リテラシーもモラルもなくネットは拡大していくのでしょうか

「リテラシー」という単語でアフロ画像検索すると出てくる、謎の少女。(写真:アフロ)

 山本一郎です。リテラシーって言葉に最近ようやくピンときたタイプの人間です。

 ところで、DeNAの運営していたWELQやMERYなどがやらかしたことを発端として各所へ飛び火して、いわゆる「キュレーションメディア」のありようについて喧しく議論される今日この頃です。

 そもそものネット界隈で言うところの“キュレーション”という概念自体がどうなんだろうという話はあるかと思います。朝日新聞などが中心となって提供している用語検索サービスの「コトバンク」では以下のような解説となっています。気になる人は是非リンク先を参照していただければと思います。

キュレーション きゅれーしょん Curation(コトバンク)

 とくに注目したいのは、「知恵蔵2015」の解説にある以下の部分でして、かなり興味深く読めます。

現在は、GoogleやYahooのような自動的に情報を収集する検索サービスが主流だが、自動化による画一的な情報収集より、手動によってまとめられた情報は、同じ価値観を持つ人々にとってありがたいものである。

出典:コトバンク

 “同じ価値観を持つ人々にとってありがたい”という指摘は言い得て妙といいますか、まさにこのポイントこそがキュレーションメディアの抱える最大の問題点と密接にリンクしているのではないでしょうか。

 ある意味で、ネットは大規模な同好会のような側面があるため、同じニーズや価値観、興味対象が集いやすいという点で、一種のキュレーションが持て囃されるのは時間の問題だったとも言えます。

 そして、現在ネット上で横行しているキュレーションの実態がコピペでありパクリであるため著作権的にグレー(実質ブラック)な行為であることはそもそも大いに問題でありますが、それ以上に、こうしたメディアに集まる情報が同じ価値観を持つ人々に向けて最適化されることで集客効果の最大化を狙っている結果として、非常に歪な情報サイトとして巨大化してしまう可能性が高いのではないかと感じます。同じ価値観の人たちがひとつのメディアに糾合したり、意見の合う知識人のもとに集いグルーピー(死語)になるのも違和感を特に覚えません。

 人というのは自分が信じたい情報だけに触れていたい傾向があります。別の言い方をすると自分が信じている情報が否定されるような反対意見はできれば知りたくないわけです。これと通じる話としては、面白おかしいネタはどんどんネット上で拡散されていくのに、そのネタ話に誤りがあった場合に訂正情報を流しても先のネタほどには順調に拡散されず誤りが正されないというパターンが思い当たります。

なぜか「キュレーター」自らが記事を投稿することになっていたDeNA「iemo」
なぜか「キュレーター」自らが記事を投稿することになっていたDeNA「iemo」

 こういう言い方をしてしまうのはちょっと強引かもしれませんが、ネットは根拠なく感情に基づいた多数決をやりやすい場である一方、専門家同士が論点を賛成反対にまたいで議論をしながら理性的な情報共有をするのはむつかしい場になりつつあると感じます。もっと極論するとリテラシー不在の場になりつつあるとも言えるわけですが、まあ、中川淳一郎さんはずいぶん前から「ウェブはバカと暇人のもの」と断言されておりましたが、いよいよその状態が進行しているだけなのかもしれません。進行しているというよりは、拍車がかかっている、という表現になるのかもしれませんが。

 キュレーションメディアのようなネット情報が信頼できるものでないということは、そうした事業を営んでいた中の人も確信していたことを懺悔しているのが痛ましいです。

南場会長、ウェルク問題「報道で知りがくぜん」(毎日新聞 16/12/7)

家族の闘病が始まった時にインターネットの情報も徹底的に調べたが、役に立たず、『がんに効くきのこ』というような信頼できない話も2011年の時点では出てきた。そこから私の情報収集は論文と、専門家からのレクチャーが中心になった。

出典:毎日新聞

 ちなみに、「がんに効くきのこ」で検索すると一番最初にキュレーションメディア最大手「NAVERまとめ」の香ばしい記事がヒットしますが、さすがに「ガンの阻止率は99.4%,がん細胞が消滅する全治率は90%である」という文言を絶版になった怪しげな本からそのまま抜粋して書き込んでいるのはいかがなものかと思います。

ガンに効く、すごいキノコがあった!(NAVERまとめ)

 NAVERまとめでは信頼性の向上を今後目指すと発表していますが、どうなるのかは今後の成り行きを見守るしかありません。しかし、NAVERまとめにコピペ・パクリされるのは、ネット上にそういう記事を書いている側が用心不足だから気をつけるようにみたいなニュアンスの訳の分からない運用体制だったという話もあるようでして、これはなかなか豪快ですね。

NAVERまとめに無断転載“された”側の訴え……「抗議への対応に驚愕」(ITmedia 16/12/12)

そもそもなぜ、無断転載された側が、自分のサイトに問い合わせ番号を記入するなどの手間をかけなくてはならないのか。LINEは「権利侵害の問い合わせがあった際、それが権利者本人によるものか確認することはサービス提供者の責任。万一、虚偽や間違いの申告だった場合、まとめ作成者の表現の自由を阻害する対応になってしまう」ためと説明している。

出典:ITmedia

 なんとも都合のいい論理展開が繰り広げられているようです。今のネットはリテラシーやモラルが不在のままでどんどんビジネス機会だけが拡大している印象が強いですが、これはもう軌道修正できないものなのでしょうか。不思議なのは世の中の不正をただすと声を大きくしてる人達自らが不正行為をしていたりもするんですよね。CNET Japan編集長の別井さんが激怒されるのは当然なんですが……。

DeNAを責めている記事中で自らがCNET Japanの写真を盗用するとはすばらしい。魚拓できない仕様、Archive.isでは当該写真のみ保存できない仕様とはさすが。正式抗議&対処を求めてから4時間以上経ちましたが何の反応もないとは感服。

許しませんから。#gigazine

出典:Takashi Betsui|別井貴志

 かくいう我らがヤフージャパンも、CGMコンテンツとしてガセネタの宝庫に位置する「ヤフー知恵袋」を運営しており、場所を貸して掲載しているだけという論法でどこまで行けるのか、善意のコンテンツ提供者だから多少間違った情報でも許されるというのは大丈夫なのかというのは、いま一度、見直した方が良いように感じます。

 これを機に、検索エンジンのスキを突くビジネスはともかくとして、メディアの送り出し側の「情報の質」については考え直すのが良いのではないかとも思います。意見の賛成反対というようなオピニオンならともかく、ニセ医療情報やパクリなど、あってはならないものがあったときに、ネット社会がどのように自浄採用をもたらすか、また広告掲載をやめる仕組みを用意するなど、きちんとした手当、仕組みがあった方が良いように感じるのです。

 アメリカ大統領選のように、ネットで渦巻いたガセネタ対策も含めて、ネットメディアの在り方を見つめ直したい2016年の年の瀬でありました。