カドカワが大幅下方修正と、川上量生氏の代表取締役退任などを発表

(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 国内出版大手のカドカワ社が19年3月通期の業績見通しを大幅に下方修正、加えて代表取締役の川上量生さんの取締役降格を含む人事と、ドワンゴ社の孫会社化なども含めた経営体制の刷新についての発表を行っています。

特別損失の計上及び通期業績予想の修正、グループ経営体制刷新に伴う会社分割の実施、孫会社の異動、並びに代表取締役及び取締役の異動に関するお知らせ(カドカワ株式会社)

 特筆するべきは下方修正の減額幅で、売上は昨年同期とほぼ変わらない2,070億円であるにもかかわらず、経常利益は予想91億円から29億円に、最終損益は54億円の黒字から43億円の赤字へと転落してしまっている点です。

 カドカワ社の発表内容を見ると、出版は堅調だけどドワンゴ社が業績不振に陥ったと正面から記す内容があり、気になります。少し長いですが、そのまま引用してみます。

V.会社分割の実施について

1.本分割の目的

 当社は、平成 26 年 10 月に KADOKAWA とドワンゴによる共同株式移転により、両社の完全親会社として設立されました。設立以来、あらゆるコンテンツの価値を高めるプラットフォーマーとしての飛躍を目指し、出版から総合メディア企業を目指す KADOKAWA の IP 創出力と、ネットとリアルの融合を目指すドワンゴの創造性を結集しながら、魅力あるコンテンツをあらゆるメディアにマルチ展開させて収益を最大化させるメディアミックス戦略を積極展開してまいりました。

 当社グループの事業領域における市場環境は急速に変化しておりますが、出版事業においては、電子書籍・電子雑誌が成長しており業績は堅調に推移しております。映像・ゲーム事業においても、国内外を問わず豊富な IP を活用したビジネス展開を拡大させております。

 一方、ドワンゴが事業主体となる Web サービス事業においては、競争環境の激化等により近年業績が低迷しております。平成 31 年 3 月期においては、ドワンゴが提供する動画サービス「niconico」の回線強化や画質向上を中心とした動画・生放送サービスの視聴環境改善を進め、新バージョン(く)や、生放送アプリ「nicocas」をリリースしたほか、VR コミュニケーションサービス「バーチャルキャスト」のリリースや 3D アバター作成アプリ「カスタムキャスト」におけるアイテム課金の導入など、収益拡大に向けた施策を積極的に進めておりますが、投資が先行する中、いまだ業績貢献には至っておりません。また、Web サービス事業及びゲーム事業において大きな業績貢献を見込んでいた位置情報ゲーム「テクテクテクテク」においても、そのゲームクオリティはユーザーから高い評価を得ているものの、収益貢献が期待値を大きく下回りました。

 以上の状況により、今期の通期連結業績は当初業績予想に対して大幅に未達成となる見込みです。

出典:特別損失の計上及び通期業績予想の修正、 グループ経営体制刷新に伴う会社分割の実施、孫会社の異動、 並びに代表取締役及び取締役の異動に関するお知らせ

 出版事業とウェブサービス事業を切り分けたうえで、出版はまずまずだけれどもウェブサービスが駄目なので沈みましたと書いているわけなのですが、もしも当初の合併の企図通り出版とデジタルを融合させる話が進んでいたならば、もっと出版事業がドワンゴ社のプロパティ上で事業をしていてもおかしくないし、ドワンゴ社の事業で出版事業との連携があっても良かったようにも思います。合併のシナジーが無いと論難する記事も出ておりましたし、カルチャーの違いによる融合のむつかしさというさらっとした一般論で掃いて捨てるには勿体ない事案がここにはあるように思います。

【カドカワ】「ニコ動」離れが止まらず窮地 統合シナジー見えぬ異例タッグ(ダイヤモンド・オンライン 19/2/8)

 また、ドワンゴ社の減損については証券系からもカドカワ社からも、かねて「このままの業績であれば何度かに分けて減損をかけていくほかない」ということは分かり切っていました。さらに、以前私もニコニコ動画の業績転回にあたってはカドカワ社の傘下としてあるリソースで細々とやるのでは無理だという前提で、外部資金の導入(コンテンツファンドの組成も含めて)が必要という認識でおりました。ここにきてようやく組織変更となってドワンゴ社が孫会社化されましたが、合併の失敗を認めて切り売りする準備なのか、外部資本の導入も含めた縫合策を検討しているのか分かりませんが何かしようという雰囲気になってきたのは素晴らしいことかなとも思います。

川上量生さん、カドカワ代表取締役からヒラ取締役に躍進(ブロマガ 山本一郎 19/2/13)

「ニコニコ動画」の低迷はサービス競争以前の、単なる体力負けなのではないか(ヤフーニュース個人 山本一郎 17/11/29)

 単に「動画サービス」としてニコニコ動画を立て直そうとすると、このカドカワ社の発表のさらに数倍の先行投資がかかることは明確なわけで、このまま本当に手を打たなければドワンゴ社はカドカワ社のその他大勢孫会社としてしめやかな最期を迎える可能性もありますし、本当に気を揉む展開になってきました。

 良い形で業績をまとめ直し、再び成長軌道に戻せるよう、川上量生さんや皆さまの今後のご活躍を投資家としても心よりお祈り申し上げております。