不人気な「マイナンバーカード」はいまのままで普及するのでしょうか

(写真:ロイター/アフロ)

 個人番号(通称「マイナンバー」)制度が開始されてから早くも3年以上が過ぎたわけですが、相変わらず運用面での齟齬みたいなものが目につく状況は変わらない感が強いです。混乱する必要のないところで混乱している印象があり、足踏みする要素は本来無さそうなマイナンバーがどうしてこうなっているのか不思議でなりません。

 とくにマイナンバー制度開始と同時に交付が始まった個人番号カード(通称「マイナンバーカード」)の活用については疑問に感じることが多々あります。たとえば、マイナンバーカード必須であったはずの「e-Tax(国税電子申告・納税システム)」においても、来年から個人のe-Tax利用率向上などを一応の名目としてマイナンバーカードが必ずしも必要とされない施策を提供することになりました。

確定申告、来年からはスマホでどうぞ 国税庁が新方式(朝日新聞 18/11/6)

「e―Tax」の利用率は法人は8割だが、個人は5割強にとどまる。個人の利用率を上げるため国税庁は、マイナンバーカードが必要だった従来方式に加え、新たにID・パスワード方式を導入。スマホやパソコンでもマイナンバーカードなしで申告できる。ID・パスワードは運転免許証などの本人確認書類を税務署に持参すれば、無料で即日発行される。翌年以降の申告でも、同じものを使える。

出典:朝日新聞

 この一件で興味深いのは、ID・パスワード方式を新たに導入するにあたって公式に出された告知に記載されている注意書きです。

【平成31年1月開始】e-Tax利用の簡便化に向けて準備を進めています(e-Tax)

(注1) マイナンバーカード及びICカードリーダライタが普及するまでの暫定的な対応(導入後、概ね3年を目途に見直し)として行います。

出典:e-Tax

 つまり、とりあえず今のところはマイナンバーカードが無くても対応することにするけれどそれはあくまで暫定措置であり、この対応が永遠に続くとは思うなよということであります。はたして3年後にマイナンバーカードやICカードリーダライタが無事普及しているのかどうかは謎です。とくにマイナンバーカードをスマホで読み取らせるためにICカードリーダライタを別途用意しなければならないという建て付けはあまり筋がよろしくないように思います。

 で、いかにマイナンバーカードが現在不人気であるかについては、とても分かりやすい調査結果の数字がニュースで報じられておりました。

「カード取得しない」53% マイナンバーの内閣府調査(産経ニュース 18/11/30)

内閣府は30日、マイナンバー制度をめぐる世論調査結果を発表した。希望者に無料で交付する個人番号カードの取得予定がないと53%が答え、理由として「必要性がない」との声が目立った。

(中略)

総務省によると、マイナンバーカードの交付実数を元にした交付率は11月27日現在で12・2%に止まっており、調査結果以上に普及に苦戦しているのが現状だ。

出典:産経ニュース

 内閣府の調査回答にはさらに手痛い指摘もあったようです。

マイナンバーカード普及進まず 半数以上が取得予定なし 内閣府調査(財経新聞 18/12/2)

既にカードを取得した人からは、「カード取得のメリットは、コンビニで住民票が発行できたことだけ(ただし一部地域は対象外)」、「マイナンバーカードがあるのに区役所での手続きで住所を書かされた」等の声が出ている。

出典:財経新聞

 わざわざ取得しても使い途があまり無いだけでなく、本来であれば行政手続きの簡略化に役立つはずなのに行政側のシステムが対応していないという状況でもあるということですね。

 政府としてはマイナンバーカードを持つメリットをいかに増やしていくかで色々と腐心しているようですが、だからといって消費税増税対策としてマイナンバーカード取得者にだけポイントを付与することにしてカード普及を目指すといったやり方などはなにやら本来の諸々の目的から逸脱している印象を拭えません。

増税対策、膨張9項目 マイナンバーカードにポイント(東京新聞 18/11/27)

 マイナンバーカードの筋が悪いなと感じるのは、あくまでも納税などを含む限られた行政手続きのみに必要とされるマイナンバー情報を記録した書類と、行政手続き以外でも広範に利用可能な政府発行の身分証明書を一つにまとめようとしたところにあるのではないかと考えます。もちろん、マイナンバーもマイナンバーカードも制度として過渡的なのは分かりますが、肝心の行政側も混乱している状況で「国民のために統一した指針をもって矛盾なくサービスを提供しろ」と言われても調整が大変なのでしょう。

 現在のところ政府としては国民が常にマイナンバーカードを携帯して、店舗での買い物などの際に一種のポイントカードとして使ってほしいようですが、そうしたポイントカードに無闇に他人に知られてはいけないはずのマイナンバーを記載しておく必要はまったく不要なのではないでしょうか。常に持ち歩けば意図せずどこかに置き忘れたりするなどの紛失や、悪意のある盗難被害にあう可能性も十分にありえるわけでして、そうした機会が決して低くないカードにマイナンバーのような機密情報ともいえる番号が誰にでも簡単に読み取れる形で記載されていること自体がセキュリティ的にあり得ないというかシステムとして破綻しているように見えます。

Q1-8 マイナンバーを取り扱う場合に何に注意すればいいですか。

A1-8 マイナンバーは生涯にわたって利用する番号なので、通知カードやマイナンバーカードをなくしたり、マイナンバーをむやみに提供したりしないようにしてください。

また、マイナンバーの通知や利用、マイナンバーカードの交付などの手続で、行政機関などが口座番号や口座の暗証番号、所得や資産の情報、家族構成や年金・保険の情報などを聞いたり、お金やキャッシュカードを要求したりすることは一切ありません。 銀行のATMの操作をお願いすることもありません。こうした内容の電話、手紙、メール、訪問などには絶対に応じないよう、注意してください。

出典:内閣府

 政府はマイナンバーカード普及を呼びかける場面では「マイナンバーカードには税金や年金などの行政情報は含まれておらず、登録されている個人情報が限られている」という見解を表明しますが、それではマイナンバーカードに記載されているマイナンバーもそれほど重要な個人情報ではないということにもなりそうでなんとも不思議といいますか、“矛盾”にまつわる故事を改めて思い出す次第です。

矛盾(語源由来時点)

 正直、制度としての「マイナンバー」と、身分証明書としても使える「マイナンバーカード」との違いが国民に分かりにくく、結果として誤解が誤解を呼んでいる部分もあるように思います。

 マイナンバー制度で言うならば、国民背番号としてマイナンバーの数字自体が知られても問題が起きないような仕組みにするのがコンセンサスとして良かったはずなのですが、これが今後例えば医療情報などの個人に関する機微情報と組み合わさったときに、納税や自治体サービス以上の混乱だけでなく「その人の既往歴や投薬状況なども第三者に知られてしまいかねない」と危惧する人も出ると思います。しかし、本来はそれは「マイナンバーの利便性の話」であって「不人気なマイナンバーカードだけの問題ではない」のですが……。

 どうにももったいないというか、残念な話だなと思うのですが、どうでしょうか。