IoTな時代に向けて密かに成長を続ける謎のOS開発メーカー

(写真:アフロ)

 IT関連事業周辺で働くネット民の間で激しくバズっている記事がありました。

特集 AI 世界制覇の攻防 詳報:トヨタが頼った謎のAI半導体メーカー(日経ビジネスオンライン 17/5/22)

トヨタは車載用の半導体を内製するほか、グループ会社のデンソーや、株式を保有するルネサスエレクトロニクスなどから調達している。自動運転の頭脳となる半導体を外資系企業から調達するのは異例だ。

(中略)

始まった競争軸の変化。新たな付加価値の源泉はAIであり、新たな業界の「支配者」はAIを使いこなす黒子である。単なるメーカーは、手足のように支配者に使われるだけだ。

出典:日経ビジネスオンライン

 まあ、ネット民の間でバズった理由は煽りすぎの見出しだけで、記事そのものは自動運転制御に使われるGPUを製造する半導体メーカーをわかりやすく紹介する内容といった趣です。しかも、驚くことに記事の中では一度も「謎のAI半導体メーカー」といった呼称は出てきません。おそらくは編集部や整理部内でネット民を炎上させるべく頭をひねって付けた見出しということなんでしょう。まんまとその思惑が大成功したようです。

 ちなみに、ネットで炎上したのを早速ネタにする記事も出ていました。

 確かに話題にするには最適なサイズだったかもしれません。

NVIDIA広報「釣りタイトルだけど...」 日経ビジネスに"謎の半導体メーカー"と扱われた件でコメント(ハフポスト 17/5/22)

日経ビジネスの取材に協力しましたが、こういうタイトルになるとは知りませんでした。記者は弊社をよく知った上で取材しています。

出典:ハフポスト

 もしかしたら取材した記者本人もこんな見出しになるとは知らなかったのかもしれないですね。

 で、興味深いのは、先の日経ビジネスオンラインの記事そのもので文中に使われている「異例だ」や「手足のように支配者に使われるだけだ」という表現でして、こちらは見出しとは違うベクトルで読者の危機感を煽ることに力を入れている印象があります。まさに自動車業界へ新たな黒船が到来するので気をつけろといったところでしょうか。スマホが登場してガラケーが淘汰されてしまったことを思い返せば、そういう危機意識が国内産業にあるのはそれほど悪いことではないのかもしれませんね。いずれにしても、“自動運転”という概念そのものが大きな黒船であり、それが現実のものとして我々の日常生活に刻々と近づいてきているのは間違いないでしょう。

 ちなみに、我らが日経グループではこれまでにもAIな時代の注目株としてたびたびNVIDIA社を記事にとりあげていますから、とくにAIにそれほど詳しくない読者でもその社名を認知している方は少なくないかもしれません。

AI半導体、ロボットと工場に照準、NVIDIAとファナックが組む必然(日経テクノロジー 16/11/1)

NVIDIA社はGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)の大手メーカー。GPUはもともとゲームなどのコンピューターグラフィックス(CG)向けに使われていたが、大量の画像などのデータを読み込んで認識するディープラーニング(深層学習)に適していることからAIの“頭脳”として注目を集めるようになった。

出典:日経テクノロジー

 NVIDIAの件はさておき、油断していると知らない間に“謎”なプレイヤーがいつの間にか市場を席巻しているという事態はままあることでして、IoTな分野でも目立たないながらも着々と実績を作り上げているという事例があるようです。

サムスン、モバイル向け新OS「Tizen 4.0」発表--IoTでの活用狙う(CNET Japan 17/5/18)

サムスンが新OS「Tizen 4.0」を発表した。過去のバージョンよりも広範なアプリケーションを搭載する。

出典:CNET Japan

 なんと、日本では惜しまれつつ無事死んだと思われていたTizenですが、しっかり生き残ってしかも新バージョンにまで成長していたとは。

サムスンのTizen開発キーパーソン、新モバイルOS「Tizen 4.0」のビジョンを語る(CNET Japan 17/5/22)

現在すでにスマートテレビ、「Z」シリーズのスマートフォン、ウェアラブルデバイス、スマート冷蔵庫「Family Hub」など、多くのサムスン製品にTizenが使われているという。さらに、ロボット掃除機、洗濯機、エアコン、ネットワークスピーカといった家電製品も、近い内にTizenベースになるとした。

出典:CNET Japan

 素晴らしい。

 SamsungはやはりTizenを諦めていなかったんですね。はたしてSamsung製品以外にも食い込むことができるのかどうかはまさに“謎”ですが、世界的な規模での家電市場における同社製品のシェアを考えるとそれなりにインパクトはありそうですし、Googleを嫌う他の家電メーカーと思惑が一致すればそれなりには新たな黒船として日経ビジネスオンラインあたりで素敵な煽り記事として取り上げてもらえるのかもしれません。

 「謎のOS」としてTizenが再び世情を賑わす日を正座して待ちたいと思います。