「降りない都知事」の働かせ方

険しい表情で都議会の質疑に臨む舛添要一都知事(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

山本一郎です。舛添要一さんほどセコくはないけど、どちらかというと倹約家です。

ところで、13日も都議会ではすったもんだが繰り広げられ、これといって進展もないのにメディアではトップニュースとして伝えられています。

自民党に広がる危機感… 公明党幹部が辞任求める(産経新聞 16/6/13)

「東京は本当に難しい選挙だ。悪い風も吹いている…」。自民党東京都連会長の石原伸晃経済再生担当相は13日、参院選東京選挙区の立候補予定者の集会で、舛添氏の疑惑を念頭にこう語った。

実際に、舛添さんを都知事選挙で推した自由民主党、公明党両党も悩みが深いところでしょう。ただ、都連会長の石原伸晃さんが出てきて喋るというのは石原慎太郎元都知事時代の話はどうだったのかとか、彼が都知事の椅子を狙おうとしてマッチポンプを仕掛けているのではないかとか、次の都知事人選に介入して森喜朗さんの影響力を排除してキングメーカーになりたいのだろうかなどという「あらぬ疑い」をかけられてしまうわけでして、公にお話をされるにあたってはもう少し慎重にされたほうが良いのではないかと愚考する次第であります。

かくいう私も、舛添要一さんの都知事留任には反対です。問題を認めて、さっさと辞めていただきたい。この一連の問題ですったもんだしている間も都議会は事実上空転し、東京五輪関連の議論は進まず、東京都が抱える少子化や高齢化対策、耐震化、バリアフリー、電源問題といった諸問題が放置されたままです。何より、私が舛添さん不支持なのは、経費をごまかした問題よりも、東京都の各市区町村を巡察していた経費は計上していたのに、実際には都庁から動かず東京の抱える問題に直面している各自治体廻りさえもきちんとしてなかったと見られるからです。ケチでも真面目に都政に取り組んでいてもらえれば、経費のごまかしは問題視しつつも首を取るまででもないと割り切っていたかもしれませんが、実は働いていなかったとなると問題じゃないのかと思うわけであります。

また、都議会側の追及が甘いのも気になります。もちろん、都知事選で勝てると思って舛添さんを担いだ自民公明両党が「お前が言うな」と批判に晒されることを恐れて強く辞任勧告、辞任要求しづらいという理屈も人情も分かります。しかしながら、誰と会ったのか分かったところで違法性を問い切れない問題に終始し、死人に口なし状態の出版社元社長の話を幾らつついたところで辞任に直結するような言質はなかなか出てきません。

本人が「死んでも死に切れない」とまで言い募る本件において、いろんな理由にならない理由を並べ、都知事の椅子にしがみついて自ら辞さない限りにおいては、それこそ違法性を正面から問えるような事案が出てこないと、任期満了まで舛添さんは都知事であり続けると思います。都民もメディアも、ここまでさんざん舛添さんを叩いておいて、詰め切れずにしぶとい舛添さんが都知事に残られると、振り上げた拳の降ろしどころが無くなります。これは、都政にとっても不運なことで、それに受益する都民がもっとも不利益を蒙ることになるわけであります。

なので、舛添さんが9月になっても降りないぞということであれば、これはもう舛添さんの人間性も吝嗇も受け入れて、都民のために都知事として本当に働いてもらわなければならないことになります。現状で、都政が取り組まなければならないことは多岐に渡り、それもかなり待ったなしの対策が求められるものばかりです。

先日、土居丈朗さんが東京都の「地域医療構想」について論じられ、また、舛添騒動前に駒崎弘樹さんがすぐにでも取り組める待機児童対策についても説明しておられます。東京都の職員も組織も、東京が当面取り組まなければならないことをしっかり準備していると思われます。

舛添騒動の影響は大丈夫?「地域医療構想」都民の健康を守る医療提供体制はどうなる(東洋経済 16/6/13)

舛添東京都知事が3分でできる、効果的な待機児童対策はこれだ!(駒崎弘樹ブログ 16/4/9)

どうせ求心力を失ってレームダックを起こしている舛添さんを都知事に掲げて降ろせない以上は、都民としてはそういう人物を都知事に選んでしまった事実としっかり向き合いながら、舛添さんに働いてもらうため、もう少し東京都の抱える問題について知り、都知事や都議会、都庁の動きも見た上で判断していくきっかけができれば良いのではないかと思うわけであります。地方政治の投票率も低くあり続けたのは、ある意味で、地方議会や首長、知事に国民が無関心を装うことでフリーハンドを与え続けてきてしまったのではないか、誰も見ていないのであれば多少経費がごまかされても息子の芸術活動に億単位の銭が突っ込まれても千億の銀行作って855億の損失出して撤退しても大丈夫だろうと甘えられてしまったのかもしれません。

折りしも、この日本全体の経済先行きが怪しく、少子高齢化が社会保障費を膨らませていくであろうことが確定している中で、多額の金を使って東京五輪が2020年に行われる予定です。これだって、メディアを通じて知る東京五輪の筋の悪さや金使いすぎ問題は頭を抱えるべき問題でしょう。東京五輪やるぐらいなら、保育園たくさん建てたり、耐震化、火災に強い都市作りをしたり、貧乏な高齢者に効果的な公共サービスを与えられる仕組みを用意したりと使うべき予算はたくさんあったはずなんですけどね。

そういう問題に直面する東京都にあって、舛添さん降ろして次にまともな人が当選するのか、解決能力のある人がいるのかという懸念はやはり残ります。選挙に勝てるかどうかで能力を問わずに選挙をした結果、石原さん以降椅子に座ったのが猪瀬直樹さんであり舛添要一さんなわけです。この二人がとてつもなく駄目なのは仕方ないとして、次も良い人が来るという保証はどこにもないわけです。そうなると、都議会が追及しきれずに舛添さんが都知事を降りないのであれば、次善の策として都民が都の抱える問題をきちんと見据えて、都知事にしっかり注文をつけ、監視し、働いてもらえるように仕向けるしか方法がないのではないかと感じます。

おそらくは、一連の舛添都知事の問題で一番教訓を得たのは舛添さんでも自民公明両党でもなく、都民であるべきです。あんなの都知事にして、都民はおかしいよね、というのは実に恥ずかしいし、悩ましい。これはもう、しょうがないんですけれども、もうちょっと都政に関心を持ち、身近な地域の問題を自分ごととして捉えて要望をして、監視していくしかないのだろうと思うわけであります。でも、きっといったんバッシングの嵐が去ると、またいろんな不始末やらかすんだろうなあと思うと、気持ちが暗くなります。さて、どうしたもんでしょう。