年寄り民主主義とテレビ番組に反政府を煽られて勝敗が決した仙台市長選

(写真:ロイター/アフロ)

 今回の仙台市長選は、前回の都議会選挙以上に高齢者の票が反政府・反政権方面に集まった結果、ストレートに郡和子女史(60歳 前・民進党衆議院議員)を押し上げ、当選するに至ったと見られます。

仙台市長選 |NHK選挙情報| 開票結果http://www.nhk.or.jp/sendai2/senkyo/

 民進党と社民党の支持、共産党と自由党の支援を受けた野党統一候補である郡和子女史の当選については、幅広い支持というよりは50代以上女性からの厚い支持とそこまで高くはならなかった投票率によって当選に漕ぎ着けた印象で、反安倍現象以上に「シルバーデモクラシー」と呼ばれる年寄り民主主義の到来のように見えます。

 NHKや産経新聞などの出口調査の推移や事前のパネル調査などからも傾向ははっきり分かるわけなんですが、投票所に足を運んだ中高年の割合が他の地方選挙に比べて一層高くなっており、逆に18歳から20歳までを除く30代以下男女の投票率が伸び悩んだ結果、高齢者の投票傾向が強く選挙結果に反映されたとみて間違いないと思います。

 もちろん、地方選挙はもともと中高年の投票率が高い傾向にあるのですが、問題は44歳以下と60代以上では選挙に求める争点も候補者選びの方針も政党支持の傾向も大きく異なることにあります。

 こちらのグラフは各社出口調査から推定される年代別投票率の推計ですが、20代は総じて地方選挙の一般的な傾向と同じく注目される地方選でも30%以下の投票率なのに対し、60歳以上は投票率6割超、こと今回の仙台市長選については65歳以上69歳以下の女性の投票率は66%と国政選挙なみの投票率になっていることが特徴として挙げられます。

仙台市長選の年代別投票率の暫定値。高齢ほど投票率が高くなっている
仙台市長選の年代別投票率の暫定値。高齢ほど投票率が高くなっている

 一方、これらの年代層がどこに投票したのかというグラフがこちらです。ちょっと会社によっては出口調査の内容に幅がありますが、各社平均で見てみると概ね中高年ほど反政府・野党統一候補の郡和子女史に投票していることが分かります。

仙台市長選の各社平均の速報値(暫定)。安倍政権支持率と得票がやや連動している
仙台市長選の各社平均の速報値(暫定)。安倍政権支持率と得票がやや連動している

 また、年代別支持率で見ていくと、20代男性30代男性が安倍政権の支持率が55%を超えているのに対し、50代女性、60代女性の安倍政権支持率は18%から22%と、高齢女性ほど安倍政権に批判的であるということが分かります。今回の仙台市長選はいわゆる都市型選挙区と郊外型選挙区のミックスで、日本全体からするとやや都市部に寄った傾向の見える選挙区なのですが、前回の衆議院選挙宮城一区ではこの郡和子女史は旧民主党から立候補して選挙区では落選、惜敗率から比例代表で復活当選を果たしている形です。その当時の出口調査では、中高年女性からの得票はむしろ傾向として今回の仙台市長選ほど多くないこともあり、郡女史が女性からの支持が元からあったので仙台市長選に当選したとは思いづらい状況です。

 つまり、今後の政治を占ううえでの仙台市長選は「50代以上女性の反安倍シフト」が各種選挙に影響していることは間違いなく、このカテゴリーの投票傾向は仙台市長選にも関わらず安倍政権批判がトップに入っています(2位が「街づくり」、3位が「年金・福祉」)。

 この世代が反安倍にシフトしている理由を細かく見ると、NHK政治意識月例調査などでは「人柄が信頼できないから」がダントツトップになっています。森友学園、加計学園や、安倍昭恵女史の奇行、稲田朋美大臣や下村博文元都連会長の醜聞などが大きく影響したと見られますが、この50代、60代、70代の女性が主に摂取するメディアこそテレビ番組であり、ここで繰り返し自由民主党や政権のダメージになるような内容が繰り返し放送され続けたことが、結果的に与党が推す候補者に投票率の高い高齢女性の世代の得票が集まらず敗退しているという図式が明確になります。

 つまりは、シルバーデモクラシーは人口構成・年齢比率的にも高齢者が増えており、また高齢者は若者に比べて比較的投票に行く一方、政治的な態度を決めるための情報摂取は接触時間の長いテレビ番組からであって、結果的にテレビが安倍政権批判を繰り返すと最終的な与党系候補の得票率が落ちる(一方、野党統一候補などの得票が上がる)ことを意味します。

 一方、仙台市長選のグループインタビューにおいてはサンプル数が少ないながらも郡和子女史に投票した中高年女性の53%ほどが「特に(郡女史を)支持していない」「郡女史の政策を知らない」と回答しています。郡女史に投票した中高年女性の安倍政権支持率が22%程度であることを前提としても、あんまり候補者も政策的なバックグラウンドも知らないけど自民党や安倍政権がいまは嫌いだから自民党候補に投票しないという批判票が郡女史の得票数を押し上げて当選させたという形になるでしょう。

 選挙において「高齢者が選挙結果を大きく左右する」が「高齢者はテレビを観て候補者選びをする」ため、選挙での「テレビの影響力は絶大だ」という結論になるのではないかと思います。

 なお、蛇足ですが、高齢者においても新聞離れが加速しており、仙台市長選とは無関係に投票傾向を見ていくと「新聞を読んでいない」と回答する有権者が高齢者の間でもどんどん高くなってきています。どうやら新聞という紙媒体は社会的影響力という意味で本格的に歴史から退場しようとしていることを意味しており、早いところデジタルシフトを果たし、新聞が本来機能するべきポジションにまで回帰してほしいと願っております。