携帯キャリアが打ち出した新メッセージングサービスの思惑はどこにあるのか

(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 以前にこんな記事を書きました。

日経記事で「打倒LINE」と銘打たれていた新サービスは「打倒iPhone」が正しいような気がします(Yahoo!ニュース個人 18/2/26)

 で、今回正式にそのサービスの内訳が発表されましたが、どうやら私の見立ては残念ながら外れていたようです。

SMSの機能を進化させた新サービス「+メッセージ」を提供開始(NTTドコモ 18/4/10)

 ドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社連名で発表されたリリースには、提供時期未定ながらAndroidに加えてiOSデバイス向けにもサービスを提供する予定である旨が記されておりました。つまり、キャリア側に「打倒LINE」の思惑があるかどうかはともかくとして、「打倒iPhone」の意図は今のところ無さそうであるということです。まあ、対応予定はあると言いながら、何年も対応アプリなどが提供されない事態になれば、事実上のiPhone締め出しは可能となりますが、現状の端末シェア状況に照らし合わせればiPhoneへ対応しないビジネスはあまり得策ではなさそうです。

 さらに、日経方面などで思い切りぶち上げられていた「打倒LINE」という見立てについても、3キャリア合同による報道向け発表会においてはそうした憶測をやんわりと否定する発言が出ております。

「LINE対抗ではない」3キャリ連合で挑む“+メッセージ”の狙い ―― 5月9日開始、SIMフリー非対応(BUSINESS INSIDER JAPAN 18/4/10)

3キャリア合同の質疑応答で代表して答えたNTTドコモ藤真良樹氏(コミュニケーションサービス担当部長)は、「(LINEとは)対抗意識はなく、メッセージングサービスの正常進化という位置づけ」とLINE対抗という姿勢は否定している。

出典:BUSINESS INSIDER JAPAN

 そうですか。

 しかしながら、今後提供が予定されている多彩な機能、とくに企業ユーザー向けサービスなどのあり方を見てみると、現実的には当然のようにLINEと競合することになっていくのは避けがたいと考えるのが妥当でしょう。

「LINE対抗ではない」 携帯3社、電話番号で送受信できる新メッセージサービス「+メッセージ」導入 5月9日から(ITmedia 18/4/10)

3社は、+メッセージをメッセージサービスだけでなく、カスタマーサポートやお店の予約確認、申し込み手続きなど、企業とユーザーのコミュニケーションを円滑にする「総合的なコミュニケーションプラットフォーム」に拡張することも予定しているという。LINEとサービスで競合する部分も出てくるだろう。

出典:ITmedia

 気になる点としては、この新しい+メッセージは業界団体GSMAで標準化されている技術規格の「RCS(Rich Communication Service)」に準拠しているはずなんですが、不思議なことに当面はドコモ、KDDI、ソフトバンクのキャリアユーザー同士でしか利用できない仕組みになっているところでしょうか。

サービスを利用するには専用アプリ(iOS 9.0以降、Android 4.4以降)が必要。(中略)Android標準のメッセージアプリなど、RCSに対応するサードパーティー製アプリでは利用できない。

(中略)

メッセージを送受信できるのは現状3社のみ。いわゆる“格安SIM”を提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)などを含む他社への導入や海外の電話番号と送受信できる機能は今後検討する。

出典:ITmedia

 そもそもRCSという規格自体がGoogleの後押しもあって世界的に普及が進みつつあるような側面もあるわけですが、そうしたGoogle純正のAndroidアプリさえもが+メッセージでは排除される仕組みになっているあたり、穿った見方をすれば海外プラットフォーマーに対して事実上のお引き取りをお願いしたいというキャリアの思惑があるのではないかと勘ぐれなくもありません。確かに個人に関する情報の最たるものであるメッセージングアプリでの交流データ(会話)がアプリの出来によってごっそり海外事業者に持っていかれる、などということになれば、LINEに対する警戒感以前の問題ですので、思うことはいろいろあるのかもしれません。

 また、海外の電話番号と送受信できないという仕組みは、海外へ出向く邦人ユーザーが海外キャリアのサービスを利用してほしくないという無言の圧力をそこはかとなく感じさせる部分もあります。

 もちろん我らが国内キャリアの皆さんがそんなセコイ技を駆使してまでしてユーザーの囲い込みを目論んでいるはずはないわけでして、何らかの技術的なバックボーンの問題を考えたうえで、こうした現状の諸々の不自由さはあくまでもセキュリティ対策などでどうしても必要なことなのでしょう。行く行くは今ある不便さを解消していくために各社が現在鋭意努力していることと信じたいものです。

 それにしても、ユーザー視点から+メッセージを他の様々なメッセージングサービスと比較してみると、やはりどうしても窮屈で限定された印象を覚えてしまいます。オープンで誰もが参加したくなるようなサービスを目指すのであれば、せめて最初から国内MVNOとは自由に連携したサービス提供を約束するような仕様で始めるべきではなかったのかなと感じます。まあ、そのあたりは総務省の中の人がすぐにツッコミを入れてくれるのかもしれません。期待したいところです。