ソフトバンク、ニケッシュ=アローラ副社長が電撃退任

米携帯事業スプリントの経営改善にコミットしたはずのアローラ副社長が退任の模様です(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

山本一郎です。フサフサです。

ところで、ソフトバンクの創業者、孫正義さんの後継者と目されていた、ニケッシュ=アローラ副社長が退任することが発表されました。

ソフトバンク、アローラ副社長が退任 孫氏が社長継続(日本経済新聞 15/6/21)

ここのところ、孫さんとアローラさんの間でソフトバンクグループの経営の芳香性もとい方向性を巡り大きな隔たりがあるのではないかという話は投資家筋に出ている話でしたので、早晩、アローラさんの解雇に近い解任の可能性は重ねて示唆されてきましたが、案の定といった展開です。

アローラさんに関しては、ソフトバンクグループの財務状態のさらなる強化、健全化のために、売却可能な資産の処分を急ぐ一方、アメリカでの携帯電話事業で足がかりとしていたスプリントの経営再建を急ぐ考えで、そのためには手広く投資を重ねてきたソフトバンクの投資手法について副社長就任前からきわめて批判的な言動が目立っていました。

とりわけ、ヤフージャパンについては、「ドメスティックで儲かっている事業だとしても、ICT産業として世界で見渡したときに秀でているものは何もない」「子供の砂場にも等しい若い経営者が、将来性も考えずに好き勝手やっているだけで、まったく魅力を感じない」として強い批判を繰り返し、一時期はヤフージャパンの経営者については現社長の宮坂学さん以外は全員異動させることも検討していると伝えられていました。

そのアローラさんを事実上のソフトバンクの経営後継者と位置づけ、大規模なソフトバンク株式を持たせたり、元職であるGoogleからアローラさんに近しい人材のハントや外部コンサルとしての起用も念頭に置く一方、孫正義さん自らが後継者を探すための「ソフトバンク アカデミア」を事実上手仕舞いするなど、孫さんなりにアローラさんを後継者にするための下地作りを続けてきていたはずです。

おりしも、アローラさんについては様々な憶測も含めてソフトバンクの経営の方向性に関する話題が取り沙汰されてきた一面もあります。

ソフトバンク、副社長の巨額自社株買いめぐり株価操作の疑惑 当局が内偵調査か(ビジネスジャーナル 15/10/19)

ソフトバンクの危機…売上高を上回る巨額借金、孫社長とアローラの対立懸念も(ビジネスジャーナル 16/1/6)

ソフトバンク株主がアローラ氏の内部調査要求、適性を疑問視(bloomberg 16/4/21)

SoftBank Board Finds No Merit to Investor Criticism of Company President(bloomberg 16/6/20)

ソフトバンク経営陣に亀裂鮮明!次期社長候補アローラ氏が孫社長を「素人扱い」で痛烈批判(ビジネスジャーナル 16/6/21)

要は、孫正義さんの投資手法について批判的なアローラさんは「回収のめどのない投資は行うべきではない」というスタンスであり、ガンホーやスーパーセルといったゲーム事業など非中核事業からのキャッシュ吸い上げは積極的に行い、アリババ株式の売却もふくめ、保有証券や事業の売却、資本コストの低い調達を行って膨大な負債の圧縮を早期に実施しながら経営の健全化を図ってグループの目的に沿った投資を進めていくつもりでした。

その結果が、投資筋に対するアローラさんのある意味で容赦ないソフトバンク批判、孫正義批判であって、ものによってはソフトバンクの投資手法は孫正義の感性、すなわち"his own hobby"(趣味やがな)という結論になるわけで、そんな人を後継者として副社長に長く置いておくわけにはいかないと孫さんは考えたのかもしれません。ただ、アローラさんは孫さんの投資手腕そのものに深い疑義を持っていたと投資家筋は耳にしており、近い将来「孫さんの博打的な投資事業について、問題となる部分をアメリカSECに物証やガイダンスつきでアローラさんが告発する可能性があるかもしれない」という向きも強いわけであります。

個人的には、孫さんも大変な傑物ですし、アローラさんも考えを曲げるつもりはないでしょうから、お互いにこれ以上深入りする前に決別する判断ができたというのはむしろ良いことではないかと感じます。懸案となっているヤフージャパン株も、孫・アローラ間の路線対立に巻き込まれることはなくなるでしょうし、いわくつきのアリババ株式についてもこれでフリーハンドに扱いを考えることができるようになったのは大きいです。

願わくば、"long shot"な太陽光事業など、孫さんが変に冒険的な投資に埋没することなくみずほ方面に迷惑がかからないような落着で進んでいってほしいところです。