AIアシスタントが電話で要件を済ませてくれる時代が到来

(写真:ロイター/アフロ)

 いわゆる“スマートスピーカー”が国内市場でも普通に販売されるようになり、なんとなくではありますがAIアシスタントという概念がギーク層以外にも徐々に認識されつつある今日この頃なのではないでしょうか。ギーク層は別としても「意外とスマートスピーカーに興味関心がもたれているのは共働きの主婦層ではないか」というマーケティングデータも出始めているようです。スマートスピーカーが実は帰宅後疲れた若い夫婦の手間省きツールとして使われ始めるのであれば市場としては意外と早く立ち上がるのかもしれません。

 まあ、試しに使ってはみたけれど、まだまだ使えないという感想を抱いた人も少なくはないでしょうが、音声コマンドを活用すれば今後あれこれと便利なサービスがでてきそうだなというくらいの予感みたいなものは広く共有されつつあると思います。

 まあそんなぼんやりした感慨を抱いていたのですが、ここにきて従来の常識を軽く打ち壊してくれるような驚くべきAIアシスタントのデモがGoogleによって公開されておりました。

「Googleアシスタント」が人間のように電話して店を予約可能に(CNET Japan 18/5/9)

新機能「Google Duplex」により、Googleアシスタントはユーザーに代わって店舗に電話をかけ、予約を入れることまでできるようになる。まるで人間であるかのように電話の相手と会話を進めることができる。

出典:CNET Japan

 上記記事の中にある動画を見ると分かりますが、これまでのAIアシスタントとはまったく次元の異なる精度と自然さを実現した会話が電話ごしに成立しています。具体的な会話のやりとりについては日本語訳を書き起こした次の記事が参考になります。

[速報]AIが人間と自然な会話をし、電話で美容院やレストランを予約。Googleがデモを公開。Google I/O 2018(Publickey 18/5/9)

 このGoogle Duplexという技術はまだ開発中ということで一般に公開されているわけではなく、上記のデモについてもおそらくは利用条件などをかなり絞り込んで念入りなチューニングが施された上でのものと想像されますが、それにしてもなかなかすごいものがあります。GoogleのCEO、Sundar Pichaiさんによれば「当社の数年間にわたるすべての投資の集大成だ」とのことで、まさに世界最先端のAIアシスタントということになるのでしょう。

 比較的他人とのコミュニケーションが苦にならない私でも、家族で外食するときのレストラン予約はだるいもので、電話をかける手が止まることもしばしです。ネットで即日予約できる店は大抵アレな居酒屋で家族で入りづらい喫煙上等の店ばかりということも多いため、行きつけのお店に予約を入れる電話ですら億劫なものであります。

 もちろん、いきなり実用レベルにまで至るものではないでしょう。誰もが自由にGoogle Duplexを使える日が来るのはいつなのか現時点ではまったく予想もつきませんが、一旦この技術が公開されれば利用される機会は急速に増えそうに思えます。そしてその頃にはおそらく、美容院やレストランで予約を受け付ける側もAIアシスタントを使って対応している可能性は十分にあるでしょうから、へたをすると電話で何かを予約するというようなやりとりはすべてAIアシスタント同士が行い、人間は一切電話に出ないで要件が済まされるといった事態も起こり得ると思います。

 そこまでいくと、以前に話題となったAI同士が会話をするうちに人間が理解できない独自言語で会話を始めてしまうという展開にもなりそうです。もっとも、このAI同士が勝手に独自言語で会話を始めたと報じられた件については色々と尾ひれがついて話が大袈裟になっていたというオチもありましたが。実際、AIは会話を模倣・学習できても意味を理解するわけではなく、また目的も欲求も現段階では持ちませんので杞憂なわけですが。

「2つのAIが“独自言語”で会話」の真相--FacebookのAI研究開発者が明かす(CNET Japan 17/11/16)

 いずれにしても、あと数年もすれば電話で会話をしている相手が人間ではなくAIということは普通によくある話になるのかもしれません。そういう時代が来たとき、電話でのコミュニケーションにおける作法やマナーは今とはまた違ったものになっていくのかどうかそのあたりは気になるところです。昨今よく話題になる「電話が怖い若者」といった現象もAIアシスタントに電話対応をすべて代行させることができれば解消できそうです。

「電話が怖い」若者たち(上) 「まずメール」 仕事に支障も(東京新聞 17/12/18)

「誰だか分からない人と顔が見えないまま、話をするのが嫌。仕事だから失礼な対応もできない。そう思うと緊張して、ますます電話を取るのが怖くなる」

出典:東京新聞

 いずれにしても、電話対応をそつなくできるような優秀なAIアシスタントが登場すればまずはテレアポビジネスの淘汰が進みそうですね。もっとも、さらに優秀なAIを使ってAIアシスタントを上手に欺すみたいなイタチごっこも始まりそうですが。

 企業の顧客対応向けチャットボットも興隆している昨今、要件を自動で連絡してくれるならば、ただでさえ大量にかかってくる不動産営業などのテレアポ営業さんや、イカれた感じのクレーマー対応に頭を悩ませる顧客サポート電話なども、概ねAIに置き換わっていくと世の中が随分一変しそうな気がしますね。