話題先行のベンチャー企業「UPQ」がハイスペックを偽り売った機器の収拾で謝罪とわずかな金員を提示

(写真:アフロ)

山本一郎です。このところネットを介して商いをするということについて色々と考えさせられる事件が頻発しています。まあ、人間がやることですから多少の間違いが起きるのは致し方ないことなのですが、あまりにも従来の社会常識が通じない展開を目にすることが増えてきている印象で、そういう出来事に一々驚いてしまうのは逆に自分がもう社会の流れについていけてないのかもしれないと不安になるほどです。

メルカリやAmazonなどでのネット通販トラブルについては大掛かりな業界団体内での議論や政策論争に発展してきております。そのあたり大掛かりな舞台装置のことについてはおいおいメルマガあたりでまとめて論考できればと考えていますが、とりあえずはネットで話題のベンチャー家電メーカーが巻き起こしたトラブルの対応のありようがちょっと理解に苦しむ展開なのでメモ代わりに目についたネット言説を拾っておこうかと思います。

事の起こりは、高いリフレッシュレートのハイスペックを謳っていた4Kディスプレイが、実際にはそうした性能を備えていなかったことが判明しメーカーがその発表を行ったことにあります。

UPQディスプレイ製品3機種のリフレッシュレート表記の誤りについてのお詫びとお知らせ(UPQ 17/4/12)

この度、弊社ディスプレイ製品3機種(Q-display 4K50 / Q-display 4K50X / Q-display 4K65 Limited model 2016/17)につきまして、発表時より弊社および販売店ウェブサイトに掲載したリフレッシュレートの表記に誤りがございました。120Hzの記載ですが、正しくは60Hzとなります。誠に申し訳御座いません。お詫びし、訂正いたします。

出典:UPQ

この誤表記を不満に思う該当製品購入者に対しては、購入を証明する領収書などの書類写真添付の上で申請すれば、お詫びとして2000円分のAmazonギフト券が電子メール形式にて提供されるとのことです。なるほど、返金対応するほどの致命的な欠陥ではないというのがメーカー側の認識のようですね。

一方、UPQの当該製品をODMとして仕入れて販売していたDMMも同様な発表を行っております。

65インチ ・50インチ 4Kディスプレイ 製品仕様誤表記のお詫びと訂正(DMM PDF書類)

この度、弊社商品 DME-4K50D/DME-4K65D(以下「対象商品」といいます。)の製品パンフレット、およびウェブサイトに記載の製品紹介において、製品仕様に誤表記があることが判明いたしました。

お客様に、多大なるご迷惑をお掛けいたしましたこと、深くお詫び申し上げます。

ここで興味深いのは、DMMは返金を希望する購入者に対しては当該製品の返却処理後に購入金額の返金を行うとしている点です。同等製品を購入してもDMMからの購入者とUPQからの購入者ではその対応に大きな違いが生じています。なぜ、このような差が生じてしまうのかについては、UPQの内情に詳しいらしい津田啓夢さんという方が以下のような記事を書かれています。

120Hz倍速は間違え!UPQとDMMが4K 65/50型モニター仕様を誤ったワケ。対応に差、背景に景表法の新ルール【詳報】(更新)(Engadget日本版 17/4/26)

色々あっちこっちに話が飛びちらかりつつ説明されていますが、乱暴に読み取ると要はDMMはたくさん売ったので法律的に返金しなければならない立場だが、UPQはそれほどたくさん売ってないので返金措置などを講じる必要がないということなんだそうです。なるほど、そうですか。同記事にある以下のくだりなどはなかなか本音が出ていて面白いですね。

UPQ側は「正直なところ、UPQには(返品を受けても)置く場所がありません。大きなモニターなので返品していただくにしてもコストがかかり、その面でも厳しいのが現状です」とコメント。また「代替品があれば違った対応も考えらえられますが、そういったラインナップもなく」と話しています。

なおUPQでは現状、行政指導には至らないものと認識しているとのことです。

出典:Engadget日本版

この記事ではどうしてこのような製品が販売されるに至ったかも色々と説明されていますが、どう読んでもメーカー側の都合でしかない問題であって、自分が売っている製品の中身をちゃんと把握してなかったということですよね。記事を書いている津田さんは今回の問題を「結局、購入者がどう感じるか? かなぁ」というレベルにまで矮小化させて結論しようとしていますが、テックメディアの記者がそういう形でエンドユーザーではなくメーカー側を擁護してしまうと、エンドユーザーはいつまで経っても不良品を掴まされても泣き寝入りみたいなことにならないんですかね。

なお、UPQとDMMの両社が今回のような対応を行ったことについては他メディアからも取材が入り見解を取ってていますので、そちらもご紹介しておきます。

4Kディスプレイのスペック「誤表記」で「2000円」の補償 UPQの見解は?(ITmedia 17/4/25)

――告知はWebサイト上に限られているようだが、それ以外の方法では告知しなかったのか。プレスリリースとして報道関係者に通知したり、UPQのSNSアカウントでユーザーに周知したりしても良かったと思うのだが。

UPQ 消費者庁表示対策課に自主申告をした際に、自主申告での対応についてのご指南をいただいた。今回の対応方針についても、相談した上での対応となる。

出典:ITmedia

4Kディスプレイ「スペック誤表記」問題 DMM.comが「返品」に応じた経緯(ITmedia 17/4/27)

―― 今回は希望者に対して返品に応じる対応を取った。その経緯はどのようなものか。

DMM 今回の誤表記に伴い、購入者が用途と異なる製品を購入してしまった可能性がある。また、弊社として最大限お客様の不利益にならないように熟慮した結果、返金という形を取ることになった。

出典:ITmedia

UPQは消費者庁からの指南に従って対応したことを強調していますが、DMMのようにはユーザーの不利益を考慮することはなかったのでしょうか。

ちなみに今回の事態をふまえてUPQ代表の中澤さんは以下のようなメッセージも出されております。

ベンチャーであり未だ不安定な私たちですが、たくさんのお客様に支えられ1年9カ月生き続けることができています。この度の不行き届きにつきまして心よりお詫びすると共に、製品を開発し販売し続けることができるよう最善を尽くして参ります。

出典:Engadget日本版

同氏が過去に発したメッセージでは以下のようなものもありました。

全く違う「ケータイ文化」を持つインド人と仕事をするには?(BEST T!MES 17/2/14)

大きな失敗があっても、3回までは許すようにしています。3回以上繰り返したら、本当におバカさんなのか、わざとやってるかのどちらか。基本的には、1回で見捨てないというのが大事だし、常に躍起にさせるために、3回は奮起させます。

出典:BEST T!MES

UPQの失敗は今回で何度目なのかを考えるとなかなか興味深いですが、とりあえず同社がこれまで発表してきた製品にまつわる記事を以下にざっくりと拾っておきます。あのバイクで大きな事故とか起きてないといいのですが。

「UPQ Phone A01」全回収、技適マーク未取得で出荷(ケータイWatch 15/9/25)

UPQ 4Kディスプレイの惨劇再び?(力こそパワー 16/3/2)

超小型折りたたみ電動バイク UPQ BIKE me01まとめ(NAVERまとめ)

もちろん、企業をやっていて、とりわけ客商売のビジネスだとどうしてもミスや思い違いからトラブルに陥ることはあります。間違いがあったからと言って、それを認めて謝罪する企業に対して、ことさらに指弾する必要はないと思ってはいます。下げた頭を踏みつけるほどのことかどうかは程度問題です。

ただ、今回のUPQに関してはこの手の「お騒がせ常連企業」であり、ODMで自社製品を提供した先であるDMMの対応と見比べても「返品物を受け取れる場所がないから金券2,000円」という内容はベンチャーだから許されるとか、謝罪は内容より態度というレベルを超えているとも感じます。単純に、自社の体力以上のビジネスをやってみたら、やらかして大変なことになったという話であるならば、UPQの誠意の見せ方は「次は同じような間違いを繰り返さないので、新しく画期的なハードウェアを出し続ける弊社を応援してください」という内容になるんじゃないかと感じます。

そこで、上記のような続発するUPQのやらかしを見ると「またか」と思うわけでして、それも「そもそも謳っていたハイスペックは初めから実現できていなかった」事例であるというのが真実ならばベンチャーか老舗かという経験や資本の大小と関係なく「スペック偽って商売している」という倫理、モラルの問題であることが気になります。

そして、そういう企業を担いでPRしてしまったメディアにも責任の一端があるのだとするならば、単なる謝罪や金券配布といった方法とは別の解決策を考える必要があるのではないかと強く感じるのですが、どうでしょうか。