テレビ朝日で森山高至さんが流した「ガセネタ」ハイライト(修正、追記あり)

ほんと東京都知事の小池百合子女史はどうするんすかね(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

山本一郎です。最近なぜか左の中指が頻繁につります。このままでは中指が立てられません。困ったもんです。

ところで、先日「テレビがガセネタをつかまされて微妙な放送を行った結果、社会問題が間違った論点で伝わってしまい社会が大混乱に陥る」件について記事を書きました。

テレビ局は、なぜ豊洲問題で騙されたのか(ヤフーニュース個人 山本一郎 16/10/9)

今回はほんのり踏み込んで、具体的な内容として現在テレビ局各社でどのようなガセネタが流れたのか、いくつか検証してみました。問題となった制作会社にも個人的に当たれるところは話を聞いたりしているわけですけれども、ガセネタをテレビ局の制作現場が見抜けなかったというよりは、特定の立場の人たちの偏った意見や間違った専門知識が「一級建築士」などの肩書に乗せられて検証のしようのないガセネタを放送した後で、その珍妙な内容に対してネットなどで「本当の専門家」からツッコミを受けて批判に晒されてしまう、というのが実情のようです。

しかし、テレビ局が間違いやガセネタに気づいても、検証報道として訂正したり修正を充分に行うことは稀です。先日、柱が曲がっていると指摘したフジテレビ系『新報道2001』でも、都議の音喜多駿さんやネットを中心に検証が行われ、ガセネタというか捏造が判明、たったの1分半とはいえ検証報道が行われたことは記憶に新しいところです。

もちろん、テレビ局側が紛糾する問題について少しでも話題になるような報じ方をしたいという気持ちを持つのは分かります。それでも、正しいことを報道として行うことが求められているわけで、指摘を受けてフジテレビが反省をしっかりと表明し、検証報道をしたのは正しい姿勢と言えるでしょう。

炎上した「豊洲市場の柱の傾き」報道 フジテレビが「真摯に反省」した1分半の検証(BuzzFeed 16/10/9)

フジ「新報道2001」、豊洲市場の柱問題で「誤解招いた」(J-CAST 16/10/10)

これに限らず、豊洲新市場問題については、やはり話題がヒートアップし過ぎている面が多数見受けられます。日々のテレビ番組の制作に追われている現場からすると、例えば豊洲新市場のようなホットな話題について「語れる専門家」を探したところ、お昼間や夕方などビジネスタイムのテレビ出演に耐えられるような「あまりパッとしない専門家」ぐらいしか出演に応じてもらえないことになります。大規模構造物について現役で事実をきちんと語れる人は、事務所に所属して守秘義務があり日中は働いておられるからです。

その結果、検証されない“トンデモ”が普通に報じられ、事情を知らない視聴者は「そういうことなのか、豊洲はけしからん」という認識になるのでしょう。そもそも、ターレー程度の荷重で床が抜けるはずもなく、当然ガセネタや言いがかりのレベルの放送内容になってしまうのですが、これの検証ができないことは本当にテレビ局や制作会社の責任にだけ帰していいのか、とは思います。本来は、業界団体なり本当の専門家なり施工・設計の当事者なりがしっかりと声を上げ、訂正報道を求めるなり、問題のある発言をした自称専門家の出演自粛を要請したり、明確な風説の流布には営業妨害で訴訟を起こすといった話はしなければなりません。

では、具体的にテレビ番組の中身を全文文字起こしで検証してみましょう。

今回登場する専門家は皆さんご存じ森山高至さんですが、この放送においては、ほぼ全編「森山高至ネタ」に完全に乗っかって放送をしています。

■『グッド!モーニング テレビ朝日 8月15日(月)04:55~08:00』で何が語られたか

自称「建築エコノミスト」で登場の森山高至さん。株式会社CRA所属の一級建築士です
自称「建築エコノミスト」で登場の森山高至さん。株式会社CRA所属の一級建築士です

ナレ:しかし、そもそもなぜ延期を求める声が挙がっているのでしょうか。建築エコノミストの森山高至氏に話を聞くと、豊洲新市場では市場としての役割を果たせないことが原因だと話します。

森山:市場じゃなくて冷蔵倉庫。現状築地で使ってらっしゃる動いてらっしゃる、そういう動きがじゅうぶん豊洲の施設には反映されてないなってことなんですよね。流通倉庫として考えた時の床の積載荷重が本当に十分なのかなっていう。

将来的には世界的な衛生基準を満たすHACCPを目指した設計の豊洲新市場なのに、なぜか”市場の機能は果たせず冷蔵倉庫である”と根拠なく断定しています。もちろん、外気に触れず温度管理を徹底して水産品や青果などの鮮度を保つことを重視していますが、だからといって「市場としての機能が果たせない」わけがありません。

突然根拠なく「豊洲新市場は市場としての役割を果たせない」と煽ります。根拠は?
突然根拠なく「豊洲新市場は市場としての役割を果たせない」と煽ります。根拠は?

ナレ:森山氏が指摘する積載荷重とは。建築基準法に定められた人や荷物の重量など、建物の床に加わる荷重のことです。一般的に豊洲新市場と同規模の施設では、1平方メートルあたり1.5トン以上の重さが普通だと言いますが、豊洲の新市場では1平方メートルあたり700キロとなっています。

「一般的な施設の積載荷重が1平方メートルあたり1.5トン」と森山さんは主張していますが、それでは建築基準法施行令第85条に掲載されている積載荷重の表を見てみましょう。

「1平方メートルあたり700kg」が如何に堅牢かを示す表。もちろん法令上も適法。
「1平方メートルあたり700kg」が如何に堅牢かを示す表。もちろん法令上も適法。

※構造計算上、1平方メートルあたり700kgはむしろ堅牢な部類(画像は「有限会社トータル構造設計事務所」さまのページよりお借りしたものに加筆したものです。)

豊洲新市場の1平方メートルあたり700kgは、法律で定められているどの積載荷重よりも大きいことが分かります。

確かに常に物が蓄えられている天井の高い倉庫のような建物であれば、実情を検討し1平方メートルあたり1.5トンで設計されることはありますが、そもそも豊洲新市場は倉庫ではありません。法律に明確に違反している数値ならまだしも、「一般的な施設では1平方メートルあたり1.5トン」という森山氏の根拠のない主張をわざわざ報道し、視聴者の不安を煽りたい理由がテレビ局にあったのでしょうか。

そもそも「豊洲新市場が流通倉庫」というのが間違いなのに流通倉庫前提で話が進むの巻
そもそも「豊洲新市場が流通倉庫」というのが間違いなのに流通倉庫前提で話が進むの巻

ナレ:さらに問題が、流通の基本である荷物の積み下ろしスペースでも。図面を見ると56台のトラックが並んで作業できるように設計されているのですが。

構造計算上、1平方メートルあたり700kgはむしろ堅牢な部類
構造計算上、1平方メートルあたり700kgはむしろ堅牢な部類

前述のとおり、放送でのキャプション中「一般的な施設が1平方メートル当たり1.5トンを求められている」というのはウソです。

コストコやイケアなど、大規模ショッピングセンターのような天井が高く重量物を陳列する施設や、低層の倉庫などに求められている基準であって、一般的な施設がこのような重量計算をクリアしなければならないというわけではありません。

ましてや、市場のように品物や設備がせわしなく動き回る施設では、これで充分な強度だと分かっているからこそ、過去に問題視されず現在に至ってきたと言えます。

森山:トラックの後ろ側の積み出しから荷物を卸すような設定になってまして。トレーラーの真後ろから搬出するというのはあまりなくて、横にこうガバッと全体の車体が開く車を使っていて、みんなで一斉におろしていくというやり方をしてますので。

ナレ:後ろ側だけで搬出・搬入作業を行うと、例えば築地で2時間で終わっていた作業が、豊洲だと4時間かかってしまう可能性があるといいます。

これも、流通に詳しい方からはほうぼう指摘されていることですが、常識的な食料工場では保冷が必要な捌荷場では横開きのトラックを横付けして、ウイングを開いて積み下ろしする、なんてことはほとんどしません。大手GMSでは、トラックの荷台の後ろだけを開き、保冷のためのジャバラやシートをかけて温度を保ちながら荷物を捌きます。

温度管理が本来は必要な市場での生鮮品流通において、野外でトラックが横付けで荷物を載せたり下ろしたりしているのは、大手では築地市場ぐらいです。「築地のようなやり方では取り扱う生鮮食料品や青果物などの鮮度が保てないから、豊洲市場ではより良い市場機能を満たすためにトラックでの積み下ろしも保冷できるようにしよう」という話だったのが、森山さんのネタになるとアベコベな話になります。

築82年平屋の築地市場平面図となぜか比較。トラック横付以前に外気触れてしまう構造
築82年平屋の築地市場平面図となぜか比較。トラック横付以前に外気触れてしまう構造
トラックが横開しちゃったら冷気も全部逃げるし、積み替え中ずっと車長分スペース食う
トラックが横開しちゃったら冷気も全部逃げるし、積み替え中ずっと車長分スペース食う

ナレ:築地で仲卸を行う中澤さんは、明日視察を行う小池都知事に期待の声をあげています。

ここで出てくるのが何故か共産党の中澤誠さんです。「職場を守りたい」というお考えでしょうし、その主張はご自由にどうぞという感じですが、むしろ職場環境を改善させるには最新鋭の設備の揃った豊洲市場のほうが本来は良いのではないでしょうか。

「そういう時代遅れの捌荷にしない設計」の豊洲新市場に、意味不明の言いがかりが
「そういう時代遅れの捌荷にしない設計」の豊洲新市場に、意味不明の言いがかりが
そうならないように、搬入搬出器機が入る。外気に触れないコールドチェーン仕様のはず
そうならないように、搬入搬出器機が入る。外気に触れないコールドチェーン仕様のはず

すなわち、8月の時点で小池百合子女史が「立ち止まる」話をしていたころの話題は、これらの「豊洲新市場は機能的に良くない」という言いがかりレベルの話に終始していたことが分かります。そこから一か月たち、さらに盛り土問題や汚染問題が出てくると、ここでの議論は検証され訂正されることなく、次のガセネタに移っていくのです。

テレビ朝日に限らず、同様のネタはほかのテレビ局でも垂れ流され、豊洲新市場に対する都民からの悪印象は決定的なものになっていきます。都合の悪いものは都が悪い、ゼネコンが悪い、設計事務所が悪いという方向へ誘導され、どんどん煽られて、環境基準値以下の汚染物質が出ただけで大騒ぎになる土壌がここで完成した、といっても過言ではないでしょう。

■羽鳥慎一モーニングショー テレビ朝日 9月19日(月)08:00~09:55

さらに、強烈なガセネタが展開されていたのが『羽鳥慎一モーニングショー』での森山高至さんの解説です。

豊洲新市場の設計図にも当初から入っている「重機搬入口」が無かったことになっていて、地下に重機を入れるには“壁を破らなければならない”と珍説を述べています。設計図面にも現地視察でも重機搬入口はあるわけで、豊洲新市場の図面を一級建築士である森山高至さんは読めていなかったのかという話になるわけです。

しかしながら、番組では「あって当たり前で、設計図にも入っている」はずの重機搬入口が、この森山証言のお蔭で「搬入口が無い」前提で進行していきます。

羽鳥:なんでかっていうと、設計図を森山さん見ました。設計図した空洞になっている。設計図森山さんがよーく見たんですけど、見てみると、重機が地下に入れる出入り口はない。あの、都議団の人が入ったのを映像で見たかと思います。小さな階段を降りていくわけです。そこショベルカーは降りられないだろう。ということでそうすると、たいへんですよね。

設計図を森山高至さんが見たにもかかわらず、重機搬入口を見つけられなかった結果、9分間にわたってガセネタのもっともらしい解説が始まってしまいます。

なぜか重機が地下に入れない前提で説明が始まる謎の番組
なぜか重機が地下に入れない前提で説明が始まる謎の番組

森山:どうやっていれるのか、と。そもそもパワーシャベルを入れる理由すらどこまでリアリティあるのかところかと思います。

羽鳥:このまま現状では森山さんが設計図から見る限りでは、パワーシャベルは入れない、ということなんですね。玉川さんですか。今までとはちょっと違って…

省略

どうも地下に入れる重機搬入口がないのでスロープ工法で頑張ろうとする森山さん
どうも地下に入れる重機搬入口がないのでスロープ工法で頑張ろうとする森山さん

もうこの時点で森山さんは図面が読めていなかったのがハッキリするわけですけれども、一億歩譲って搬入口が無かったとしても、スロープではなく建物脇に搬入用の孔状物を掘りクレーンなどを用いて地中に重機をを下ろして工事をするのが一般的です。東日本大震災でも同様のピット破損で多数の工事が行われてきたことを、どうも森山さんは建築エコノミストをと自称していたのに知らなかったようです。

石原:そういう(何かあったときのために掘るように)目的のために地下の空間が用意してあったってことは分かるんだけど、入口がないっていうのはどういう…。

羽鳥:すごいですよこれ、森山さんのシミュレーション、今からご覧いただきましょう。

重機入れないじゃん、どうするんですか。3つステップがあります。これ森山さんに考えて頂きました。第1ステップ、地面から掘ります。第2ステップ、通れるように斜めのスロープを作っていきます。そして衝撃の第3ステップ、横から壁壊します。

公民館に入りたいお爺ちゃんが車いすで苦戦しているような図画
公民館に入りたいお爺ちゃんが車いすで苦戦しているような図画

ここで分かることは、どうもこの森山さん自身が、大規模構造物の設計回りについての知識がないだけでなく、周辺に取材して事実関係の確認をするという最低限の取材さえもしていないのではないかということです。そもそも、地下補修のために構造物の地盤の上から掘り進んでいって壁を壊すような設計にしないのは当たり前で、なぜこのような説明になってしまったのか大変気になるところです。

森山:この壁がですね、建築物の壁じゃないんですよ。外れるようになっている。

羽鳥:だから、これ取ってもこの建物がガシャンっていくことはない。

森山:建物は下から杭で、柱みたいに支えていて、地下の壁と言われているとこがいわゆる擁壁、土留、土を支えている土手みたいになっている。

羽鳥:壊しやすいの?

森山:壊してもだいじょうぶ。

羽鳥:壊す前提ということも考えられる?

森山:もしかしたら。

住田:地下水の通り道にもなってしまう。

森山:事実雨水が入っている。という説明がなされていた。

省略

大団円。建設会社など関係者がみんなで「そんなわけねえだろ!」と一つになれた瞬間でした。
大団円。建設会社など関係者がみんなで「そんなわけねえだろ!」と一つになれた瞬間でした。

そして、なぜか壁が外れる、壊しても大丈夫という謎の理論に発展します。しかも「壊す前提」という推論まで出ており、そんな壊す前提の地下擁壁があると言ってしまったのか、理解に苦しむところではありますが、かなり程度の低いガセネタでも番組絵で検証なく放送をされてしまった以上は視聴者が不安になったり大きな誤解をする可能性は高いのではないでしょうか。

この問題で協力していただいている有志の建設会社の方々は、日中は普通に勤務しておいでなので森山さんの出演番組でどのような解説がなされていたのかはご存じありませんでした。今回、検証のため各番組を確認してもらったのですが「なぜテレビでこんな程度の低い報道がされてしまうのか」と、みなさん驚愕しておられました。さすがに問題となる部分は酷すぎることもあり、フジテレビの『報道2001』同様の検証番組を組まれるか、関係者にお詫びのひとつもするべきなのではないかと思います。

Twitterでも不思議な見解を図にして披露される森山さん
Twitterでも不思議な見解を図にして披露される森山さん

※テレビだけでなく、Twitterで重機搬入のために擁壁を撤去すると主張する一級建築士・森山高至さん。地下に置いてあるミニショベルもなぜか最小サイズではないショベルのイラストを使用して「ミニショベルすら地下活動できない!」と不安を煽る理由が良く分かりません。

■なぜ、問題は繰り返されるのか?

豊洲新市場ネタについては、40件以上の番組を精査し文字起こしをしているところですが、この手のガセネタは、一つの疑惑の内容が解明され、充分な反論が行われるようになると新たなガセネタに舞台を移す形で次々と問題が発覚したかのような報道の仕方に「乗っかる」形で展開されていることが分かります。

まず、8月12日、テレビ朝日系『羽鳥慎一モーニングショー』で森山高至さんが「施設そのものに対する不安(床が場内を移動する小型トラック「ターレ」の重さ1トンに耐えられるのか、海水を床に流すことを禁じるルールはどうしてなのか)」とガセネタをまず流します。

当然、豊洲新市場は構造計算上まったく問題なし。ターレー自重1トン程度では床が抜けないことぐらいはすぐに反証され、ガセネタ認定されます。後に森山高至さんと一緒に建築事務所をやっていた高野一樹さんが図面を読み間違えた構造計算を根拠に不適格の言いがかりをつけますが、これは東京都の謎の組織である新市場問題タスクフォースが何かするようです。また、そもそもHACCPという世界的な衛生基準に基づいた設備を考えている豊洲新市場は床などの洗浄に海水ではなく淡水でやる前提ですので、海水だから安全だという話もガセネタです。これも、ネットであっさり反証されて撃沈されます。

都議の音喜多さんが、築地市場の洗浄に使う濾過海水について簡易検査をされていますが、参考値ながら環境基準を超える鉛が検出されるなど、築地市場の運営にあたっても環境面の不安は絶えません。

豊洲新市場(地下たまり水)と築地市場(濾過海水)、独自調査では双方から環境基準値を超える汚染物質が検出も…?(おときた駿 16/10/15)

しかし、これで静かになるかと思いきや、9月1日、テレビ朝日系『グッド! モーニング』で建設費にいちゃもんがつきます。「990億円が2752億円の増加で森山高至氏は「高額すぎる。原因は全くわからない」と指摘するのですが、こちらも建築資材の高騰など都庁から一般的な反論が出て轟沈。それ以降、99.9%という高い落札率など一社入札の是非へと話が移りますが、そこからはガセネタを飛ばせる緩い話はなくなりトーンダウンします。

さらにその翌週、盛り土問題が噴き出すと9月12日、フジテレビ系『めざましテレビ』で今度は森山高至さんは「土を運搬するトラックは地下に入れない」「土がないということは、基礎の高さが一段下に下がっていることになり、地震のときに想定しているよりも大きく揺れる」と飛びつきます。

これも、盛り土がないので基礎が一段下がったといっても盛り土はそもそも耐震性を考えて盛るものではありません。建物の支持層である約40m下の固い岩盤に杭を打って施工している豊洲新市場が、2メートルかそこらの柔らかい盛り土のあるなしで耐震計算が上下するはずもなく、これらのガセネタも珍説として沈没させられます。その後、盛り土問題は「東京都が技術会議で空洞を置くことを議論したかどうか」「適切な報告があったかどうか」という政治問題にすり替えられて、先日岸本良一市場長など都庁幹部が更迭人事へと発展したのは記憶に新しいところです。

小池百合子知事、岸本良一市場長ら3幹部を更迭へ 「虚偽答弁繰り返した」(産経新聞 16/10/13)

同時に、9月12日のテレビ朝日『ワイドスクランブル』では、森山高至さんが「(豊洲新市場の地下には)4.5mの空間は必要ないと指摘し、工期短縮が目的だった可能性が高い」と言い始めますが、これまた豊洲新市場プロジェクトチームに入った大規模建築の大御所である佐藤尚巳さんがこの工法での地下空間を「作ったのは英知」と絶賛し、また一般のマンションなどを手掛ける設計事務所の関係者らも「タワーマンションでは配管メンテナンスやその後の補修工事を容易にする目的でピットを作るのは当たり前。豊洲では高さ2m以上の基礎梁があり、ピット高さ4.5mといえ梁下は人が通れる程度の高さしかないため、配管の取り回しなど考えれば違和感はない」と発言しています。こちらも森山さんの指摘は専門家から見てガセネタであると指摘されて爆沈してしまい、テレビでは語らなくなります。

豊洲新市場の地下空間 有識者会合で委員が絶賛「作ったのは英知」(J-CAST 16/9/29)

■加熱する報道とヨタ話の関係で

森山高至さんだけが問題発言やガセネタを流しているわけではないし、テレビ局各社も発生した事案についてきちんとした肩書で解説してくれる有識者がみつからないところで「面白おかしく解説してくれるネタ」に飛びついてしまった点はあるのでしょう。

ただ、公共工事で6,000億円オーダーのプロジェクトにおいて、もっともらしいけど調査すればすべて反論できてしまうような程度のガセネタを繰り返し流し、視聴者の間で不安感をかき立てるのはいかがなものかと感じます。問題のないレベルの耐震問題にせよ基準値以下の汚染検出にせよ、さらには1トン程度のターレーごときで床が抜けるというようなガセネタを検証なしに流すのは問題であろうと思うわけであります。

一連の発言を振り返ってみると、一般論で語れるところ以外はほぼ全部ウソというのは驚きでもあるので、もう少しきちんと検証をしたいところではありますが、これを放置している当事者、またテレビ局各社はもうちょっと事実に基づく検証された内容とは何かを問い直す必要があるのではないか、襟を正すべきところはきちんと振り返り、修正、訂正するべきところは行いながら、視聴者に誠実な放送を行うべきではないかと強く感じる次第でございます。

なお、先日記事にした内容でやはりプロジェクトチームの人選にあたって興味深い話が出てきてはいるので、こちらももう少し検証を行ってから記事にしていきたいと思います。

今後ともよろしくお願い申し上げます。

(訂正 13:13)

読者の方々よりご指摘があり、豊洲新市場下の杭の深さの記述に間違いがあり、訂正いたしました。ご指摘ありがとうございました。