情報銀行とはなんぞやという話

情報も金融も統合される世界があると便利でいいですね(写真:アフロ)

 山本一郎です。「情報銀行に預けると何か利子でもつくのか」と考えてしまう利回り重視派です。

 そんな情報銀行周りですが、ついに報じられました。中でも、先週末の日経におやと思う見出しの記事があり、ネット上でも一部のプライバシーフリークな皆さんが話題にしたりしておりました。

「情報銀行」創設へ指針 政府、通販データ管理などで(日本経済新聞 16/9/10)

政府は個人のネット通販の購買履歴や健康情報などを一括管理する「情報銀行」の仕組みをつくるため、2017年度にも企業向けの指針を策定する。有識者による検討会で9月中に議論を始める。ポイントカードなどの利用で民間企業が蓄積するデータが増えるなか、個人が情報の提供先を選べるようにして、情報の無断使用の防止にもつなげる。

出典:日本経済新聞

 で、主にプライバシーフリークな人達が気にしたのは次の箇所なのではないかと思われます。

情報銀行は個人との契約に基づきデータを販売して利益を得られる。個人は飲食店や生命保険会社といった情報提供先からポイント還元や、個々の需要にあったサービスを受けられる仕組みを想定している。

出典:日本経済新聞

 思い切り穿った見方をすれば、政府がこの方面のビジネスでお馴染みのCCCのTカードと同じような商売を始めるのかと解釈できなくもありません。や、別にそれが悪いわけではないのですが、一口に「需要にあったサービス」といっても、情報の利活用の世界からすれば「需要のありそうな個人情報とは何か?」というテーマはものすごく重要なわけでして、そこがすっ飛ばされて概要だけ独り歩きすると結構大変なんじゃないの? と思うわけでございます。

 「情報銀行」という単語がなんとも物々しいなと思いつつ簡単に調べたところ、情報銀行実現に向けて活動するインフォメーションバンクコンソーシアムという団体のウェブサイトが存在しました。

インフォメーションバンクコンソーシアム

「情報銀行」は、パーソナル情報を取り扱うHUBとなり、安全にそして安心してパーソナル情報を預け、それらを活用する試みです。

インフォメーションバンクコンソーシアムは、「情報銀行」実現のために必要な事項を検討し、その整備を推進するための組織です。

出典:http://www.information-bank.net/index.html

 サイトに掲載されいてる履歴を見るとすでに2014年から活動しているようですが、about情報ではメンバーの詳細などについても明らかにしていませんし、なにか胡散臭いと言われてもしかたないかもしれません。せめて最低限は「誰が関わっている、どんな加盟企業によるコンソーシアムなのか」というプロフィールぐらいは充実させてほしいと感じます。良いとか悪いとかではなく、その方が安心できるので。

 で、さらに遡ってウェブを検索してみると、2013年にやはり日経グループのメディアにおいて、当時は「情報銀行コンソーシアム(仮称)」として活動していた団体の中の人がインタビューを受けておりました。

パーソナル情報の安心利用へ、「情報銀行」の可能性(日経BizGate 13/10/28)

産学協同で情報銀行の実現を目指す「情報銀行コンソーシアム(仮称)」のシンポジウムが9月末に開催された。情報銀行コンソーシアムの代表である東京大学空間情報科学研究センター教授の柴崎亮介氏は、こう話す。「情報銀行が目指す未来社会の姿は、個人と企業の双方が安心してパーソナル情報を活用でき、双方にメリットがある世界だ。さらに、情報銀行が発展していけばパーソナル情報のエコシステムが創出され、日本の産業振興にも貢献できる」。そのために解決すべき法的・技術的課題や社会・経営的課題をコンソーシアムで検討していくという。

出典:http://bizgate.nikkei.co.jp/article/71475516.html

 こちらの記事にザッと目を通すと、色々と夢が広がる事業案が色々と並べられているのですが、逆に言えばそれから3年近く経った今も日経新聞の記事で触れられているのは相変わらず漠然として内容ばかりで、コンソーシアム設立時から今まで一体何を時間をかけて根回しをしていたのかと思わなくもありません。たぶん、やりたいことはいっぱいあったけど、俺たちの戦いはこれからだ的な状況のまま、構想の概要だけが先に走って行ってしまったのではないか、と推測したくなるような事態です。もう少し具体的なことを知りたいです。

 まあ、IoTだったりフィンテックだったりという具体的なテクノロジーの進化に合わせてゆるゆると焦らず地道にやってきた良い方に解釈しておくべきでしょうか。

 いずれにしても、政府主導の情報銀行が具体的に機能することになれば、今は個人情報を好き勝手に収集し放題の民間業者もすべて情報銀行を通じてしかそれにアクセスできなくなるということでしょうし、しかもその情報はみかじめ料を払って手に入れることなるという話もであります。CCCだけではなく、流通業界で広く当たり前となりつつあるポイントカードの類はすべて情報銀行の川下に位置せざるを得ませんから色々と大変そうです。当然ですが、誰が参加しているのか謎のままのインフォメーションバンクコンソーシアムにも多くの企業がメンバーとして食い込みたいと考えているでしょうし、すでにそういうメンバーで構成されているのかもしれません。

 情報銀行の諸々については今後いろいろと情報が公開されていくことになっていくと願いたいですが、まずは成り行きを見守りたいところです。もちろん、先進事例とされるエストニアの電子政府みたいなモチーフを、さらに前に向けていこう、日本人の情報をきちんと共有できるようにしようという話であれば、今回の「情報銀行もやりたいことが合致するし先進的だね」って意見も増えてくると思います。ただ、なにぶんあんまりにも情報が少ないので、なんでしょう、このもやもや感。