「竹中平蔵の講義に反対」ビラ配った学生に東洋大学が退学勧告との報

 竹中平蔵さんが教授を務める東洋大学で、同大学4年の船橋秀人さんによる抗議が行われて東洋大学当局から2時間以上の尋問を受け、退学処分を課すことが警告されたようで、総立ちになっております。

竹中平蔵(教授)(東洋大学オフィシャルサイト)

 竹中平蔵さんと言えば、言わずと知れた新自由主義的な構造改革論者として自由民主党・小渕恵三内閣から小泉純一郎内閣の経済ブレーンを歴任、とりわけ小泉内閣では内閣府特命担当大臣(経済財政政策担当)や総務大臣として重用された学者であり政治家です。

 政治家としてのキャリアを終えてからも、大物学者として慶應義塾大学総合政策学部教授や東京財団理事長などを歴任、現在は表題の通り東洋大学教授として教鞭を執る傍ら、森ビルアカデミーヒルズ理事長やパソナグループ取締役会長、オリックス社外取締役、SBIホールディングス社外取締役など財界人活動にも従事しておられます。

竹中平蔵(wikipedia)

「正社員はいらない」“煽る人”竹中平蔵とは何者なのか?(文春オンライン urbansea 18/07/01)

 一方、経済政策に関連して労働行政などでは竹中さんは持論である新自由主義的な見地からの過激な物言いでたびたび物議を醸しており、とりわけ「サプライサイド経済学」とも言われる原理的な競争戦略は、時として「弱者切り捨て」「福祉政策の否定」ともとられる冷酷な市場原理主義そのものになってしまうため、なかなか評判が芳しくありません。一言で言えばマッチョ思想であり、規制緩和(撤廃)論やシュムペーター的な「破壊的創造」と言うべき「一度破壊して、残ったものが成長する」という議論は、苦しいながらもささやかに暮らしている(と自分で考えている)国民には冷や水を浴びせることも厭わない過酷な経済政策と酷評されやすいのもまた特徴です。

 竹中さんの経済理論の是非はさておき、政策として実現するとなると産業側、雇用者側、企業側に有利な経済体制を志向する(プロビジネス)になることから、旧社会党や共産党系のような左派経済思想とは相反し、激しい論争になることは言うまでもありません。そればかりか、小泉改革と言われた時期に重用された竹中さんは政治家として勇退後、パソナやオリックスなど規制緩和の最大の受益者と目される企業に堂々と取締役として転身したことを考えると、竹中さんに批判的な考え方を持つ人たちは事後収賄だと断じてもおかしくないぐらいの不実を為している人物であると論難されることになります。

 さて、その竹中さんが東洋大学で授業を行っていることに関して、前述の4年生・船橋さんが抗議の立て看板などをし、ビラを撒いたことについては、大変な物議を醸す内容であることは間違いありません。書かれている内容も竹中さんに対する正当な批判というよりは誹謗中傷に近い内容とも言え、この内容を直接抗議運動の中で学内展開したならば、東洋大学ならずとも秩序を乱す行為であるとして退学処分を課されても何ら不思議はないものであると言えます。

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船橋秀人君のビラの文は、以下の通りです。

この大学はこのままでいいのだろうか?

我々の生活が危ない!

竹中氏の過悪、その一つは大規模な規制緩和である。特に2003年の労働者派遣法の改悪がこの国にもたらしたものは大きい。それまで限定されていた業種が大幅に拡大されることで、この国には非正規雇用者が増大したのである。「正社員をなくせばいい」や「若者には貧しくなる自由がある」といった発言は、当時の世論を騒がせた。

しかしながら、この男まるで反省の素振りを見せない

「朝まで生テレビ!」という番組では、自らの政策の肝であったトリクルダウン(お金持ちが富むことでその富が貧しい者にも浸透するという理論)について、「あり得ない」というある種開き直ったかのような発言をしており、まるで自分がやった責任について無自覚なようだ。

また、昨年可決された高度プロフェッショナル制度については、「個人的には、結果的に(対象が)拡大していくことを期待している」などという驚くべき思惑を公言している。つまり、初めは限定的なものだからという理由で可決された労働者派遣法が、今これほどまでに対象を拡大したように、高度プロフェッショナル制度は、今後とも更なる拡大が予想されるのである。

無論、我々も例外ではない。労働者はこれから一層使い捨てにされることになるのだ!!

様々な利権への関与!?

竹中氏が人材派遣会社のパソナグループの会長を務めているということも忘れてはならない。というのも労働者派遣法の改悪は、自らが会長を務める会社の利権獲得に通じていたからだ。まさに国家の私物化である。

また、最近では昨年法案の正当性について全く審議されずに可決された水道法改正案と入管法改正案についても関与していたことが明るみになっている。更に加計学園との関連も取りざたされており、今後ともこの男の暴走を追及する必要がありそうだ。

今こそ変えよう、この大学を、この国を

皆さんは恥ずかしくないですか、こんな男がいる大学に在籍していることが。僕は恥ずかしい。そして、将来自分や友達や自分の子どもが使い捨てにされていくのを見ながら、何も行動を起こさなかったことを悔いる自分が、僕は恥ずかしい。意志ある者たちよ、立ち上がれ!大学の主役は、我々学生なのだ。右も左も前も後も何にも分からない人も、みんな集まれ。民主主義は決して難しいものではない。共に考え、議論し、周りに訴えながら、もう一度みんなでこの社会を立て直そう!!

(註:文中、太字は筆者山本による)

 このような実にけしからん誹謗中傷が竹中さんに対して行われることは、いろんな意味で東洋大学の品位を貶める行為に他ならず、仮にこれらの批判が事実であり正鵠を射ているものであったとしても、書き方が悪く望ましいものとは言えないことは明確でしょう。

 さっそく東洋大学に電話をしてみたところ、東洋大学の学生支援課では学内活動として立て看板やビラ配りはキャンパスが狭小であるという事情から禁止しているものの、この行為を行った学生を退学処分にするかどうかは教授会で決めることなのだそうです。

 さらに、配られたビラには「東洋大立て看同好会」まで設立されているようです。このような内容がばら撒かれるというのは、まさに東洋大学の品格が問われる事態と言えましょう。「竹中平蔵教授の実態」とされる内容で、実に、けしからん内容です。

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 このビラの内容について補助線を引くとするならば、次のような内容が参考になるでしょう。

「検討中」だらけの改正入管法 11の珍言で成立を振り返る(文春オンライン 大山くまお 18/12/18)

竹中平蔵 東洋大学教授

「日本において、移民の受け入れは『必然』と考えるべき」

『東洋経済』2月3日号

 かねてから外国人労働者の受け入れに対して積極的に発言していたのは、政府の日本経済再生本部産業競争力会議(民間)議員、内閣府国家戦略特別区域諮問会議(有識者)議員、政府の未来投資会議メンバーなどを務め、同時にパソナグループ取締役会長、オリックス社外取締役などを務める竹中平蔵氏である。雑誌『東洋経済』でのインタビューでは「社会や経済を支える労働資源を確保する手段として、海外からの移民の受け入れが必要だ」と強調していた。

(略)

 今年3月9日、竹中氏が有識者議員として参加している国家戦略特別区域諮問会議が、国家戦略特区の指定を受けている新潟市、京都府、愛知県の3カ所で外国人の就農を解禁することを決めた。これで人材派遣会社が外国人労働者を農業生産法人に提供することが可能になる。法務省、厚労省、農水省などは難色を示していたが、竹中氏らが「度重なる議論にもかかわらず、法務省の担当者などの対応が遅く、進捗が芳しくない」と文書で圧力をかけたという経緯がある(東洋経済オンライン 2017年6月20日)。

 また、2015年9月9日の同会議では、外国人家事支援人材の受け入れの実施が報告されている。神奈川県で実施された外国人家事支援人材の受け入れ事業を請け負った企業のうちのひとつが、竹中氏が会長を務めるパソナグループである。その後、パソナグループはフィリピン人による家事代行サービスをスタートさせた。

出典:文春オンライン 大山くまお

 実にけしからん話になっておるわけでして、このような話がまかり通るのは天下の害悪であることは言うまでもありません。東洋大学の教授会がもしも健全に機能しているのだとするならば、事実に基づいた問題のある主張が学生によってこのように平然と語られてしまう実情について然るべき対処を行うべきでしょうし、場合によっては追放も辞さないぐらいの強い処分を行わなければならないのではないか、と感じます。

 東洋大学の毅然とした対応が求められているようにも思いますし、本件を奇貨として、一層の議論が深まることを期待してやみません。