サイトブロッキング問題、CODAがブロッキングに賛成表明するよう加盟団体に要請

(写真:アフロ)

 一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構(以下、CODA)は、先に決定され法曹界ほかから憲法に抵触、また通信事業法違反の疑いのあるサイトブロッキングの自主的取り組みを求める方針を決定したことに関して、その加盟団体に対し賛同文書を公表することを求める書簡を送っていることが、関係者からの取材で判明しました。

 CODA職員名で送られたこの文書は、知財本部の決定はあくまで政府方針であり法的拘束力は無いとしたうえで、総務省の合意のもと各ISP(接続プロバイダーなどの通信事業者)に対し要請される、影響力の大きいものと説明しています。コンテンツ業界として、この方針に歓迎の意を示すよう公式サイトやホームページで文書を掲載する「協力」をCODAが求める内容で、一連の決定に対し、前述の憲法問題や業法違反についての解説は文書中にはありません。

 そんななか、4月13日付で映画協会が政府方針に賛同するコメントをいち早く発表しています。

知的財産戦略本部・犯罪対策閣僚会議における「インターネット上の海賊版サイトに対する緊急対策」の決定について(一般社団法人日本映画製作者連盟 18/4/13)

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 実際にブロッキングを方針として検討することはすでにNTTグループが4月23日に発表済みですが、NTT労組や各傘下ISPでは、早くも「むやみなブロッキングを実施して刑事告訴された場合、社団作業を実施した社員が刑罰の対象になる」と紛糾。残り任期の短いNTT代表取締役の鵜浦博夫さん勇退の花道に生卵や座布団が飛び交う事態になりかねません。

NTTグループが23日月曜にも傘下ISPに対し独自のブロッキング案を発表・実施か(ヤフーニュース 山本一郎 18/4/22)

 また、このNTTの決定を受けて、残るMNO(通信回線網を自社で設置、運用し、独自に通信サービスを提供する移動体通信事業者)であるソフトバンク、KDDIいずれも政府・知財本部の方針決定を受けてサイト遮断を行うかについて議論が進んでおり、サイト遮断の実施決定に予断を許さない状況となっています。実務労力だけでなく、法的リスクを負うのは現場です。

 そこで、同時に発表された日本弁理士会の本件に関する発表がサイトに掲載されるわけですが、どうしたことでしょう、先に掲載しました映画連盟とタイトルは全く同じ、「歓迎」のコメントもほとんど同じ内容が掲載されております。

知的財産戦略本部・犯罪対策閣僚会議における 「インターネット上の海賊版サイトに対する緊急対策」の決定について(日本弁理士会 18/4/18)

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 ところが、日本弁理士会の副会長や執行理事は「このような政府方針への『歓迎』声明が弁理士会名で発表されることは知らなかった」と説明しています。中でも、弁護士資格も持つ弁理士会関係者は「業法違反どころか違憲の疑いも濃いこの政府決定に、手放しで弁理士会が賛同し歓迎するなどあり得ない。組織内で適切な議論を経て意志決定されたものとは思えず、強い憤りを覚える」としています。

 この一字一句同じ声明文の掲載を権利者各団体に協力を求めたのはCODAであることが、関係者への取材で明らかになりました。入手した「歓迎」文書雛形ファイルのプロパティで文書作成者を見ますと、CODA代表理事の後藤健郎さんの名前になっております。後藤健郎さんと言えば、先日日経xTECHに「(著作権侵害が横行している事態に対して)手を尽くしたのか」という疑問に対して反論するインタビュー記事を掲載しておられます。

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海賊版サイト対策へ本当に手を尽くしていたのか、権利者団体に聞く(日経xTECH 浅川直輝 18/4/21)

 しかしながら、そのCODAの経済産業省は所管事業として予算化されているのは今年度までです。そうなりますと、組織の存続をかけてCODAが海外サーバーを使った海賊版サイトのブロッキングというカドカワ代表取締役川上量生さんや一ツ橋グループ、講談社など漫画依存度の高い出版社によるロビイングに乗る形で、悪質サイトのリスティング団体としての存続・生き残りを図ったのではないか、という疑いになってきます。なお、カドカワ川上さんの妻、須賀千鶴さんは、経済産業省にお勤めです。

コンテンツ・サイトブロッキングについて(CODA 後藤健郎 18/2/18)

知的財産権ワーキング・グループ等侵害対策強化事業(経済産業省 製造産業局 模倣品対策室)

 同じく海賊版被害に悩まされた音楽業界、映画・映像業界、ゲーム業界の知的財産管理の現状から見れば、このCODAの取り組みはかけている予算や人員の割に高い効果を上げているとは言えず、海賊版サイトの運営者を特定する技術も乏しいため、あくまで削除要請や日本の行政機関への働きかけで対策が終わってしまっているという現状があります。今回の問題となった海賊版3サイトとも、対策が必要だとして名指しされる前から民間有志の調査によって運営者は特定されていたのが実情で、実際に知財本部が方針を検討した直後にすべてサイト閉鎖に追い込まれました。

 それでもなお、海賊版対策が緊急で必要だというロジックのもと、不要不急で回避策も多いDNSブロッキングという手法に打って出て、その実務作業だけでなく法的リスクを通信事業者に押し付ける決定を進めているというのは問題であろうと思います。ましてや、経済産業省の事業として発足したCODAにおいて、たいした成果も出ないまま海賊版リスティング団体として存続するようであれば問題です。

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[コンテンツ・サイトブロッキングについて(CODA 後藤健郎 18/2/18)より]

 本件ブロッキングについては、海賊版対策の大義名分になっていますが、実質的には情報統制であり、インターネットにおける情報流通の自由を奪うものです。名指しされた海賊版サイトはすでに閉鎖になっているにもかかわらず、サイトブロッキングの方針が出たこと自体が問題であり、政府決定に至り、通信業界に対して不当な圧力がかかった結果、通信利用者や末端の業界従事者が大きなリスクにさらされる状況にならないよう強く願う次第です。