ネットでの商用コンテンツ視聴が普及すればするほどグローバルなサービスは面倒になるようです

素材検索で「放送」って入れたら、こんな画像が出てきたんですけど青春ぽくて不快です(写真:アフロ)

 山本一郎です。名前は簡単ですが、中身は複雑で面倒だと思われがちです。濡れ衣です。

 ところで、昔はネット経由で映画や音楽などの商業作品がそのままデータで正規流通することになるなどとは思いもよらなかったものです。そんなこと出来るのはせいぜいがSFの中だけでした。しかし、今は普通にポチっとボタンを押せばそのままデータが配信されてすぐに視聴が可能な時代となりました。技術の進歩とは恐ろしいものですね。

 こうしたネット時代ならではのメリットとしては、本来であればどこの国の作品でも発表されれば世界中同じタイミングで楽しめるのが本来のあり方だと思います。しかし、現実にはなかなかそうはいかないというか、世界的にサービスが成功すればするほど縛りが厳しくなるようです。

Netflix、グローバル展開に合わせ、プロキシ経由のアクセスを制限(AV Watch 16/1/18)

Netflixは1月のCESにおいて、新たに130カ国でのサービス開始を発表し、世界190ヵ国展開とした。それにあわせて、地域ごとの配信可否を、より厳格にコントロールすることとした。Netflixは「コンテンツの配信許可を地域ごとに取得するという慣習があり、現状では配信している映画やドラマは地域ごとに多少異なる。当面は地域ごとにコンテンツの配信許可を取得するという慣習を尊重し、これを引き続き遵守していく」と説明している。

出典:AV Watch

 まあ、コンテンツ配信の世界はそういう法体系や商慣習ですからね。

 同社のサービスはこれまでも建前上は地域ごとに視聴できるコンテンツが制限されていたのですが、裏を返せばVPNやプロクシの裏技を使えばそうした地域ごとの規制を回避して楽しめるのがユーザー間では密かに人気だったようです。しかし、配信事業が成功して海外展開の規模も大きくなるにつれ、コンテンツ提供側の意向を尊重することが重要になってきたということでして、なんだか弱小ネットビジネスが半ばグレーを承知で違法なことにも手を出してユーザーを集めていたらいつの間にか業界トップに躍り出てしまい、もうグレーなことはやめますという典型事例みたいな話になっております。

 いまどきの映像や音楽に絡むビジネスというのは、いかに権利を細切れにしてそれを欲しがるところへ個別に売りつけるかが肝ですから、それをネット経由で世界中相手にして一山いくらみたいにして売られてしまうと困るわけです。一方で、今の映像や音楽の配信ビジネスはサブスクリプションサービスの流行もあって、月額課金ベースのストリーミングで定額の見放題・聞き放題、まさに一山いくらな商売ですから、そうした両者の妥協点が地域限定で流通をコントロールするというのが落としどころなのかと。もちろん、そんな事情はエンドユーザーからすればあまりうれしくない話でますが、先方も慈善事業ではなく営利事業ですからここは嫌なら使わないという形で対応するしかありません。

 さて、今後はNetflixのVPN・プロクシ対応がどれくらい効果的に行われるのかが注目点でして、同社の施策が上手くいくようであれば他のストリーミングサービスなどでも適用されていくことになるのかもしれません。もしくは、打倒Netflixを目指すようなサービスであれば逆にそうした穴を売りにして顧客獲得に利用するという手もあるのでしょうが、もちろんそれは権利商売としてはリスキーなものであるのは言うまでもありません。他国の事情もちょいちょい見ましたが、そう一筋縄でいくものでもなさそうで、さっそく違法なNetflixのサブ配信業者が出始めています。みんな考えることは一緒なんですね。いずれにしても、商用コンテンツの正規流通がネットベースに移行していけばいくほど、これまで以上にコンテンツの国・地域制限は厳密化されていく可能性はありそうですし、DRMに対する考え方や技術のあり方にも色々と影響を及ぼすようになるのかもしれません。

 この手のサービスの地域制限を回避するためのノウハウを掲載した個人サイトというのは検索すると色々見つかるのですが、いずこも「日本からVPNや串を利用するのは利用規約に反した行為の可能性があります。利用規約違反であることを認識した上で自己責任でお楽しみください」と書かれていたりするのが味わい深いです。お前らみんな利用規約違反で、下手すると違法だと分かっててやってるだろというあたりが、昨今のトレンドなのでしょうか。

 あんまり弱小なところが裁判に持ち込まれ、変な負け方をするとそれが判例とまではいかずとも先行事例になってしまうのでありまして、やはり何がしかルールがちゃんと策定されていて欲しいなあと願う次第であります。

 ご利用は計画的に。