深刻なサイバー攻撃(犯罪)が若者の「承認欲求」によって引き起こされる現状について

 掲示板やSNSに物騒な書き込みをして世間を騒がせる輩はいつの時代にも定期的に現れて困ったものだなと思うわけです。これだけいろんな人がネットを使うようになれば、一定の割合で突き抜けた感じの変な人が混ざるのは世の常でありまして、仕方のないことなのかなと思うわけですが。

「渋谷駅で爆破テロ」ネット書き込み疑いで男を逮捕(NHKニュース 17/6/29)

「渋谷駅で無差別爆破テロを起こす」とインターネットの掲示板に書き込み、駅の業務を妨害したとして、茨城県の20歳の男が逮捕され、警視庁は、ほかにも都内の駅などで爆破テロを起こすという書き込みをおよそ50件行っていたと見て調べています。

(中略)

警視庁によりますと調べに対し「むしゃくしゃして書き込んだ」と供述しているということです。

出典:NHKニュース

 歪んだ承認欲求が高じた挙げ句の典型的な犯罪なのでしょうが、こういう承認欲求をこじらせた若者が下手にIT方面での知識に長けていたりすると単に掲示板へ書き込むだけでは済まなくなってしまうという事例も増えてきています。

身代金ウイルス作成容疑、中3を逮捕「力試しに作った」(朝日新聞 17/6/5)

作成に必要なデータを海外のサイトから集め、作った後は海外サイトにアップロード。任意の調べに生徒は「100人以上がダウンロードした」と説明したが、捜査ではダウンロード先は確認できておらず、金銭被害も把握していないという。

出典:朝日新聞

 この事件については、中学生でランサムウェアを作れるだけのIT知識や技量を持っていた点をポジティブに評価するような意見もネット民の間に見られたりしましたが、つまるところはネットで調べて殺傷能力のある爆弾を作ってそれを街中にばらまいてみましたという話と意味するところはなんら変わらないわけでして、そうしたことをするのが社会的に間違っているということを判断できない時点でまったくほめられたものではありません。

 逆に言えば、物事の分別がつかないうちでも意欲があれば本物の知識に出会うことのできる場がインターネットであり、それを悪用することがどれだけの社会的なインパクトを持つのか判断つかない子供や変わった人が出ることは防ぎようがないということでもあります。

中学生の「ランサムウェア逮捕劇」に見る危険性(CNET Japan 17/6/17)

「かっこいいから」とハッキングしたり、「ハッキングできる能力を世間に誇示したい」という自己顕示欲を暴走させて逮捕される10代の男子中高生は少なくないのが実情だ。

(中略)

未成年のサイバー犯罪が書類送検・逮捕に至るケースには、本人がTwitterなどで作成・所持を自慢して足がつくケースが少なくない。つまり、あくまで自己顕示欲や承認欲求のためにこのような行動に走っている可能性が高いのだ。同時に、罪の意識に乏しいことも指摘できるだろう。

出典:CNET Japan

 幸か不幸か、今回の中学生の作ったランサムウェアの完成度はこのところ世界中のネットを脅かしているWannaCryやPetyaに比べれば幼稚なものであったようで実害も発生していないと考えられますが、すでにネット上ではWannaCryやPetyaの元となったハッキングツールは誰でも入手可能というのが現実です。

世界で攻撃多発のランサムウェア、WannaCryと同じNSAのハッキングツールを利用(ITmedia 17/6/28)

セキュリティ企業のBitdefenderは、6月27日の世界同時攻撃に使われたランサムウェア「GoldenEye」(Petyaの亜種)について、米国家安全保障局(NSA)から流出したハッキングツール「EternalBlue」を使って感染を広げていることを確認したと伝えた。

(中略)

Shadow Brokersが流出させたNSAのハッキングツールはEternalBlueのほかにも多数あり、それを悪用した別のマルウェアの出現も相次いで報告されている。Shadow Brokersは7月から、会員向けに毎月新たな情報を提供する有料サービスも展開すると予告していた。

出典:ITmedia

 なお、この手の「歪んだ承認欲求」が原因と考えられるサイバー犯罪は日本の若者特有の事象ではなく世界共通です。

英国人ハッカーが米国の軍事通信システムに侵入(THE ZERO/ONE 17/6/29)

米国防総省の衛星通信システムから情報を盗み出した容疑で2015年に逮捕されていた英国人ハッカーが、裁判で自らの罪を認めた。

(中略)

この事件は「スキルを持った青年ハッカーが、承認欲求を満たす目的で、調子に乗りすぎて起こした悪ふざけのハッキングだった」と考えたほうが良さそうだ。

出典:THE ZERO/ONE

 単なるこじらせた若者に易々とハッキングされてしまった米国防総省としては面目丸潰れですが、こうした事件は何も考えてない単なる愉快犯のきっかけで世界中のネットが危機にさらされる可能性を示唆していると見るべきでしょう。SFなどでは罪の意識もない子供のいたずらが世界戦争を引き起こすみたいなプロットはあまりにも月並みですが、それが現実に起これば取り返しはつきません。しかし、そういう事態も起こり得るだけの条件はそろそろ揃いつつある時代なのではないかと感じます。

 また、こういう若者の「こうでありたい」という欲求の、すべてがすべて不健全と断じることもむつかしいのも事実です。実際、日本でも世界各国でも若者向けのハッキングコンテストを開催すると、技量の差はともかくかなり若い参加者がやってくることも珍しくなくなりました。ある意味で、ハッキングの世界は「才能と意欲ある少年少女」の世界であり、これがいずれ人工知能へと置き換わっていく過程だと考えると、おおよそ正しい理解になるのでは、と思っています。