格安スマホをめぐるトラブルから考えるモノの値段

山本一郎です。昨今スマホの普及にあわせて事業参入企業が増加しているMVNOですが、メディアなどで“格安スマホ”などと形容されることが多く、また事業者も料金体系の安さだけを全面に出して宣伝しがちであるため、消費者が単に安いという理由から加入して思わぬトラブルに直面するとい事態が起きているようです。

格安スマホ、国民生活センターに相談急増 目立つサービス内容認識不足(産経ニュース 17/4/13)

国民生活センターは13日、格安スマートフォンに関する平成28年度の相談数が1045件に上り、前年度比で2.8倍に急増したと発表した。「これまで通りのサービスを安く受けられると思っていたのに実際は違っていた」との相談が目立つという。

出典:産経ニュース

 まあ、それはそうなりますよね。

 MVNOの料金が“格安”と称されるほど安くなるにはそれだけの理由があります。各事業者による独自の工夫やコスト削減努力の賜物でもあるわけですが、その結果として提供されるサービスが必然的に簡素化されるという事情は認知されていてしかるべきだとも思うのですが、どうやら世間ではそうは問屋が卸してくれないようです。

格安スマホのトラブルが数年間で急増 サービス内容などをしっかり確認するよう国民生活センターが注意喚起(ねとらぼ 17/4/13)

国民生活センターによれば、「代替機の貸出がなく、1カ月間スマホが利用できなくなった」「キャリアメールが使えないため、それ以外のメールアドレスの受信を拒否している相手に送れない」「SIMロック(指定のSIMカードしか認識しないこと)の解除に、料金が発生した」といった相談が寄せられているとのこと。

出典:ねとらぼ

 なるほど、支払う料金はできるだけ少なくしたいけれど、得られるサービスは最大にしたいということですね。その気持ちはわからなくはないですが、昔航空会社のサービスで格安航空会社LCCのサービスが悪いと揉めるケースが続出したのと似ている状況です。

 ここに挙げられているような問題がなぜ起きるのかを理解できているユーザーであればその分割安な料金でMVNOサービスを利用するメリットは十分あると思うのですが、一方でなぜこんなトラブルにあわなければいけないのかと不満に感じるような人であれば、そのあたりの細かい顧客が感じる不満へのケアに力を入れている大手キャリアと契約すべきでしょう。当然ではありますが、大手キャリアであれば至れり尽くせりの丁寧なサービスを期待できる代償としてその分料金も高めになってしまいます。

 それが格安スマホと大手キャリアの間にある値段の差であるわけですが、こうしたモノの値段のあり方を理解してくれないお客さんは結構少なくないのかもしれません。ファストフード店で高級レストラン並みのおもてなしを求める人がいなくならないとの同じことなのでしょう。客商売とはいえ、MVNO事業者も大手キャリアもなかなか大変であります。

 一方で、UQや楽天、DMM、LINEなどMVNO事業者は値段を売り物にする広告を強く前に出す傾向があります。そこだけみれば大手キャリアよりこれだけサービス部分は差っ引かれているとか、回線速度はのろのろするケースが増えるよとか、実店舗はなく解約や契約変更もコールセンター経由なので電話多数の時期は全く繋がらない可能性があるよとか、「値段は安い、だがしかし」の説明はなかなかされないのが実情です。

 なお、国民生活センターではこうした状況を改善すべく業界団体へ以下のような要望を表明しています。

MVNOが提供する携帯電話に関する相談が増加していることから、より多くの消費者が安心・安全に利用できるよう、業界全体として苦情の減少に向けた取り組みを行うことを要望します。特に、販売形態に関わらず、契約時や利用時の注意点等について丁寧な説明や、ホームページ等への記載を含め、より一層の消費者への啓発等に関する取り組みを行うことを要望します。

出典:国民生活センター

 確かに国民生活センターとしてはそう言わないわけにもいかないでしょう。

 要は顧客対応を今よりも充実させろという話ですが、そういう施策を行うためには当然様々なリソースを事業者側が負担する必要が生じるわけで、もちろんコストにもはね返っていくことになります。その結果、MVNOの料金が大手キャリア並みとは言わずとも今より割高になってしまうのだとすれば、なにやら本末転倒な成り行きと言わざるを得ません。このあたりのバランスが今後どうなっていくのかちょっと気になるところではあります。

 少しでも通信料金を節約したいという消費者心理は痛いほどわかるだけに、安いには理由がある、安さを享受できるにはある程度スマホの取り扱いに詳しくならなければならない、という点は、どうしても考えておくべきだと思うんですけどね。