プライバシー保護強化を打ち出すAppleの差別化施策は奏功するか

(写真:ロイター/アフロ)

 先日、米ITニュースサイトのTechCrunchが素行の悪いiPhoneアプリに関してちょっとしたスクープを報じておりました。

密かに画面を録画する有名なiPhoneアプリ(TechCrunch Japan 19/2/9)

Air Canada、Hollister、Expediaなどの大手企業は、iPhoneのアプリ上のすべてのタップやスワイプ操作を記録している。

(中略)

TechCrunchは、ホテルや旅行サイト、航空会社、携帯電話のキャリア、銀行、金融会社など、さまざまな人気アプリの中に、ユーザーの了解をまったく得ていなかったり、はっきりと聞かないまま、情報を収集しているものがあることを発見した。

出典:TechCrunch Japan

 「ユーザーの了解をまったく得ていなかった」という事情については以下の説明が分かりやすいです。

AppleのApp Storeに提出されるアプリは、必ずプライバシーポリシーを含んでいなければならない。しかし今回調査したどのアプリも、ユーザーの画面を録画していることを、そのポリシーに明記していなかった。

出典:TechCrunch Japan

 こうなるとユーザーを欺いて個人情報や行動データをまるまる収集していたということになりかなり悪質です。まあ、それでは今回判明したアプリ以外は信用できるのかといえば、全部が全部ではないとしても残念ながら中には似たようなものがまだまだありそうな気はします。

 で、さすがにAppleとしてもこういう報道が出たのを黙って見過ごすことはできないということでしょうか、新たな通告をアプリ開発者に発したようです。

Appleは画面録画コードの使用を明らかにするか、さもなくば止めるよう、デベロッパーに指示(TechCrunch Japan 19/2/10)

 で、こちらの記事で興味深いのは以下の一文です。

「これらの厳格なプライバシー規約とガイドラインに違反しているデベロッパーには、すでに通知しました。必要なら直ちに行動に移します」と、広報担当者は付け加えた。

出典:TechCrunch Japan

 この広報担当者の発言を深読みすれば、「Appleはどのアプリがどういう素行であるのかは完全に把握した上で、これまではそうした行儀の悪いアプリについても見て見ぬふりをしていたのだろうな」と思えなくもありません。同社はAppStoreでのアプリ公開可否を司る立場ですから当然そういうことは分かっていたのでしょう。これまでそうしたアプリを見過ごしてきたのが逆にちょっと不思議ではありますが、故事でも「水清ければ魚棲まず」と言いますから、Appleとしてもあまり杓子定規にやらず各アプリ開発者の良心にまかせていたということなのかもしれません。

 今回の方針変更はTechCrunchのスクープ記事が一つのきっかけではあるでしょうが、このところスマホ販売競争で苦戦を強いられているAppleとしては他社、と言うよりも宿敵GoogleのAndroidやFacebookらと差別化を図るべくプライバシー保護強化施策をエンドユーザーに対して明快に分かりやすく打ち出すということを進めているので、その一環という印象があります。

アップル、CES会場近くの巨大広告でグーグルを挑発(BUSINESS INSIDER JAPAN 19/1/9)

アップルのクックCEO、プライバシー関連規制の必要性などあらためて主張(CNET Japan 19/1/18)

 一方で、Apple独自の動画チャットソフト「FaceTime」ではとんでもないバグが発覚して色々とみっともないことにもなり、プライバシー方面で他社より優れていることを自慢してばかりはいられない事態でしたが、バグを発見した少年についてはなんとか報われることになったようでなによりです。

NY州司法長官、FaceTime盗聴バグでアップルを調査へ。発見者親子への対応遅れに焦点(TechCrunch Japan 19/1/31)

FaceTime盗聴バグ報告親子宅に「アップル幹部」が訪問、謝罪と報奨金提供を申し出(Engadget日本版 19/2/6)

 AppStoreで課される高い手数料に加えてさらにアプリ仕様の自由度が規制される状況はアプリ開発者にとって正直あまり美味しくないわけでして、Appleがユーザーのプライバシーの件で何やらうるさく言っていてもそれは単なる自画自賛・唯我独尊だろうというツッコミを入れたくなる人は少なくないかもしれません。果たしてAppleのやり方が今後奏功するのかどうか、成り行きを注目したいと思います。

 まあ、当たり前のことではありますが、無断で個人情報収集し放題みたいな素行の悪いアプリは根絶してほしいのもまた事実です。でも、個人情報漏洩もそうですが大企業によるデータ取りたいが故の横暴にも見える行為は、トレンドマイクロの一件も含め横行しすぎていて、もはやこれぐらいでは驚かなくなり報じられることも減ってしまうようではどうしようもないわけですが。