ユーザー行動履歴情報でマネタイズを目論むビジネスモデルってこれからどうなんですかね

 昨年末はPayPay騒動などもありましたが、おそらく今年もさらにいろいろとキャッシュレス決済周辺を巡って賑やかなことになりそうな気がします。

 とくに、どこまで本気なのか判断に困る部分もありますが、消費税増税に関連して政府がキャッシュレス決済を通じてポイント付加による還元策を検討しているという話もあり、従来であればキャッシュレス決済に興味を抱かなかったような層にも注目されることになるのではないかと思われます。

 話題になったPayPayは2月12日から再び100億円キャンペーンに乗り出すそうで、なぜかYahoo!JAPANの決算発表会でも正面から取り上げられて悲願のオフラインマーケティングネタになっとるようですが、まあ頑張ってください。

PayPay、100億円キャンペーン再び 2月12日から(ITmedia NEWS 19/2/4)

PayPayは「ヤフー史上最速」で成長--オフライン取り込みマーケ領域で売上5000億円へ(CNET 19/2/5)

消費税2%増税幅上回る「キャッシュレス5%還元」って誰のため?2兆円の増税対策のコスパは?(BUSINESS INSIDER JAPAN 18/12/21)

ポイント還元は2019年10月から9カ月間に限り、クレジットカードや電子マネーで買い物をした消費者に、原則として支払い額の5%を還元する仕組み。消費税率の引き上げ幅の「2%」を大きく上回る大盤振る舞いだ。コンビニや外食といった大手系列のチェーン店では還元率を2%とし、中小店舗を優遇する。政府が2798億円を負担する。

出典:BUSINESS INSIDER JAPAN

 キャッシュレス決済のプラットフォームということではやはりスマホが注目されるわけですが、必ずしもすべてのスマホ端末がキャッシュレス決済システムに対応しているわけではなく、とくに旧機種やいわゆる“格安スマホ”などの呼称で流通・販売されるSIMロックフリーの安価なAndroidスマホでは利用できないという場合も少なくありません。従来であれば、こうした端末のユーザーがスマホを使ったキャッシュレス決済を利用したい場合には、キャッシュレス決済に対応した新しいスマホに乗り換えるしか術がありませんでした。

 ここにきて新たにmicroSDカードにNFCのタッチ決済機能を搭載させることで既存端末でもキャッシュレス決済を利用可能とするサービスが国内に登場するようです。

格安スマホでもVISAなどのNFC「タッチ決済」が可能になるプロジェクト始動(ケータイWatch 19/1/16)

オンラインの機能やプラットフォームは5月のサービスインを予定し、スマートフォン向けの展開は2019年秋の開始を目指す。

(中略)

具体的には、NFC(TypeA/B)のチップやアンテナ、決済機能に必要なセキュアエレメントを搭載したmicroSDカード「INCIR SD CARD」を提供する。これをAndroidスマートフォンに装着することで、NFCに対応していないスマートフォンでも、店頭での「タッチ決済」(海外ではContactlessと呼ばれる)を実現する。

出典:ケータイWatch

 なるほど、microSDカードスロットのあるAndroidスマホであればどの機種でも支障なく動作するようであればかなり面白いサービスになるのかもしれません。ただし、このサービスのビジネスモデルについては別の記事でちょっと気になる話が出ていました。

格安スマホに「タッチ決済」機能を載せる独自SDカード NFC Type A/Bに対応(ITmedia 19/1/17)

SDカードの値段は未定だが、「SDカードの販売からは利益を上げるつもりはない。普通のSDカードとあまり変わらない価格で提供するつもりだ」(横地CEO)。

(中略)

ビジネスとしては、インサーホームで得られるユーザーの行動履歴の分析によるマネタイズを見込む。

 インサーホームは、企業や個人がコンテンツ配信元として自由に登録できるECプラットフォーム。配信を受ける一般ユーザーは、インサーウォレットや同社のオンライン決済サービス「INCIR PAY」(インサーペイ)を通して商品やデジタルコンテンツを購入できる。

出典:ITmedia

 この少ない情報からだけでは、ユーザーの行動履歴の分析がどういう形でマネタイズにつながるのかはまったく分かりませんが、穿った見方をすれば、ユーザーの消費行動データを第三者に販売して儲けるみたいなことなのかなと想像できなくもありません。あるいは広告でしょうか、それともこのインサーペイ経由での取引量が増えれば決済手数料が増えると思っているのでしょうか。いまひとつ、何を狙いにしたいのか見えないなあという印象です。

 こういう形でユーザーに対して利便性のあるサービスを提供しながら、そのユーザーの個人情報を上手にマネタイズして大きく稼ぐビジネスといえば、その筆頭はFacebookだったりするわけですが、そういう手法を真似るということなのでしょうか。しかし、Facebook的なビジネスのやり方は世界中で疑問視される傾向にあります。ちょうどAppleの中の人もこうした状況に対してかなり強い形で問題提起をしておりました。

アップルのクックCEO、プライバシー関連規制の必要性などあらためて主張(CNET Japan 19/1/18)

Appleの最高経営責任者(CEO)であるTim Cook氏は、ユーザーのデータが本人の知らない間にオンラインで絶えず販売されていることを指摘し、消費者のプライバシーの権利の強化をあらためて求めた。

(中略)

小売業者は、購入に関する情報を『データブローカー』に販売または譲渡したことをあなたには伝えない。データブローカーは、人々の情報を収集し、パッケージ化して、さらに別の購入者に販売するためだけにあるような企業だ

出典:CNET Japan

 一方で、Appleが指摘するような個人情報の取り扱いに関する問題意識に対して、そういう感覚は中高年の勘違いなんじゃないかみたいな方向に持っていく話もあるようでなかなか興味深いです。

「個人データ渡さない」4割 「ネット良い影響」若年層4割 60代以上は16%(日本経済新聞 19/1/21)

若年層の特徴はネット利用のリスクを見極め「自己責任」で向き合おうとする意識の強さだ。

(中略)

ニッセイ基礎研究所の中村洋介主任研究員は「ネットに対する中高年の不安が強いままだと、利便性を享受できない『デジタル難民』を生みかねない」と分析。「中高年の孤立を防ぐためにも、国や企業はデジタル教育に力を入れるべきだ」と指摘している。

出典:日本経済新聞

 ネットサービスに対する極度な不安や猜疑心みたいなものは確かにどうかとも思いますが、一方で事例によっては明らかに個人情報を上手に収集されているパターンもあり得るわけでして、この調査結果に覚えるちょっとした違和感についてはこの手の話に詳しい楠さんがサクッとTwitterで指摘されておりました。

 これまで散々もてはやされてきたデータ資本主義みたいなものが見直される時代の変わり目を感じることが増えた今日この頃ですが、先にあげたユーザーの行動履歴分析でマネタイズを堂々と公言するスタートアップみたいなものがこれから日本でどう受け止められていくのかは注目したいと思います。

 冒頭にも例示しました通り、オフラインマーケティングは個人情報が具体的に行動に結びつきお金が落ちた瞬間を捕捉するものですから、インターネットサービスで集めた個人情報でデータドリブンを企図しビジネスにつなげたい側からすれば、ネットに繋がっていない消費行動に直結できるというのは大きいのかもしれません。LINEも楽天もその他プレイヤーもこの手のビジネスには「乗り遅れると再編ゲームにすら間に合わない」と頑張って参入してきた結果、文字通り決済系乱立の様相もあります。

 しかし、データドリブンでおカネを作るのに必要なことはユーザーの購買履歴やオフライン情報を集めてきて線形分析してユーザーの行動の未来予測エンジンを回すことだけでは完結しません。Yahoo!JAPANだけで「売上5,000億」とかぶち上げちゃって本当に大丈夫なのか、利益はついてくるのかは、物凄く心配なわけですが、まあ頑張ってください。