「ポケモンGO」以降のゲーム市場とゲーム環境を考える

突然降って湧いた「ポケモンGO」現象。みんな楽しめてるのは良いことです(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 山本一郎です。ポケモンGOは初日にダウンロードして「こりゃハマったら死ぬ」と思いつつ、あっという間に飽きてアンインストールした者です。

 で、当初予想した以上に「ポケモンGO」を巡る騒ぎが大変なことになっています。

「周りにもけがさせる」 総務省と消費者庁が「ながらポケモンGO」に注意喚起 事故の危険性高いと判断(産経ニュース 16/7/27)

総務省と消費者庁は27日、スマートフォン用人気ゲーム「ポケモンGO」について、徒歩や自転車に乗りながら遊ぶ「ながらスマホ」を中心に注意喚起する文書を公表した。両省庁は事故が起きる危険性が高いと判断、注意喚起した。

出典:産経ニュース

 確かに街中を歩いていても、これまでであれば歩きスマホのようなことはまずしていなかったと覚しき人々がじっとスマホをのぞき込みながらふらふらと徘徊している光景を目にすることが増えました。こうした事象が一時的なブームで終わるのかどうかはまだよく分かりませんが、ポケモンGOが社会に対してそれなりの大きなインパクトをもたらしたことは確かです。

 さて、ポケモンGOがもたらした社会的なインパクトに関してはテレビでもネットでもご意見番的な方々が熱く議論を繰り広げているようなのでそれはそちらにお任せして、ここではゲーム市場的にどうなのかを適当に考えてみたいと思います。

 まず、こんな論考がありました。

ポケモンGOでは「死なない」日本のソシャゲ1兆円市場(Forbes 16/7/27)

配信開始後、初めての週末を終えた7月25日時点のデータでは、「パズドラ」や「モンスト」といった大手の売上にはほとんど影響が出ていません。私は、ポケモンGOは既存のゲームとは全く違った客層を獲得したと見ています。

出典:Forbes

 なるほど。逆に考えれば、ポケモンGOはガチャに大金を投じてくれるソシャゲの上客を奪うことには今のところあまり成功していないという解釈もできそうです。で、面白いのは次の部分です。

ポケモンGOは全く新しいゲームとして、これまで既存のソーシャルゲームを一切触れたことが無かった層を掘り起こします。それらのユーザーが既存のソーシャルゲームに流入するといった事態も想定できます。

出典:Forbes

 つまり、これまで課金に縁の無かったユーザーがポケモンGOを入口にしていずれ課金地獄へずぶずぶとはまりこむきっかけになるかもしれないわけですね。なかなか怖い話ですが、少なくともポケモンGOがきっかけでスマホの新規購入や機種更新を行ったユーザーは少なくないと考えられる市場データも出ています。

ポケモン効果でスマホの販売台数が倍増(PC Watch 16/7/26)

2016年6月4日(土曜日)の販売台数を100とした場合、7月24日(日曜日)の販売指数は198.8と約2倍となり、過去2カ月で最も販売台数が多くなった。

 とくにAndroid搭載スマートフォンは、232.8と高い販売指数を記録。iPhoneは163.6とAndroid搭載スマートフォンに比べると伸び率は低いが、それでも過去2カ月で最も販売台数が多かった。

出典:PC Watch

 ポケモンGOで遊びたい場合、Androidのバージョンが4.4以上でないと非対応なのですが、日本で販売された古いAndroid端末は4.4へアップグレードできない機種が多いため、端末の買い替え需要が起きるのではないかという観測が一部であったのですが、その見込みがまさに当たったというところでしょう。さらにガラケーしか持ってなかった人がポケモン目当てでスマホを買ったという事例も少なくないと思われます。

 結果として、多くの人々がポケモンGOやりたさにスマホに手を出したという事象があるわけですが、この事実は多くの人々がスマホという「新しいゲーム端末」を手に入れたという形にも解釈もできます。もしかしたらこれまで一度もゲーム機を所有したことがないような人までが自分専用のゲーム機を手にした状態ということです。生まれて初めて自分専用のゲーム機を持ったということになると、そのハマリ方もちょっと尋常じゃない熱中状態になる可能性は十分にありそうでして、それが今の過剰なまでの社会的な現象につながっているのかもしれません。

 ポケモンGOの登場がスマホのゲーム機としてのデフォルトプラットフォーム化をさらに推し進めることになるのは間違いないでしょう。こういう状況でゲーム専用の携帯端末を新規開発・販売するという計画はどうなんでしょうか。

任天堂の新ゲーム機「NX」、テレビ接続可能な携帯型か(CNET Japan 17/7/27)

 もしかしたら任天堂は自社IPを貸し出したスマホゲームの成功によって自らの首を締めたことになるのかもしれないですね。ポケモンGOに対しての批判的なメディアの論考から逆手に考えれば、「岩田イズム」を継承した「母親を敵に回さない」製品とすることに注力すればまだ生き残る道はあるのでしょうか。

ポケモンGOに見た、「岩田イズム」の継承と希薄化(ITpro 17/2/27)

岩田氏が11年前に打ち出した、「母親を敵に回さない」というコンセプト。ではポケモンGOはどうか。確かにユーザーを一瞬にして虜にする魅力を備えてはいる。だがユーザーの向こうにいる、母親などの周囲の人は、開発者の視界に入っていただろうか。残念ながら記者には、そこまでの配慮は感じられなかった。

出典:ITpro

 とりあえず、ゲーム業界の中の人はポケモンGOが飽きられた後に何があるのかを考えれば美味しい商売があるのかもしれないですね。

 ポケモンGOが押し広げたかもしれないスマホプレイヤーの「ライト層」市場が、今後はいろんな交通事故を起こしたり、立ち入ってはいけないところへポケモンを追ったりしながら、徐々に冷静になって、一定の枠内に収まっていくことでしょう。その土煙が静まったところで、スマートフォン界隈がどんな地殻変動をしているのか予想するのも面白いんじゃないかと思います。