AppleがiPhoneの品質管理目的で微妙な仕様を導入していた件

(写真:ロイター/アフロ)

 ITデバイスの古いモデルに新しいOSへのバージョンアップを適用すると、ハード的な性能が新しいOSの要求に追いつけず動作に支障を来す場合があるというのは昔からよくある話ではあります。動くことは動くけれど普通に使うには動作が遅すぎるみたいな症状ですね。実際、PCでもいろんな付属のソフトウェアが常時稼働し、常にネット環境がある前提でアップデートやセキュリティ対策のソフト類が動くようになると、マシンスペックはどんどん上がっているはずなのに背負う荷物が重すぎて動きがもっさり、という傾向が続いているのが実情です。

 で、最近のAppleのiPhoneでまさにそういう類の症状が頻発し、さすがに性能の劣化が激しすぎてこれはおかしいと社外機関が調べてみたところ意図的に性能が制御されていることが発見され、Appleとしてもそういう仕様でしたと認める顛末があったわけです。

「iPhoneは早ければ1年後に性能が落ち始める」のをAppleが正式に認める(Gigazine 17/12/21)

「AppleがiOS更新によってiPhoneの性能を落としている」というベンチマークソフトGeekbenchの公表を受けて、Appleが正式にiPhoneのピーク性能を意図的に落としていることを認めました。これは「最高のユーザー体験を提供するため」だとAppleは述べています。

出典:Gigazine

 この一件、どう解釈すべきなのか微妙に感じますが、穿った見方をすれば以下のような形になってしまうのが人情というものです。

バッテリ劣化で「iPhone」の性能が下がる問題、アップルが理由を説明(CNET Japan 17/12/21)

Appleの20日の声明は、同社が顧客に新しいデバイスを買わせるために、古いデバイスの性能を意図的に低下させているという、いわゆる「計画的な陳腐化」説を払拭する目的があると思われる。

出典:CNET Japan

 今後、米国の消費者団体あたりがAppleに対してどのような動きをするのかしばらく注視したいところですが、非常に筋が悪いなと感じるのは、Appleが意図的にこうした仕様をOSに組み込んでいたのであれば当初からバッテリー性能が落ちるとこれこれこうした症状が発生しますという説明をしておくべきでした。ユーザー間で大きな騒ぎになり決定的な証拠を突きつけられてから初めてテヘペロするような態度はかなりゲスな印象を覚えます。一方で、ユーザーを繋ぎ止めておくために古いApple製品の使用にも耐えられるアップデートは続けてきていたこともあり、Appleはユーザーフレンドリーなのかこのような詐欺的商法まがいなのか、いまひとつ良く分からない状況に陥ります。

 なお、Appleはこのバッテリー劣化対策としてのデバイスの機能制限施策については今後対象機器を拡大していくことを宣言しているので、もしかするとiPhoneだけではなく他のApple製品についても同様な仕様が導入されていく可能性はありそうです。

 もちろん、モバイル機器のバッテリーが劣化して使えなくなるというのは考えてみればなにもApple製品だけに限った話ではないわけでして、今後は数々のIoTデバイスや電気自動車などでもこうした問題に直面していくのでしょう。ただ、保守やセキュリティ対応としてOSバージョンアップを実施してみたら、バッテリー性能に対する要件までがシビアになってしまい機器の挙動が突然おかしくなるというのはユーザーからするとかなり怖い話でして、このあたりはメーカー側の見識も大いに問われる話でありそうです。

 そして、AppleはiPhone6など旧来製品に対するバッテリーの交換料金を79ドルから29ドルに引き下げると発表、現在Apple社に対して起こされた訴訟への対策を打ち出し始めました。そもそもいままでのバッテリー交換が高価過ぎたのもありますが、Appleが支払わなければならない賠償金や、当局が提起するかもしれない懲罰的罰金は数兆円以上になるのではないかという憶測も飛び交い実に不穏な状況になっているのが現状であります。

A Message to Our Customers about iPhone Batteries and Performance

米アップル、アイフォーン旧機種動作減速巡り8件の訴訟に直面(ロイター 17/12/26)

 これらのモバイル機器は買い替え頻度を引き上げることが大正義に繋がるというシンプルなビジネスモデルの側面が明らかな分だけ、IoTの世界になるとデジタル・ミニマリストみたいなムーブメントでも起きるのではないかと私なんかは危機感を感じるのですが。