Facebookなど各種SNSにおける言論・表現規制をめぐるあれこれが新局面に

(写真:ロイター/アフロ)

 SNSにおける極端な言論や表現をどこまで許容するかという問題については過去数年でずいぶんその中身が変わってきたように感じます。

 当初は投稿される画像などがエログロナンセンスにあたるかどうかが主な議論の中心でありましたが、分かりやすい事例としては以下などが思い出されます。

「授乳」はヌード写真なのか フェイスブックが写真削除で大騒ぎ(J-CASTニュース 14/11/6)

フェイスブック「ナパーム弾の少女」写真検閲で物議 批判受け撤回(AFP 16/9/10)

 こうした不適切な情報がSNS上で流通することに対して各プラットフォーム事業者はそれぞれのルールを作ってフィルタリングなどを施すことで社会的な批判をかわしてきた経緯があるわけですが、国際政治に影響を及ぼすようなフェイクニュース類の登場により、従来のようなやんわりとした対応だけでは事が済まなくなってきたというのが最近の状況です。とはいえ有効な対処方法がそれほど確立しているわけでもなく、いよいよ問題があるとプラットフォーマー側で判断したアカウントについてはBANするという強硬な形が主流となりつつあります。

フェイスブック、一部アカウントを閉鎖 外国組織と関連の疑い(ロイター 18/11/6)

 不適切と判断されたアカウントや投稿が排除されていくというあり方については、乱暴ではあるけれどそれもやむを得ない措置だとして受け入れるかどうかは各人の立場によって異なるわけですが、当然ながら言論・表現の自由への弾圧になるのではないかという批判的な意見も出てきます。

「Facebookの検閲に異議申し立ての機会を」――世界の市民・人権・デジタル権団体がザッカーバーグCEOに要請(P2Pとかその辺のお話R 18/11/13)

電子フロンティア財団(EFF)と70を超える人権団体・デジタル権利団体は本日、マーク・ザッカーバーグ氏に対し、Facebookのコンテンツ削除手続きにおける真の透明性と説明責任を果たすよう呼びかけた。具体的には、Facebookが削除するコンテンツの数(正しく削除されたもの、誤って削除されたものの双方)を明確に説明し、削除に異議を申し立て、コンテンツを復旧するための公正かつ適時的な手段を提供するようFacebookに求める。

出典:P2Pとかその辺のお話R

 不適切な情報の流通は止めろと要望される一方で、不適切と判断して削除する際の手続きの透明性や説明責任を求められるのは、SNS運営にとってかなりの負担であることは想像に難くありません。そこで、こうした厄介で面倒な問題から逃れるためにFacebookは新しい解決策を提示しています。

Facebook、コンテンツ削除などを監督する独立組織を2019年に設立へ(CNET Japan 18//11/19)

Facebookは、投稿されたコンテンツに対して同社が下す決定への異議に対処するため、監督組織を設立する。

(中略)

最高経営責任者(CEO)のMark Zuckerberg氏は投稿の中で、監督組織とユーザーの関係は、取締役会と株主の関係に似たものになると述べた。

出典:CNET Japan

 もはや、そういう第三者組織を作る以外に、公平性と納得性を担保する手段はない、と判断してもおかしくないのは事実です。「これはフェイクニュースだ」とある人間は主張し、また別の人間はフェイクではないと応じるとき、それを検証し、白か黒かを納得のいく形で判定することのできる人物をプラットフォーム事業者が事業組織の中に用意するのは大変です。ならば、外に出して客観的に見てもらう以外方法はないじゃないか、というのも道理です。

 一方で、具体的なことはあまり外で語られておらず、何度読んでも監督組織についてのFacebook側の説明は今ひとつよく分かりませんが、多方面から殺到する苦情があまりにもたくさんきて大変なのでなんとかしたいんだろうなということは分かる気がします。新たに提案された「独立した組織」が上手く機能するのかどうかは今後の同社の動向を見守るしかありませんが、おそらくは他のSNSサービスを提供するプラットフォーム事業者もいずれはFacebook同様の対応に取り組んでいかざるを得ないのかもしれません。

 で、新たな監督組織の提案をすることでFacebookもひとまずは権利団体などの皆さんにしばらく黙ってもらえるようになったのかと思いきや、さらに一枚上手の敵が登場したようです。

Facebook、偽ニュース対策でブロックしたロシア企業に提訴される(CNET Japan 18/11/21)

自らを合法的な報道機関だと主張するロシアの企業が、Facebookを提訴した。

(中略)

訴状の中で、FANは自社について、「独立した本物の合法的報道機関で、一般の人々にとって重要で興味深いニュースを報じている」と説明し、Facebookによる不正アカウントの取り締まり強化に誤って巻き込まれたと主張している。

出典:CNET Japan

 このような動きは当然起きるだろうなと思っていたら、ちゃんと起きるあたりはさすがですが、提訴したのがロシアの企業であったというのは実に皮肉なものです。

 そして、このロシア企業の言っていることがどこまで本当なのかは定かでありませんが、訴状を見る限り「BANされた経緯が適切に公開されず、公平とは言えなかった」という内容が含まれているのが興味深いところです。こうしたアカウントをBANされたユーザーがSNS側を訴えるという事案はこれから増える可能性もありそうです。まあ、ほとんどのSNS運営は大手プラットフォーム事業者なのでこうした訴訟の一つ一つはそれほど負担にはならないとしても、言論・表現規制に伴う厄介の種がまた新たに増えたというところでしょうか。SNSビジネスはそのサービスの性格上、こういう面倒な人達といかに上手く付き合っていくかがキモとは思いますが、中の人の悩みの種は尽きない感じに見えます。

 なお、私自身もTwitterのアカウントが不当に凍結され、いろいろとTwitter社ともやり取りを続けたうえで知ったことなのですが、通報を受けて機械的に単語などを判定した結果をもって利用者をBANするにあたって、ついでにダイレクトメッセージなど主要な機能も使えなくなるという点で、SNSではなく他の利用者とコミュニケーションを行う権利も同時に奪われることはあまり争点にならないようです。いわば、プラットフォーム事業者はSNSと並んで人対人のコミュニケーション手段も提供していた場合、Twitterを主たる連絡手段のひとつにしている人は同時にコミュニティからも切り離されることになります。

高木浩光&山本一郎、Twitterに機能制限されて書き込みできない状況が続く(やまもといちろう 公式ブログ 18/10/25)

 そして、おそらくはそういう問題を指摘されることをちっとも予想していなかった(少なくともTwitter社は)わけで、この体たらくで世界的なコミュニケーションツールをどうやって運営していこうとしているのだろうと不思議に思うところがあります。もちろん、いろんな問題に直面しつつ頑張って対応をしているのかもしれませんが、やり取りの中で返ってくる程度の低い塩対応を観る限りおそらくはしばらくこの手の問題は解決しないのだろうと感じます。FacebookもTwitterも他のプラットフォーム事業者も、ほんと今後どうするんだろうと思うわけですが。