ネット選挙という幻想と幻滅の先に何か新しい流れはくるのでしょうか

(写真:アフロ)

 2013年の公職選挙法改正にともない我が国でもネットを利用して選挙運動ができるようになりました。いわゆる「ネット選挙」という言葉が色々な意味で幻想を呼びつつ妙な期待感で盛り上がりその年の7月には参議院選があったわけですが、いざフタを開けてみれば従来の選挙と大きく異なる何かが起きるわけでもなく投票率も低いままというあまり芳しくない結果となってしまいました。もちろん、選挙に際して各政党が政策や候補者の情報を掲示するようになった、という点では、選挙において有権者が情報を求めてネットを利用するという機会は格段に増えたにせよ、本来の「ネット選挙」ってこれだけで終わるものではなかったはずです。ネット選挙解禁後の選挙結果についてはその後色々と論考もされましたが、候補者によるネットでの情報発信が有意義に行われていなかった可能性があったのは否めないでしょう。

ネット選挙運動が盛り上がらなかった理由(ハフポスト 13/7/21)

ある候補者は公示直前にFacebookに登録し、その直後から大量の友達申請をしたため、「偽名の疑いがある」とブロックされたという。Facebook側ではなく、SNSをどう利用すべきかを知らなかった候補者側の問題であることは明らかだ。大量の友達に「よろしくお願いします」というメッセージを流せば集票につながると思ったかもしれないが、SNS利用者からすれば、そんなメッセージは選挙カーからの大音量と同じで、ノイズでしかない。

出典:ハフポスト

 あれから4年の年月を経て今回は衆議院選が行われるわけですが、さてネットは候補者にとっても有権者にとってもはたして以前よりは有意義に機能することができるのでしょうか。

 ネットと選挙ということでは米大統領選をめぐるフェイクニュースが海外では大きな問題になっています。

フェイスブックの「ロシア関与」広告、1000万人が閲覧(CNN 17/10/3)

米大統領選、ツイッターはリアルよりフェイクのニュースが多かった(ニュースウィーク 17/9/29)

YouTubeなどGoogleサービスもロシアによる米情報操作に利用されていた――Washington Post報道(ITmedia 17/10/10)

 ネット上に流布された偽の情報がはたしてどこまで選挙結果に影響を与えたのかは判断のしようがありませんが、今後こうした形で選挙などに対して何らかの影響を与える意図をもってしてネット上に真偽不明の情報を流すという行為が生じるのは避けようがないという認識は必要でしょう。実際、そのようにネット上の「プロパガンダ」が各政党から自党に有利なように垂れ流される光景はネットメディアでもSNSでも一般的になってきました。

 米大統領選ではロシアが何らかの思惑で関与した可能性が濃厚であるようですが、日本の衆議院選では必ずしもどこかの敵対国家がそうした情報操作をするとは限らずとも、愉快犯から確信犯まで含めて選挙関連で真偽不明の怪情報を流す輩にとって、ネット、とくにSNSは便利な道具であります。また、先般の保守系ネットメディアが組織的に左派政党や候補者を中傷する記事を繰り返し掲示した件については、すでに具体的な抗議とともに訴訟にまで持ち込まれそうな雰囲気です。逆に、左派系政党も若手支持者を中心にネット大作を組織的に行う動きが強まり、その結果、SNSの政治系、政策系タイムラインでは、与党も野党も情報工作一辺倒の趣すらもあります。

 日本国内におけるSNS利用状況に目を向けると、ネット選挙が解禁された2013年に比べてSNSの利用率は着実に増加しており、それだけSNSにおいて流布される情報の影響力も比例して高まっていると考えるべきでしょう。以前に比べて「テレビや新聞を見て投票する政党を決めた」という割合はいまだ高いとはいえ40代以下を中心にどんどん下落しており、とりわけ新聞メディアの凋落は顕著です。

2017年は7000万人越え?年代別にみる国内4大SNSのユーザートレンド(@DIME 17/1/22)

ICT総研が発表した調査結果(2016.8)によると利用者数は右肩あがりで、2018年度末には7486万人に達する予測。現在の日本人口が1億2692万人なので、(参照;総務省発表2016.12.1)日本人の2人に1人が利用している割合だ。

出典:@DIME

 また昨今はSNSに端を発した炎上ネタをマスメディアが競って取り上げるような残念な傾向も見られるようになってしまいました。まさか選挙関連報道までそういうことが起こることは無いと信じたいところですが、こればかりは何が起きるのか分からないのが世の常ですのであまり油断はできませんし、視聴率至上主義なワイドショーの類は要注意かもしれないですね。

 Twitterではすでに虚実ない交ぜともとれなくはないような情報戦の様相も一部に窺えますが、願わくば民主主義国家に相応しい公明正大なネット選挙が行われることを願ってやみません。