爆裂! 広島県&市サッカースタジアム建設の変その1「その土壌汚染は大丈夫か」

サッカースタジアムの芝生を鑑賞するサッカーファンの皆さん(写真:アフロ)

山本一郎です。東京生まれ東京育ちの千代田区民です。

これから広島のことを書くわけなんですが、お前は東京都民だろ、あの変な都知事は何なんだ、あれを棚に上げて広島の問題を取り上げるのはおかしいだろうと言われるかもしれません。仰るとおりです。大変お騒がせしております舛添要一さんに関しては、一都民として本当に申し訳なく思っております。心よりお詫び申し上げます。

舛添知事VS阿部悦子リポーター直球勝負「やめる気あるの?」(フジテレビ とくダネ!web 16/6/7)

冒頭に存分に謝罪したところで本題ですが、表題広島県と広島市による、不可解なサッカースタジアム建設問題はかなり大変なことになっています。

私個人のテーマとしては、「広島市民球場跡地にサッカースタジアムを建設するべきかどうかは、広島市民が然るべき手順に則って決めるべき」と思っています。広島市民が球場跡地にサッカースタジアムなんざ要らんだろ、というのも筋論ですし、ぜひ広島市にお住まいの方は、一連の問題について知っていただきたいと思うわけです。

一方で、宇品みなと公園案というのは、サッカースタジアム建設の是非以前に、どうしようもない地方行政の現実が凝縮されています。ある種の悲哀です。無能そうな市長、人事権を握られ正論が通せない市職員、フリーズするマスコミ、暗躍しようとして粗相を繰り返す有力地方議員、何も進まない行政、滞る都市経営、置いてけぼりとなる市民… 現在の松井一実広島市長からして「横浜に自宅があって、広島に家も持っていない」「広島に愛着がない」(市職員)という首長が、長期的視点に立って広島市の市民のために都市の設計をし、将来を見据えることなどできるはずもないのかなと外野からは感じます。

サッカースタジアム建設問題とは、すでに既報のとおり、広島が擁するJリーグ強豪チームであるサンフレッチェ広島が利用するメインスタジアムの利便性が低く、老朽化してしまって、代替地を探さなければならないのではないか、というところに端を発しています。関係者が頑張って、地元広島市民も応援して強いチームになったのに、老朽化した遠いスタジアムで試合をし続けるのは限界だ、というのは分からないわけでもありません。

本来なら、代替地も含めてすんなり決まるべきところが、ぐだぐだと数年以上かけて問題が燻り続けているわけですから、これはさすがに気になるだろうという話です。

私も、フジテレビ系ネット放送ホウドウキョク『真夜中のニャーゴ』でも2度、この問題を取り上げていますが、いまや官邸や国交省、経産省、中国財務局といった広島だけの問題ではなくなり始めていて凄く素敵です。

ホウドウキョク

http://www.houdoukyoku.jp/pc/archive/

ファンを置き去りにした、広島サッカースタジアム移転議論の内幕(ダイヤモンドオンライン 16/3/28)

目を疑うほど、お粗末な会議体。広島にサッカースタジアムが建設されないのはなぜなのか?【後編】 #sanfrecce #jleague(スポーツマーケティングナレッジ 15/12/4)

広島のサッカースタジアム構想

結論から先に申しますと、そもそも広島県、広島市、広島商工会議所が進めようとしている港湾部・宇品みなと公園でのサッカースタジアム建設はほぼ不可能です。

この問題を考えるにあたっては、一回の記事では語り尽くせないほどの面白エピソードが満載で、広島という地域の抱える特殊性と、地方都市が抱える悲劇とが混在していることが良く分かります。

したがって、本件についてはいくつかの記事に分割して、問題の核心に迫りたいと思います。

その1 その土壌汚染は大丈夫か(導入篇)

その2 玉砕! 湯崎知事大名行列が霞ヶ関突入

その3 意味不明な地方議会ボスとおかしな菓子博

その4 なぜ広島マスコミが問題視できなかったか

その5 本当はスタジアム建設する気ないんじゃないの?

その6 華麗なる広島市政無理筋の歴史(資料篇)

今回は第一回目、宇品地区の埋め立ての秘密に迫ります。

現在は、スタジアム建設候補地がなぜか「広島球場跡地案」と「宇品みなと公園案」の2つに絞られて現在に至ります。ところが、ご存知のとおり宇品みなと公園案は実に問題ある内容で、通常であれば真っ先に却下されるべき建設候補先であることが分かります。

その理由のひとつは、1992年に埋め立てられて建設された宇品みなと公園自体の問題です。すでに現在の環境基準を超える土壌汚染があることが確定のしているからです。もともと、宇品周辺の地域は、明治時代から埋め立てが行われてきた古い人工地であり、漁業や養殖業だけでなく、港湾、荷役と、周辺の鉱工業窯業といった、戦前からの広島の産業集積の拠点でもありました。

しかも、この土壌汚染がある事実を、広島県も広島市も知っています。複数の広島県議の現役およびOBに取材を行い事情を聞いていますが、お話を伺った議員やOBは全員土壌汚染の問題があることはご存知で、県議会でもすでに議論になっているところです。

また、1992年の埋め立て時に、広島県港湾事務所は土壌汚染の内容について、広島県および広島市双方に対して、詳細を伝達しています。

なぜこのような汚染土壌のある地域がそのまま埋め立てられたのか。1992年当時の環境基準では、この濃度のPCB汚染は許容され、埋め立ての許可が出ていたからだといいます。さらに、申請が行われた1992年11月8日の建設省(当時)の公有水面埋立法(埋立法)の審理においては、道路交通局都市交通部からの申請に基づき、広島市が運用を予定していた海洋上交通の第三セクターの利活用に伴う埋立が事由となっており、その埋立地の利活用については広島市の所有とし、94年中に第三セクター運用会社の設立を行うと記されています。その過程で、建設省から広島港湾整備計画の準備書面が承認され、建設にかかる助成金が出て港湾施設の建設と埋め立て計画が一部一体となって進められていきます(これは次回以降の記事で詳述します)。

その後、バブル経済の崩壊と第三セクターの深刻な経営状態で危機に陥る企業が全国に相次ぎ、広島県と広島市が実施しようとした海洋交通の計画も有耶無耶になり中断したような形になりますが、埋立事業だけは継続され、その一部埋立地域は現在の宇品にある広島みなと公園になっています。

また、宇品周辺は宅地造成され、中層住宅の建設にあたっては一部フッ素が検出されるなど弊害の出た地域は土壌の入れ替えを行い、宅地とするに問題のないレベルにまで問題となる物質を除去し、戸建てやマンションが建設されているのが現状です。もちろん、宅地造成において問題土壌が入れ替えられていれば障害はありません。しかしながら、スタジアム建設のような大規模建設を行うとなると、表土を削り取りました問題ありませんとはならない、というのが重要なポイントであろうかと思います。

そのころのご担当職員も関係者もすべて資料に実名が書いてあり、またこれらの埋立において実施企業から特定の地方議員に対して「形のある御礼」をされているようですが、それは本件とは直接関係のない話として措くとします。

で、1992年以降に実施された、現在南区出島にあたる埋立予定地海底のサンプル土壌での環境予備調査の結果は惨憺たるもので、内容としては次のようなものです。この埋立予定地については、厳密にこのサッカースタジアム建設の宇品案となる地点の海底のものかは分からないのですが、予備調査の結果、汚染土壌の内容が確認されていることが分かります。

汚染の内容からしますと、昭和初期からこの付近にあった紡績、鋳物(一部めっき含む)、鋳鉄などの工場から出たフッ素を含む廃液が海底に堆積しているものと見られます。90年代以降、埋立が進められると同時に周辺海域の浄化が進み、現在ではこれらの汚染由来で一般に生活する分には健康被害などが出る危険はほとんどなくなったとされます。

当時の調査結果なので、書式が現在のものと大きく異なることや、調査方法についての解説が添付されていませんが、広島市役所や建設事業者など複数のルートから入手した調査結果がまったく同じものでしたので、おそらくは真正であろうと思われる内容は以下のようなものです。

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フッ素0.4mg/1l 銅0.017mg/1l 亜鉛0.01mg/1l

また、成分試験でpcbが0.06mg/1l

さらにフッ素及びその化合物等、微量の六価クロム及びその化合物等、カドミウム等、砒素及びその化合物等、重金属類が検出

埋立事業実施に当たっては、追加調査を要する

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本来であれば、これらの海底の土壌汚染が判明した段階で、埋立工事は一時中断し、当時の埋立予定地であるおよそ1,600平方メートルの海底を、たとえば30メートルメッシュ(格子状、方眼紙のようなもの)でのボーリング調査を行わなければなりません。

当然のことながら、それなりの費用はかかりますし、もしもスタジアムのような大型の建設計画を推進する場合には、汚染を除去するために建設費に20億円以上の上乗せをしない限り、本格着工は進められないでしょう。

ところが、本件について広島県港湾事務所に問い合わせたところ、この問題となるサンプル土壌を保存しておらず、汚染が確認された近辺をボーリング調査して最終的な確認を行わないまま、宇品地域の埋立を強行してしまっていた模様です。

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私からの質問:

この土壌調査において、

フッ素0.4mg/1l 銅0.017mg/1l 亜鉛0.01mg/1l

また、成分試験でpcbが0.06mg/1l、さらに微量の六価クロムなど重金属類が検出

されたという結果表が、県および市、市議会に提出されています。当時はPCBの環境基準が緩かったこともあり問題視されずそのまま埋め立てが着工されていますが、その後、これらの土壌汚染についての追加調査や、汚染対策事業などは実施されていますでしょうか。

広島港湾振興事務所の回答:

埋立開始時において,埋立計画地における調査を,海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律施行令第5条第1項等に基づき実施しており,基準は満足しております。

なお,当事務所でサンプルとなる埋立土砂は,確保しておりません。

埋立開始時における調査において基準を満足しており,追加調査や汚染対策事業は実施しておりません。

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港湾事務所の名誉のために言うならば、確かに「92年当時の基準はクリアしているため、追加調査をしていない」ことに対して法的な問題はありません。「サンプルがない」のはどうなのと思いますが。

ただし、これは「埋立時に係る”海洋汚染法”上の92年当時の基準をクリア」しているから問題ないのであって、この検出結果は、今後検討されるサッカースタジアム建設において「現在の”土壌汚染対策法”や”ダイオキシン類対策特別措置法”の基準には明らかに抵触する」ことになります。

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私からの質問:

これらの地域での建設について、問題となる汚染物質の情報を事前に知っていたにもかかわらず、建設計画には汚泥や汚染物質の除去に関する費用について計上しない理由は何でしょうか。

広島県の回答:

汚染の実態調査が行われておらず、埋め立て時に汚染があったとしても建設計画の障害となる汚染状況の解消について概算を出せる状況になかったからです。

私からの質問:

それだと、汚染はあるけど内容は確認できない、確認するための調査はしていないので建設計画に汚染除去の予算を組み入れないという話になります。ですが、常識的に大規模建設計画を立てるにあたって、環境アセスメントは一番最初に考慮するべきところではないでしょうか。

広島県の回答:

あくまで検討会(やまもと註:広島県、広島商工会議所、県サッカー協会の4者で設置したサッカースタジアム検討協議会のこと)での叩き台として建設費用の概算を求めたまでで、詳細の建設費用については検討会が出した概ねの結論をまってから精査する予定です。

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汚染対策費がどのくらいかかるかが分からないまま、建設予定地の選定を行って、後から「いや、実はフッ素もPCBも総クロムも出ました」となれば、建設計画そのものがスタックするわけです。このカラクリに関しては次回以降の記事で後述します。

で、この問題のスタジアム建設地は南区出島にあり、広島県の所有地になっています。ここへ、3万人規模の観客が入るサッカースタジアムを建設する場合、当然のことながらこの問題となる土壌層をぶち破って、体積土壌の下にある地中岩盤まで杭を打ち込む基礎工事を行うためのボーリング調査を行うことになります。一般的な大規模建造物を建設する場合当たり前の建設工程であるだけでなく、問題となるこの宇品の県有地は、その一部において地上に重量のある建造物がそれほどないにも関わらず海抜が年間推定で0.4から0.6センチメートル沈んでいると予測されます。埋立地が沈むことそのものは仕方がないのですが、なおのこと建設するための土台をかなりしっかりと工事しなければなりません。

そうしますと、ほぼ確実に92年当時調査した内容と同様の汚染土壌が出てくることになります。いますぐにでも、ボーリングで予備的な調査を行えば、これらの汚染状況についてはかなり明確に出てきてしまうのではないかと思いますが、どちらにせよ、スタジアム建設のための基礎工事をする前に、これらのPCBや六価クロムなどの汚染土壌が海洋に流出しないようなバリア工事をしなければなりません。

この問題について、海洋汚染に詳しい建設省(当時)の担当技官は、次のように証言をされています。

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質問:

埋立時点での海底調査でこれらの汚染物質が検出されたとき、埋立工事を行うことは許可されるのでしょうか。

回答:

ご質問の広島のケースも含みますが,当時の海洋汚染法等での環境基準を満たしているものの重金属等の検出があった場合は,周辺のポイントの調査を求めることになります。

しかし法律上の基準は満たしておりますので,あくまで要請です。

質問:

その過去の基準の汚染が残った状態で埋め立てられた土地に、大規模施設が建設される際は、現在の法律の基準が適用されることになりますでしょうか。

回答:

時期的なものもありますが,そもそも海洋汚染法等で定められた当時の基準を満たして埋め立てられた土地を開発する場合は,異なる別の現状の法律(やまもと註:土壌汚染対策法など)が適用されます。

よって,建設前の環境アセスメント等で汚染土壌が確認された場合には,その内容に見合った対策が行われない限り建設許可が出ることはありません。

質問:

当時、水深約13メートルほどの海底(やまもと註:資料によって水深は異なる)に汚染物質があり、この上が埋め立てられて造成された土地に大規模建造物を建設するとき、一般的なボーリング調査で汚染土壌が検出されればこれの改修や対策がなされない限り環境面の問題から建設の許可は出ないという理解でよろしいでしょうか。

回答:

例外なくそのような判断になると思います。

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さて、宇品の広島みなと公園案のサッカースタジアムの建設計画を改めてみてみましょう。

…なぜか、宇品みなと公園案は、広島球場跡地案にはないMICEまで建設予定になっていますね。

本来ならば、サッカースタジアム建設にかかる計画の審議を行うのであれば、同じ条件、すなわちサッカースタジアム単体の建設費と収支計画で優劣を競う必要があります。

このあたりは、まさに「違法ではないが不適切」の言葉ががっちり当てはまりそうな事情があったようです。その詳細は次号にて、乞うご期待。