現首相・安倍晋三さんと、元首相・菅直人さんの素敵な戦い

凄惨な福島第一原発事故そっちのけで首相同士の戦いが繰り広げられております(写真:ロイター/アフロ)

山本一郎です。暖かい東京といえど、今日はさすがに半袖だと寒い陽気ですね。

そんな寒さを吹き飛ばすような熱い戦いが東京地裁で繰り広げられているようです。

承服できない判決・控訴する(菅直人ブログ 15/12/4)

元首相の菅さんが何か怒っておるようですが、要するに以前、現首相の安倍晋三さんが自身のメルマガで菅さんの福島第一原発事故への指示について指摘した内容が虚偽であり、名誉毀損だという話です。

それが、東京地裁では「(メルマガ)記事は重要な部分で真実」と判断されてしまったわけでして、これを不服として菅直人さんは控訴したそうであります。

安倍晋三議員の虚偽メルマガ(菅直人ブログ BLOGOS 15/12/1)

福島原発めぐる安倍首相メルマガ訴訟 「海水注入中断させかねぬ振る舞いあった」「記事は重要な部分で真実だった」(産経新聞 15/12/3)

菅氏「納得いかず」安倍首相「真実の勝利」(YTV 15/12/3)

では、ここで福島原子力事故調査報告書を見てみましょう。

福島原子力事故調査報告書

<吉田所長の意志>

吉田所長は、TV会議を通じて当時目の当たりにした菅総理の言動について「極めて高圧的態度で、怒りくるってわめき散らしている状況だった」と記憶している。「もともと全員撤退などは考えたこともない。私(吉田所長)は当然残る、操作する人間も残すが、最悪を考えて、関係ない大勢の人間を退避させることを考えた。」と証言した上で、一連の全面撤退についての風聞に対して「誰が逃げたのか、事実として逃げた者がいるというのなら示してほしい」と憤慨している。

武黒フェローは、18時頃に始まった1回目の説明において、菅総理が海水注入に伴う影響についての懸念を述べたり、現場準備状況を細部まで質問しているので、菅総理の納得を得ない限り次に進むことはできないと受け止めた。特に、海水注入によって、再臨界が起きないことの説明を強く求めており、関係者は2回目の説明のために改めて準備を進めることとした。

12日17時55分に海江田大臣から海水注入の口頭命令を受けて、1号機において海水注入を既に開始していたところ、官邸へ派遣した武黒フェローから、1号機の海水注入について菅総理の了解が得られていないことを理由に注水停止の連絡が本店に入り、発電所に伝えられている。その後、官邸では海水注入についての検討結果を原子力安全・保安院等が菅総理に説明し、19時55分総理の海水注入了解が得られている。

一連の報告書が事実であるとするならば、この福島原子力事故調査報告書も「海水注入に伴う影響について懸念を述べた」り「海水注入によって、再臨界が起きないことの説明を強く求め」た菅直人さんへの名誉毀損であり中傷であるという話になってしまいます。

もちろん、菅直人さんとて、問題を大きくしようと思って為したことではないと思いますし、一国の宰相として事故の影響を最小限に食い止めるために彼なりに全力を尽くそうとしていたのだろうとは感じます。

ただ、一連の問題についてはすでに調査報告書も出て、菅直人さんの官邸での首相としての指示について、結果的に不適切と思われるものが含まれていたことは明らかになっているわけで、それをいまの安倍晋三さんのメルマガにおいて名誉毀損だ事実誤認だとやっていることのほうがおかしいと感じるわけであります。

事件を現首相と元首相の名誉毀損問題に矮小化するのではなく、危機対応において何が必要であるかを考え、当事者としてしっかりと事実関係を詳らかにするほうがいいと思うのですが、どうなんでしょうか。

菅さんとしても、譲れない何かがあるのでしょうが、まだ事実関係が良くわかっていない当時に出たメルマガで何を言われたかはともかく、これだけ事故調で経緯が出ている以上、そのころいったことが正しかった正しくなかったと揉めるのは実にもったいない気がするんですけどね。

こちらからは以上です。