スマホアプリビジネスをめぐる夢のある話の終焉、あるいはゲーム紹介のアフィリエイトの中止

(写真:ロイター/アフロ)

 スマホが市場に登場してからおよそ10年の月日が経ちました。スマホ黎明期においてはアプリこそがスマホ最大の売りであり、アプリに秘められた無限の可能性はエンドユーザーにとっても、アプリ開発者にとっても、そしてアプリ流通ビジネスを目論む者にとってもまさに夢いっぱいの時代でした。

 個人開発者の作りだしたアプリが世界的ヒットになって大儲けみたいな事案も過去にはよく報じられたものです。

3人で開発 半年で12億円稼いだスマホゲーム(College Cafe by NIKKEI 15/6/12)

 また、最近でも大手ゲームブログ『ゲームキャスト』がiOS向け有料アプリ『Dungeon Maker』の面白さを紹介したところ、カルト的な人気に火がつくなどの事例もありました。

『ダンジョンメーカー』Ver1.4アップデート&夏の割引セール開始! 新魔王、新タイトル絵、新たなバランスを楽しもう(ゲームキャスト 18/8/3)

“時間が溶ける”恐怖のアプリ「ダンジョンメーカー」が異例のヒット 「時間泥棒すぎる」「延々やってしまう」(ねとらぼ 18/5/27)

 ゲームアプリ紹介のビジネス化が進む一方、本当に面白いゲームを地道に発掘するメディアが金鉱を掘り当て、良いゲームを作るメーカーも掘り起こして紹介したメディアも儲かる、というのは実に優れたエコシステムでした。こうしたスマホアプリを紹介するブログメディアもアフィリエイト収益によって絶好調というまさに我が世の春状態でありました。

 

 しかし良いことばかりがそんなに長続きしないのが世の常であります。

 スマホアプリ市場は徐々に大手企業の資金力がなければビジネスとしてまわらない厳しい状況に変貌していきました。主な理由はあまりにアプリが増えすぎてしまい、アプリストアで常に上位にランキングされなければ誰にも知ってもらえず使ってもらえない。そして人々に知ってもらうためにはTV CMやターミナル駅での巨大ポスターのような大がかりな広告展開が必須ということであり、ちまちまと個人開発者が草の根的に広めようとしてもまず太刀打ちできなくなってしまったということです。

 何より、一時期問題になったApp Storeでのダウンロードランキングの不正操作では、悪名高き「中華ブースト」が横行。また、ゲーム制作費の高騰に伴いインディーが死滅する一方、個人開発社名を偽装するお小遣いアプリを駆使して資金にモノを言わせリワード広告などダウンロード数を水増しする事例も後を絶ちませんでした。

伊勢丹にグノシーなどApp Storeランキング不正行為 #AppStore定点観測 7/20(アップトーキョー 18/7/20)

グノシー他、AppBank「モンスト攻略」ブーストでアプリダウンロード数を水増し( Y!ニュース 山本一郎 15/6/13)

 一方で、スマホアプリの紹介メディアについても、Googleの方針によってAndroidアプリはアフィリエイトが導入されなかった結果もあるのでしょうが、似たり寄ったりのiOSデバイス向けアプリ紹介メディアばかりが雨後の筍のように誕生してパイの奪い合いをする感じでありました。アクセス数を稼ぐために、常に記事が更新されるwiki状態の攻略サイトを多数立ち上げ、検索エンジン経由での流入を増やす仕組みで収益化し株式上場に至った企業もあります。

 しかもアフィリエイト収益に依拠するビジネスモデルであることから、本来の読者に対してアプリを分かりやすく紹介するということよりも、とにかくユーザーにたくさんアプリをダウンロードさせることがプライオリティとならざるをえず、必然的にメディアの内容も質の低いアフィリエイト広告でしかなくなってしまったのは多くの人が知るところであります。

 で、そんなこんなでスマホアプリ市場も大きな金が動くような感じではありますが、ここに来てAppleがスマホアプリのアフィリエイト停止を決定という報が入ってきました。

 あまりにも突然だったので、界隈が阿鼻叫喚になったようです。

App Store アフィリエイトプログラムの変更について(Apple)

新しいiOSとmacOSのApp Storeの開始により、Appの見つけやすさが一段と向上しました。これに伴いまして、Appがアフィリエイトプログラムの対象から除外されることになりました。2018年10月1日以降、iOSとMacのAppとApp内コンテンツは、アフィリエイトプログラムの報酬対象外となります。

出典:Apple

 Appleがなぜこうした方針変更をしたかについては以下の解説が分かりやすいです。

Apple、2018年10月01日より、iTunesアフィリエイトプログラムの対象としてApp Storeコンテンツが対象外に(MACお宝鑑定団Blog 18/8/2)

これまで、App Storeにおけるアプリ紹介のアフィリエイト報酬7%分が、同社の営業費から無くなるため、サービス部門における利益率が向上すると考えられます。

出典:MACお宝鑑定団Blog

 ネット上に星の数ほどある質の低いアフィリエイト広告でアプリ紹介をされたとしてもAppleにとってはほとんどメリットがなく無駄な経費でしかなかったという結論なんでしょうね。しかし、AppleのiOSデバイス向けアプリを紹介してそのアフィリエイトで収益を得てきたメディアにとっては死刑宣告に等しい事態でありまして、皆さん今後はどうしていくのでしょうか。

 海外のアプリ紹介サイトなどはかなり自暴自棄な記事を掲載しておりました。

Apple Kills the App Store Affiliate Program, and I Have No Idea What We Are Going to Do.(toucharcade 18/8/1)

 まあそうですよね、これから一体どうしたら良いのか見当もつかないですよね。とりあえずこちらのサイトは今後はAmazonのアフィリエイトに力を入れていくと宣言しているようですが、Amazonにしてもレビューシステムでは色々と問題を抱えているようですし、いつまでアフィリエイトのようなサービスを続けるのかは神のみぞ知るというところでしょうか。

汚れたAmazonレビュー 数珠が家電に化ける時 横行するステマの実態を追った(BuzzFeed JapanNews 18/8/1)

 Appleのアフィリエイトサービスを巡っては、かねてiOSのID偽造により大量の偽ユーザーが無料のゲームダウンロードをして稼ぐ中華ブーストと、一時期大量にハッキングされたiTunes Giftの出口にこれらの偽造アカウント経由で有料ゲームアプリがダウンロードされた経緯もあったようです。

 ゲームを紹介してビジネスにしたいのであれば、アクセス数の稼げる良質な記事をたくさん書きながらメーカーからきちんと広告料を払ってもらえる本来のメディアビジネスに戻っていくべきなのかもしれません。