「abemaTV」や「ホウドウキョク」から見るネット放送のテレビ化の闇

27チャンネルもやってる『AbemaTV』のメインページ。大丈夫か。

山本一郎です。不愉快だとその場で「不愉快だ」と言ってしまうほうです。

私自身もテレビに出させていただいたり、ネット放送でレギュラーをもって好き放題しておりますが、私はネットから出てきた書き手ですし、本業は投資事業やコンサルティング、企画立案や製作委員会の組成、管理といったところですので、別に私の所得における「出演料」って微々たるものです。ここで記事を書かせていただいていること自体も趣味というか、興味本位です。なので、どうしても大人の事情はスルーしてしまうんですよね。

で、先日サイバーエージェントとテレビ朝日でやっている『AbemaTV』というネット放送の主力コンテンツのひとつ「AbemaPrime」が放送100回記念で大反省会をやるというので、呼ばれたんですよ。なんか呼ばれた当初聞かされていた話と、実際に現場で言われたことがかなり違っていて、さらにキャストも変更になってるし出演時間も変わっていたので、それなら帰ろうかと思ったぐらいです。まあ、特番みたいな感じで大変多忙で現場の皆さんも混乱していたのかもしれませんが、さすがにあそこまで仕切れてないのはビックリです。まずはその辺が大反省会ですよ。出演者減らすかコーナー削るかぐらいしたほうがいいんじゃないでしょうか。いいもの作ろうという意欲は凄く買うんですが、大八車に4トンの積み荷が載っているようなものです。私自身は畏友の中川淳一郎さんに是非にと頼まれて伺った感じだったので、あんまりにも話が違うようなら腰も痛いし出直すかなあと。ただ、もう介護ヘルパーさんは呼んじゃってるし、その時点で帰っても子供たちは寝ているだろうからしょうがないかと思って気を取り直して「AbemaPrime」に出演してみたんですけど、これがまた大変でした。

サイバーエージェント藤田晋社長、AbemaTV報道番組に愛のダメ出し...?!(Abematimes 16/8/27)

サイバーエージェント藤田晋社長、「AbemaPrimeは想定を上回る出来、期待をかなり上回っている」(Abematimes 16/8/30)

MCが小藪さんとウーマンラッシュアワーの村本さんでしたので、彼らが喋りの主力になって、番組が進むのは仕方がないことだと思います。スタッフもテレビ朝日などで活躍されている方々ですし、もはや完全に「テレビ」でした。もうテレビなんだったらくだらないことでも頑張って喋るわけですよね。置物になっても仕方がありませんから。大量のスタッフ、たくさんのカメラ、大勢のキャストで番組作りするのは素晴らしいことですね。討論会としてはグダグダでしたし、恐らく何の反省にもならず視聴者も内輪ウケに置き去りになっている人多数だったとは思いますが、私としては小籔千豊さんと村本大輔さんの掛け合いが間近で見られて満足です。

私としては、この反省会の後半に出ることを後から知らされ、前半はスタジオの片隅で客のように見物していたのですが、その中でクリティカルな情報がしれっと提示されていたのでやっぱり気になりました。それは、この『AbemaTV』の主力である「AbemaPrime」、過去100回放送して、これだけのスタッフと芸能人集めて番組やって、トップの再生数ランキングが20万回台だったことです。おい、のべ視聴の総数が、一放送当たり20万回あまりってどういうことだ。ほとんど観られていないってことじゃないですか。

フジテレビ系ネット放送ホウドウキョクの場合、私は「真夜中のニャーゴ」に出させていただいていますが、ネット放送のスタイルとしてどうしてもニッチが対象になるので、そのニッチがしっかり喜んでいただけるような構成にし、そこからビジネスをどう動かすか、という流れにする作戦であることは肌で感じます。

ニッチでコアだけど、しっかりと客層を見切って、広告を出したりご一緒できる先を探そうということで、ネット放送とスポンサーの考え方の変更は、テレビからネット放送になった瞬間から考えなければならないわけですよ。だって、視聴者の絶対数は、現段階では逆立ちしたってテレビに敵わないし、そこに広告を出したところで効果がどれだけあるのかって言われたら「ごめんなさい」するしかないじゃないですか。

よく考えたら、今日火曜夜は私は出演日ですね。すっかり忘れていた。

ホウドウキョク「真夜中のニャーゴ」

「真夜中のニャーゴ」内に4Gamer提供のミニコーナーが登場。その名も……

「なぜ出演者である私がスポンサーを探しているのだ」とか「男色ディーノと山本一郎がなぜミニコーナーのインフォマーシャルに」などいう宇宙の起源にかかわる難問は置くとして、結局、ビジネスとしてネット放送に取り組む以上、誰をターゲットにして、何を伝える番組を、どうネット放送で実現していくかという考え方は、本来スタッフから出演者まである程度握ってなければいけないはずです。ところが、どうも「AbemaPrime」にはしっかりと根付いていなかったようです。途中、C Channelのやまざきひとみ女史や、宮澤エマ女史が「誰にウケるか」について論じておられました。そこから議論するのかよ。恐らくは、番組としてきちんとキャストに「この番組はこういう趣旨です」とは伝えても「このターゲットにこう伝える番組です」とは仕込み切れておらず、キャストももやっととしかネット放送のことを考えさせてもらっていないから反省しようにも「誰にこの番組を届けようとしているんだっけ?」という根本のところから議論をしなければならない状況になっておるわけです。「若い女の子にこの番組をどうみせるか?」なんて話をするんだったら、そこに板東英二さん境治さん中川淳一郎さんそして私って並びはあり得ないっすよ。

この辺はもはや武士の情けの話かもしれませんが、広告業界では『AbemaTV』はまさか「AbemaPrime」が視聴カウント数がのべ20万回しかないとは知らせずに、ただただAbemaTVのアプリが700万ダウンロードを突破していることしか伝えていません。そうであるならば、あれだけの番組数がバラバラに客を掴んでいたとしても、アプリ全体での広告以外はなかなか取れないんじゃないでしょうか。『AbemaTV』で一番みられている(はずの)番組である「AbemaPrime」以下しか他の番組が視聴者を確保できていなかったとするならば、それは「どんなに藤田晋社長が『これは面白い』といったところで金が続かずいつかは縮小せざるを得なくなるだろう」と思います。

そんで、これは壮大な実験なのだ、配牌はクソいけど国士無双狙ってツモり続けるのだという大博打だとするならば、まあ分かります。何より、サイバーエージェントの藤田晋さんという人は、真の意味で豪運を持つ男なので、どんなに途方もないトライでもきっとどこかに着地するんだろうとは思います。奴ならやってくれる。私らのような現実を見ながら手堅い投資を狙うタイプよりは、この手の事業に大きく夢を見て手金をドーンと張りに行くスタイルは藤田さんしかできないでしょうからね。まあ、本当に凄いんだろうけど、別の意味で凄ぇことしてんなあ(鉱脈のなさそうなところへ鉱夫が大量に投入されているという意味で)とかなり本気で思いました。

まあ、一口に言えば「派手な世界で豪華絢爛面白くていいですね、でもいまのところ金の匂いがしないですが大丈夫ですか」という結論をAbemaPrimeに一回だけ出させていただいた感想としてヤフーニュースに書いておきます。この調子で『AbemaTV』はごっそり動画客やアニヲタを奪って『ニコニコ動画』を壊滅させていっていただきたいと心から願う次第です。

ところで、8月9日のメールで『AbemaTV』の方に「具体的なテーマやギャラなどお聞かせいただければ幸いです」と訊いていたのですが、ギャラのところだけスルーされて、現在もなお、お返事がありません。ひょっとして、タダ働き(タクシーチケットとペットボトルの水を除く)させられてしまったのでしょうか。六本木のけやき坂スタジオ前に抗議の座り込みをする前に、ぜひご教示いただければと思うとともに、今後も『AbemaTV』の大発展と大炎上を期待しております。今後ともよろしくお願い申し上げます。