東京都知事・小池百合子氏とカドカワ・川上量生氏とが織りなす「落日の癒着」

(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 すでに自由民主党都議の川松真一朗氏が議会で質問していた東京都知事・小池百合子氏に対する「やらせ質問」問題については、その後質問の作成状況を知る立場にあった元都民ファーストの音喜多駿都議が記者会見するなどして小池氏に対するお手盛り批判が高まっています。

東京新聞:都民ファ都議、やらせ質問か 作成者名に小池知事側近(東京新聞 18/4/16)

やらせ質問疑惑 音喜多氏「都知事関与の可能性」 小池氏「一切ない」(産経ニュース 18/4/28)

質問案のデータに「ecoyuri」。二元代表制を毀損するやらせ質問疑惑について(音喜多駿公式ブログ 18/4/27)

 小池都政におけるお手盛り問題については、東京都が進める2020年東京オリンピック・パラリンピックに関連して企画している東京都文化事業において「特定の事業者との間に強い癒着構造があるのではないか」という話が、かねてから指摘されてきました。

 例えば、2020年に開催を予定している文化事業「Tokyo Tokyo Festival(以下、TTF)」は、東京都が助成・負担金を拠出している公益財団法人「東京都歴史文化財団」と東京都との共催で開催が決定している文化事業です。

 本件は都庁内部からも各メディアに対して情報提供が幾つか行われている状態で、また「猪瀬直樹5,000万円がかばんに入らなかった事件」のようなどうしようもない都知事失脚劇みたいなことが繰り返されてしまうのでありましょうか。

 先に結論を図にしてしまうと、以下のような構造になります。

 TTF開催を提案した会議の議長が川上量生さん、これを承認した会議の統括プロデューサーが川上量生さん、開催決定の報告を受け開催概要を策定した会議の評議員が川上量生さんでして、これらの人事を手配したのは都知事の小池百合子氏であるという流れになります。

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 この歴史文化財団には、東京都から補助金として24億525万円あまり、助成金として1,300万円、事業への負担金として12億4,332万円あまりを受け取っています。この助成事業は東京都美術館などの運営費用にも充てられていますし、文化事業としては一般的な費用項目であることも分かっておりますので、この補助金自体は何ら問題のあるものではなく、歴史文化財団が何か疚(やま)しいことがあるわけではありません。ちなみにこの歴史文化財団の理事長はみんな大好きフジテレビの日枝久氏です。

 このTTFは小池百合子氏自身が東京都による文化事業としてオリンピック前の2020年春から半年間の開催と宣言しているにもかかわらず、その開催主体は歴史文化財団との共催で、その歴史文化財団は東京都の文化事業として例年運営補助金、助成金を受けて博物館などを運営する、いわば真っ白な団体です。

 TTFの開催にあたっては、資料を見る限り半年間のイベントにおける民間企業への運営費用だけで約5億円の予算が計上されています。これはあくまでイベント単体の再委託費用の概算にすぎず、実際には事務局の運営ほか別途予算は必要となりますので、最終的にどのくらいの予算になるのかまだ良く分かりません。そして、傘下団体のアーツカウンシル東京から東京都生活文化局の諮問委員会であるTTF運営調整会議にTTF開催の是非も含めた審議を行う形になっているのです、この構成メンバーは、生活文化局次長、東京都歴史文化財団副理事長、アーツカウンシル東京機構長、そして統括プロデューサーであって、この統括プロデューサーこそ、カドカワ代表取締役の川上量生さんに他なりません。そして、このTTFの開催を東京都に提案するTTF運営調整会議の議長が川上量生さんです。

 そして、そのTTF運営調整会議からの提案を受け、東京都の芸術評価評議会の傘下会議体である東京文化プログラム推進部会の統括プロデューサーが川上量生さんです。つまり、川上量生さんが議長を務めるTTF運営調整会議で「TTF開催」を提案することを決めて、川上量生さんが統括プロデューサーをしている東京文化プログラム推進部会で「TTF開催しましょう」と決定をしたことになります。自分で提案し、自分で決定した形か、実は川上量生さんというのは複数いるかのどちらかです。どちらにせよ、過半の事業費は都税から賄われます。

小池都知事が定例会見11月24日(全文1)豊洲市場移転と開場は30年10月中旬(THE PAGE 東京 17/11/24)

伝統的な芸術文化から現代アートとかアニメなどポップカルチャー、サブカルなどなど、さらにはファッション、食文化など、多種多様な分野から、誰もがわくわくする、そんな企画を多くの都民の皆さんから募ってまいりたい。そして多くの都民の皆さんが共感する企画など、これは国内外から素晴らしいアイデア、数多く集まることを期待いたしておします。

 これは、2018年3月14日の予算特別委員会で、前述の自民都議川松氏が質問をし、塩見生活文化局長が「川上氏が提案し、統括プロデューサーに就任を依頼すること」を認めています。

予算特別委員会速記録第三号〔速報版〕

塩見生活文化局長

昨年の六月、東京芸術文化評議会にて、評議員であります川上氏より、現在のネット時代におけるプロモーションやイベントのあり方など、新たな提案をいただきまして、発信力強化に向けた議論が行われました。 これを踏まえたTokyo Tokyo FESTIVALの実施に当たりましては、昨年十一月の東京芸術文化評議会に諮った上で、その提案者であり、情報発信分野の知見や経験が豊富である川上氏に統括プロデューサーをお願いすることとしたわけでございます。 〔「そもそも川上さんが何で評議員になるの」と呼ぶ者あり〕

 そして、その東京文化プログラム推進部会で「TTF開催しましょう」という報告を受けて内容を承認し、概要策定する芸術文化評議会の評議員もまた、川上量生さんです。ここでTTFの実施概要が決定し、実際にはTTF開催に関する予算付けが行われ開催までの手続きが進むことになりますが、そもそもここでカドカワ代表取締役の川上量生さんがどのような経緯でTTF開催の発案から決定、実施概要の策定まで関与することになったのか、まったく良く分からないわけです。

 実際、都議会でもここを突っ込まれて小池百合子氏がグダグダな答弁になっているのを見ても、おそらくはTTF開催というプロジェクトの概要決定どころか、TTF決定に絡む各団体の人事の透明性を確保することも不可能なのではないかというレベルになってきてしまっています。

○川松委員 じゃ、知事、例えば、川上さんという人がいます。川上さんの会社の社員などがここに入ることは、透明性、担保されますか、具体例で聞いています。

○小池知事 今、お聞きになっている意味がそもそもわかりません。透明性を持って進めていき、そしてTokyo Tokyo FESTIVALを最高のフェスティバルにしていく、その目的に向かって最善の方法でやっていく、これを先ほどからお答えしているところでございます。

 もともとゴリゴリの表現規制派であった小池百合子氏がカドカワ(ドワンゴ)方面に急接近した理由の一つが、小池百合子氏のお膝元である池袋で開催されている「池袋ハロウィンコスプレフェス」(運営責任者はドワンゴ専務取締役CCO横澤大輔氏)であり、実際、今年3月にも開催された「東京アニメアワードフェスティバル 2018」は、もともと有楽町・日比谷を開催地にするところを小池氏の池袋に引っ張る握りをカドカワと進めたあたりもすでに知れている話となっていて、つまりはTTF開催に向けてアニメフェスティバル、コスプレイベントなど、そこまで集客力は無いけど重要なコンテンツ情報の発信イベントにはカドカワ、ドワンゴ、ニコニコ動画の権益として小池氏との合意の元で東京都の資金を使いながらイベントにしていこうという考えなのではないか、と目されます。

 一方で、カドカワ内部には「小池さんからの頼まれごとはそれほど儲からず、赤字になるうえに万が一失敗に終わったとき責任を取らされることも想定され、川上からすれば、前向きになれない事情もあった」という採算面での悩みがあったとされます。また、カドカワグループ全体で言えば、いままでの飯田橋から埼玉県・東所沢に本社や各編集部を丸ごと移転してしまうという不思議な意志決定をしており、小池氏が一方的にカドカワ・川上さんに好意を寄せ相談をしているとしても、実際には川上さんとしては迷惑をしているだけであるという意見も少なくありません。

 実際、4月27日にTwitter上で川上量生さんに直接質問をしたところ、実質的な回答拒否でした。

 一方で、東京都議会自由民主党の「ドン」と呼ばれた内田茂さんに、近しい関係者を通じて川上量生さん以下関係者が面談を申し込み、4月18日に内田事務所で面談をしています。一連の「東京都から委託されるカドカワ関連事業に対して、ある配慮と善処を求めた」とされていますが、川上さんが内田さんに何を頼みに行ったのかはあまり良く分かりません。

 今回の海賊版サイトへのブロッキング事案でも出版業界の代表として交渉の過程に名前が出ている川上量生さんについては、東京都に限らず透明性が疑われる事案が少なくなく、また、本件は都知事の小池百合子氏にも改めて説明を求めたい事案であることは言うまでもありません。

 一連の事態を見る限り、公的な部門がコンテンツに出てきて現場の理解もないまま混乱させる必要はどこにもないと思いますし、民間だけで上手く行っている世界に行政や大企業、ファンドの類が「儲かるから」とか「人が集まっているから」といって無作法をやると、上手く行っている場そのものが死んでしまうこともあり得ますので、少なくとも都知事周辺もカドカワ川上さん周辺も棟梁の放し飼いは避けていただきたいと心から願う次第であります。