吉本グループがSNS向けインフルエンサーマーケティング事業に参入表明の件

山本一郎です。自称“キュレーション”な事実上のパクリメディア商売が下火になりつつある一方で、ジワジワと国内でもInstagramなどのSNSを舞台にしてインフルエンサーを起用した微妙な広告ビジネスが盛り上がりつつある昨今であります。

インフルエンサーとは何ぞやということですが以下の記事などが参考になるかもしれません。

インフルエンサー influencer(コトバンク)

特に、インターネットの消費者発信型メディア(CGM)において他の消費者に大きな影響を与える人

出典:コトバンク

身も蓋もない言い方をするとブログやSNSでアフィリエイト商売する際に売上に繋がりそうなアクセスをブーストできる人材という感じでしょうか。

で、この流行りのインフルエンサーマーケティング事業に吉本興業傘下のよしもとクリエイティブ・エージェンシーも参入するというリリースが出ておりました。

吉本グループ、所属芸人を活用したインフルエンサーマーケティング事業を開始(日本経済新聞 17/2/27)

所属タレント約6000人を活用したインフルエンサーマーケティング事業を開始いたします。

(中略)

Instagramでは日本で最も多い600万人越えのフォロワー数を保持する渡辺直美を筆頭に、SNSにおけるフォロワー総数は、Twitterでは4,000万人以上、Instagramでは1,600万を超え、国内最大規模となっております。

出典:日本経済新聞

従来の素人に毛が生えた程度のネット有名人の類とは異なり、マスメディアで活躍するホンモノの芸人がインフルエンサーマーケティング市場に殴り込みという形になりそうです。

もっとも、これまで国内でインフルエンサーマーケティングが注目されていた大きな理由の一つには比較的安いギャラでネット有名人になりたい素人さんを使ってそれなりの広告効果を出せたということにあります。言い方は悪いですが「サクラ」を集めてきて人だかりができているように見せ、それに興味をもってなにがしか財布を拓かせるやり方は、バナナの叩き売りからガラケー時代の出会い系サイトまで古典的な商売の一つです。

一方で、トップクラスの芸人さんを使うとなると予算も最初から桁違いになりそうではあります。従来と同じようなノリの低予算案件とは異なるナショナルクライアント向けの提案ということになるのでしょうか。まあ、よしもとクリエイティブ・エージェンシーの所属タレントは約6000人ということですからピンからキリまで考えれば低予算案件にもそれなりに対応しそうな芸人さんはいることでしょうし、クライアントからすればよく分かっておらずトラブルの原因になりそうな素人さんを使うよりもプロとして管理された芸人さんを使うほうがなにかと安心という流れになるのかもしれません。

知名度をビジネスにしたいという気持ちはもちろん分かります。ただ、こうやってプロのタレント事務所が堂々とインフルエンサーマーケティング事業に参入すると宣言するのはありとしても、そういう状況になるのであればステマ防止に向けたさらなる厳しいルール作りも必要になってくるのではないかと思われます。

ネット上に転がっているインフルエンサーマーケティングにまつわる解説記事などを見ていますと、広告なのにあからさまに広告であることは知られたくないけれど何かあったときに責任回避できるようにということなのでしょうか、SNSへの投稿に「#PR」や「#AD」といったハッシュタグを入れることを推奨していることが多いわけですが、あのタグを見て広告だと理解できているSNSユーザーがどれくらいいるのかは大いに謎です。おそらくほとんどの人は広告として認知していない可能性が大でしょう。広告はもっと広告であることが誰にも一目で分かるような仕組みがないと、Instagramなんてステマ天国になりかねません。

実際、過去に大手広告会社の社内報が公開されたとき、記事に部署名や担当者女性の名前込みで堂々とステマ紛いのSNSビジネスを語る記事がネットで開陳されていたため、特定方面で物凄い物議を醸したのも記憶に新しいところです。この「金が払われて書かれる記事は広告であり、関係性の明示は行わなければならない」という線引きをきちんと考えないと法的リスクどころではない問題に巻き込まれることになるでしょう。

最近の調査では、SNSを導線とした直接的なEコマース施策はなかなか思い通りにいかないというデータも米国では出ており、インフルエンサーマーケティンでどんなにバズってもそれが直接商品購入のきっかけになるとは限らないという課題は残りそうです。

ソーシャル上の「購入」ボタンは、なぜ流行らないのか?:TwitterもFacebookも廃止した背景(DIGIDAY 17/2/7)

Twitterは「Buy(購入)」ボタンを廃止した。Facebookはすでに「Buy」ボタンの設置を取りやめており、インスタグラムとPinterestも同様に「Buy」ボタンで苦戦している。

出典:DIGIDAY

直接の購買に繋がらなくても、商品やサービスの認知をさせたいケースや、広告キャンペーン自体が浸透していることを求めるケース、さらには企業や商品、サービスのブランド価値向上といった観点から、SNS広告に効果はあると考える広告主もそれなりにいます。やはり一時期流行したバズりに関する考え方や、オウンドメディアブームといったものが一巡した後、やはり実際のユーザーや見込み客とのエンゲージメント(関わり)をどうSNSで構築するかは各社模索中といったところでしょうから、その媒介としてよしもとの芸人が相応しいのかどうか、またビジネスとしてステルスマーケティング批判をどう逃れるかといったあたりは、今後の議論対象となっていくのかもしれません。