Amazon「越境ECビジネスを推進」で湧き起こる歓迎と懸念

(写真:ロイター/アフロ)

 Amazonは欧州はじめ我が国でも巧妙な税逃れ施策を展開していることから色々と問題視されていますが、改めて本国でも米大統領自らが率先して容赦無い批難を浴びせる事態がニュースとなっております。

アマゾン株が大幅安、トランプ大統領のツイート「口撃」止まらず(ブルームバーグ 18/4/3)

2日の米株式市場で、アマゾン・ドット・コムの株価が大幅下落。トランプ米大統領による連日のアマゾン批判に共和党議員も加わったことが背景にある。

出典:ブルームバーグ

 まあ、トランプさんとAmazon CEOのベゾスさんは以前から犬猿の仲であることは有名ですが、個人的な感情の齟齬が露骨にそのまま国家の政策にまで反映されてしまっているとしたらそれはいかがなものかと思わなくもありません。

ドナルド・トランプ氏、ワシントン・ポストを取材拒否 背景にAmazonジェフ・ベゾス氏との軋轢?(ハフポスト 16/6/15)

 それはさておき、いろいろな意味で世界中に多くの敵を抱える一方、熱烈な愛好者も数多く抱えるのがAmazonであります。

Amazon.comのベゾスCEO、「プライム会員は1億人超」(ITmedia 18/4/19)

 有料会員数が1億人を突破というのはなかなか目を見張るものがあります。で、そんな人気者のAmazonが世界中のユーザー向けて新たな施策を打ち出すようです。

米アマゾン、アプリに新機能 海外からの米製品購入手続き容易に(ロイター 18/4/18)

ブラジルや中国、ドイツ、スペイン語圏など海外の消費者を対象に、米国製品の購入を容易にする。

出典:ロイター

米アマゾン、国外からの購入を容易にする新機能をアプリに追加(CNET Japan 18/4/19)

同社は世界で事業を展開する大手小売業者だが、これまでは事業を展開する各国で、それぞれ個別にサービスを提供していた。(中略)今回の新サービスにより、国境の壁が初めて取り払われるともいえる。

(中略)

国際宅配便の面倒な通関手続きなど、国際配送のための手続きはすべてAmazonが処理してくれる。

出典:CNET Japan

 これまでどちらかといえばニッチビジネス的な要素が強かった越境EC分野にAmazonがガッツリと本格参入するという感じでしょうか。まだ今のところ日本語でのサービスは提供されていませんが、すでに日本円決済と日本向け発送そのものは可能ということで、一部ネット民などの間ではかなり盛り上がっているようです。

米Amazon.comの商品を日本円で購入・日本へ配送可能な新サービス(PHILE WEB 18/4/18)

 これまで細々と輸入代行みたいな形で手数料商売をしてきた事業者にとっては、この波に乗れない限りかなり大きな打撃となりそうですね。

 気になるところとしては、このAmazonの新しいサービスが比較的簡単に誰にでも利用できる点でして、これまで海外ECサービスから直接個人輸入するようなことは面倒だしよくわからないからと躊躇っていたような層が大挙して個人輸入を始め、その結果税関において従来にはなかったような負荷が増える可能性があるかもしれないというのがあります。もちろん実際にどれほどの需要規模が生じるのかは現時点ではまったく予想できませんから、このAmazonの新サービスが本当に税関業務に顕著なインパクトを与えるかどうかは不明ですが、ネット通販という業態が登場したことによって流通事情がここ数年で激変するほどの影響を受けた現実を考えれば、それなりに何が起きても不思議ではないぐらいの心構えはしておいても損はしないでしょう。

 Amazonのこの動きが直接影響しているわけではありませんが、ネットを利用した越境ECの急増を見越した各国税務当局は、実際に租税関連情報にこの手のビジネスについての情報交換は進めているようです。「取れるところから税金を取れ」というよりは「取るべきものはしっかりと取ろう」という雰囲気です。

 Amazonとしては越境ECビジネスを開始することでこれまで以上に販売機会と売上の増大を見込める一方で、関税を含む通関にまつわる諸々のリソース対応は各国の税関施設と個人輸入するユーザー本人が負担してくれる形になるため、取扱量がどんなに増えてもAmazon自身の腹は痛まないという美味しい目論見があったりするのかなとぼんやり考えてしまいます。

 一方、これは後日改めて整理して記事にしようと思いますが、Amazonと各国の公正取引委員会の駆け引きは激化の一途を辿っており、多かれ少なかれ米トランプ大統領のいう「得た利益を全て経費や研究に使うことで納税額を法人全体として圧縮し、世界の健全な取引が可能な環境のフリーライダーとなっている」という趣旨もまた、一種微妙な説得力を持ちます。しかしながら、Amazonも企業全体として適法の範囲内で健全かつ合理的に経営をしているだけで、一つひとつの企業活動を見ているとAmazonはむしろ善玉だといえる部分も多くあります。

 この辺の駆け引きは、やはり国によって「何が公平とされるべきか」という文化の問題もあり、また、国民・市民の一人としてAmazonがどのような役割を果たそうとしているのかがもう少し明確に分かるようになるといろんなものが見えてくるのではないかと期待する部分が大きくあります。

 とかく「Amazonなど多国籍大企業は、過剰なグローバリズムの体現者であり、適切に税金を納めず市民社会の敵になっている」と批判されがちな部分はあります。とりわけ、越境ECは「個人輸入のような統計にかかりづらく関税逃れされやすいビジネスにまたAmazonが加担している」的なことを言われやすいのが残念です。本来なら国民が欲しいものを海外から直接買えるようになるだけで、より便利になるのだということならば、常識的には歓迎されるべきものなはずですが。