。ゲームの側としてもプロダクトプレイスメント広告を入れられるのであれば作品のためにも入れたいと思っても不思議ではありません。

 しかしながら、たとえゲームのテーマの一部に暴力的な犯罪が取り上げられているものだとしても、それはあくまで作品の世界観の中で起きていることであって、本当にそこで出演している俳優が暴力的だったり反社会的であってはなりません。

セガゲームス、ゲーム内の木村拓哉さんにめいっぱい体を張らせることに成功(市況かぶ全力2階建 18/12/13)

 本作品では、主人公に抜擢されているジャニーズ事務所の木村拓哉が弁護士に扮し、被害者のパンティの色を木村拓哉が聞き込みしたり、暴力団事務所に乗り込んでいって平和的に破壊したり、コンビニで絡んできたチンピラに応戦し三角コーン片手にボコボコにしたり、二階から路上に飛び降りたり、牛丼屋に入ったのに金が足りなくて50円のコールスローサラダだけ頼んでじっくり味わったり、いきなりステーキに入店してスープだけ飲んで店を出るところでいきなりステーキの社長に呼び止められて肉の味を訊かれて適当に話を合わせたりしています。

 また、木村拓哉が人妻ヘルスに入って嬢待ちをしているところに乱入してきたピエール瀧に殴られるなど、あくまでこのゲームの世界観やシナリオにそって制作物として脚本上不思議なことや面白いことに木村拓哉が巻き込まれているということでこのゲームの素晴らしさが引き立っているのは間違いありません。

 ただし、いくらゲーム中に暴力団に扮したピエール瀧が木村拓哉を人妻ヘルスで殴ったからと言って、本当にピエール瀧が薬物の所持や使用をしていたとの容疑で逮捕されたとなれば、やはり公序良俗に反した人物を起用しているということでこのゲームの販売を自粛しなければならないであろうとは思います。

 また、仮にセガが木村拓哉の好演もあり、この『ジャッジアイズ』の続編を企画していたとしたら、どうでしょう。ピエール瀧のお陰でタイトルブランドに傷がついたとなれば、続編企画自体がお蔵入りになってしまうことも考えられます。この手の話ではありがちで、非常に残念な事態ですが、ない話ではないのです。

 もちろん、一般のプレイヤーの心情からすれば、ピエール瀧が薬物をやってのは悪いけれど、それが理由で作品ごとお蔵入りになりかねない自粛をすることは、文化的にも良くないというのは分かります。ピエール瀧の俳優としての能力の高さは定評のあるところで、だからこそ多くの作品に起用され、人気を博していたことは間違いありませんが、そのピエール瀧が問題を起こしたならば、その多くの作品に起用されたことが仇となることもまたあるわけです。もう観られなくなるかもしれないドラマ、お蔵入りとなり人の目に触れないまま葬り去られる映画も生まれるだけでなく、ゲームですらも販売自粛になるのは辛いことです。

 ここで「海外では」と出羽守のような話をするのも何ですが、作品と俳優の人格とは別、と言い切ってくれる芸能事務所や俳優ユニオン、スポンサー制度も含めた製作委員会が組まれない限り、おそらくは解決しないでしょう。あるいは、公序良俗に反する事項について、やらかした俳優やタレントの出演については適切なクールダウン期間を業界の取り決めとして用意するほかないのではないかと思います。

 また、薬物諸事・使用で逮捕されたピエール瀧に限らず、何らかの事件、依存で仕事を失うことになってしまった人たちの再起用の道筋を業界としても用意してあげる方法は無いのだろうかとも感じます。罪は罪として執行猶予なり服していただくとして、その芸の良さを評価されて頑張ってきた人たちが復帰する道筋もあって初めて意味のある議論だと思うんですよね。

 このあたりも踏まえて、上手いこと着地できる方法が明文化されるといいなあと考えるのですが、いかがだったでしょうか。