LINE「Clova」が苦戦、スマートスピーカーで葬儀を段取る時代はやって来るのでしょうか

(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 現在、国内で音声アシスタントに特化したデバイス、通称“スマートスピーカー”を積極的に市場展開しているのは、Amazon、Google、LINEと外資系企業ばかりです。残念ではありますが、もはやこういうコンシューマー分野ですぐには採算が見込めそうもない実験的製品に莫大な資金を注ぎ込んで冒険できる余裕は国内メーカーには無いということなのかもしれません。

 一方で、日本国内では人工知能(AI)を搭載したチャットボットが一時期ハイプな状況になり持て囃されたものの、どうやら一気に失望フェーズに入ってしまって投資界隈でも出資が滞るようになってきました。AI全体が終わり気味なのか、AIを使ったコミュニケーションが意外と客がつかず有望なデータも取れなかったという話に過ぎないのか分かりませんが、過剰な期待を持たれる技術分野が落ち着くのは定番なので、仕方がないのかもしれません。

 そうした背景もあり、また言語という壁もあることから、スマートスピーカー関連サービスにおける日本向け対応というのはやはりどうしても後回しになりがちなわけですが、実はLINEが事業展開するスマートスピーカーの「Clova」は現在のところ日本や韓国などでしか販売していません。つまり、日本市場をメインのひとつに投入している唯一のスマートスピーカーということになります。そういうことからAmazonやGoogleには真似できないような日本市場に完全特化したきめ細やかなサービスの提供を期待したいところですが、今のところ技術的な課題も多いのでしょうか、なかなか理想通りにはいってないように見受けられます。もちろん当事者であるLINEとしてもこうした状況は十分に理解しており色々と戦略を練っているようです。

LINEはスマートスピーカー「1人負け」を抜け出せるか(ASCII.jp 18/7/2)

舛田淳CSMO(Chief Strategy & Marketing Officer)は「スマートスピーカーのプレイヤーでキャラクターにこだわるのはうちぐらいなものではないか」と胸を張る。確かに日本のユーザーはキャラクターを好む傾向がある。その点でLINEの戦略は間違っていないのだろう。

出典:ASCII.jp

 押し出せるものを吟味した結果、そうだ日本人にはキャラクターなのだ! という結論になったということでしょうか。

 この記事を書かれた石川温さんも結論としてスマートスピーカーが市場競争で成功するためには「いかにパートナーを集め、実用性のあるスキルや家電連携を提供できるか」が軸となるだろうと書かれております。やはり“実用性”は大事ですよね。私の実家にもLINE製「Clova」が稼働していますが、ほとんど義父や義母が落語を聴くために呼び掛けているのがほとんどで、まあこういったところから実用的になっていってくれればあるいは、ということなのでしょう。

 ということで、LINEとしても“スキル”を提供することが課題であるという認識はありましてパートナー各社と提携していく予定であったわけですが、目出度く8月になってスキルストアの開設に漕ぎ着けることができたようです。

LINE、スマートスピーカ「Clova」のスキルストアを開設--60種類以上を公開(CNET Japan 18/8/7)

 どんなスキルが公開されたのかと紹介記事などを軽く調べてみたらこんなものがありました。

スマートスピーカーでお坊さんも呼べる 「Clova」で「お坊さん便」手配可能に(ITmedia 18/8/8)

Clovaに「ねぇClova、僧侶手配を開いて」と話しかけるとスキルが起動。続いて「お坊さんを呼んで」と話しかけ、葬儀・供養・戒名授与から希望のサービスを選択して連絡先の電話番号を伝えると、コールセンターから電話がかかってきてお坊さん便を依頼できる。

出典:ITmedia

 これ需要あるんですかね。スマートスピーカーを介して葬儀の段取りをするという状況があまり想像できません。しかも、結局はコールセンターから電話がかかってきてそこで口頭で要件を依頼することになるというのであれば、最初から電話で用を済ませるほうが手間は少ない気もします。こうなると本来のスマートスピーカーに求められる“実用性のあるスキル”とは乖離しているアイディアだなというのが素直な感想です。

 Twitterに流れて来たLINEのスキル全般に対するコメントでは以下のようなものがありまして、私だけが違和感を覚えているということではないようですが。

 せっかく、日本市場に特化したスマートスピーカー事業の展開をできる立場にあるLINEですから、もう少し広い市場を見据えて誰もが使ってみたいと思うようなサービスを用意していただきたいものだなと思った次第です。

 ちなみに、スマートスピーカーで何かモノを買うという行為は米国でもユーザーにとってはちょっとハードルの高い行為ではあるようです。

Alexa搭載スマートスピーカーでの買い物は全端末のわずか2%――The Information報道(ITmedia 18/8/7)

The Informationによると、Alexaで買い物をしたユーザーの90%は1度しか利用していないという。

出典:ITmedia

 ある意味で、スマートフォンの次のUX/UIは、人工知能+言語認識によるスマートスピーカーなのだ、ということでハイプカーブ入りしてみたものの、使う側の人間は意外とこのマンマシンインターフェイスに利便性は感じていなかった、浸透するのに長く時間がかかりそうだ、ということは言えそうです。

 行き詰まるのが早かったなあと感じるべきか、ここからもう一段新たなブレイクスルーがあるのだと考えるべきかは、この夏の間にじっくりと悩んでみたいと思います。