AIの進化で無くなる職業が話題ですが人間がヒトであることはやめられなさそうです

お父さんの脳はないけど人間だよという時代が到来するのでしょうか。(提供:アフロ)

 山本一郎です。わずかながら仕事で人工知能を扱っている割に、あんまり可能性に未来を感じていなくて、周りがワーワー言うので疑問に思っている派です。

 で、このところ「人工知能(AI)」という単語が一気にバズワードとして様々な場所で取り上げられるようになってきました。AI自体の研究開発は今に始まったことではないのですが、様々なテクノロジーの進化によりAIを利用できそうな範囲が急速に拡大していることがその一因なのでしょう。

 そうなると今は不可能でも将来的にAIで実現可能なことを予想したくなるのが人情。こんなことができる、あんなことができるというリストがたくさん出てくるわけですが、そうするとAIで出来るならわざわざ人にやらせる必要はなくなるので、結果として人間の仕事が奪われるという話が当然出てきます。仕事が無くなるというのはイコール収入が無くなることを意味しますから、俄然多くの人が気にせざるを得ない話題でして、メディアでも格好のネタとして取り上げられることになります。おかげで今年は国内外で似たような記事をいくつも目にしました。

結局、AIに負ける心配がない職業とは?(日経ビジネス 15/4/30)

30年後、人工知能が人類を駆逐する?AIの進化で消える仕事と残る仕事(Business Journal 15/5/9)

10年後、人工知能に取って代わられる職業とは(WORKSIGHT 15/6/8)

暑い夏に背筋がヒヤリ--AIとロボットの台頭で消える10の職業(ZDNet Japan 15/8/12)

人工知能は弁護士を絶滅させていく:米国での調査結果(WIRED.jp 15/10/28)

 上に挙げたのはごく一部で実際にはありとあらゆるメディアにおいて多彩な論考が繰り広げられていました。で、つい最近も野村総合研究所が英オックスフォード大学との協同研究結果を華々しく発表したばかりです。

日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に ~601種の職業ごとに、コンピューター技術による代替確率を試算~(野村総合研究所 15/12/2)

この研究結果において、芸術、歴史学・考古学、哲学・神学など抽象的な概念を整理・創出するための知識が要求される職業、他者との協調や、他者の理解、説得、ネゴシエーション、サービス志向性が求められる職業は、人工知能等での代替は難しい傾向があります。一方、必ずしも特別の知識・スキルが求められない職業に加え、データの分析や秩序的・体系的操作が求められる職業については、人工知能等で代替できる可能性が高い傾向が確認できました。

出典:野村総合研究所

 なるほど、そうですか。ま、概ねではありますがAIに任せられないであろうと現在予測されている仕事の特徴は、論理的な思考には馴染まない人間特有のアンビバレントな側面に対応する何かといった感じなのでしょうか。機械に哲学はできないし神を語ることは無理だろうということですね。

 しかし、一方では以下のような論考もありましてなかなか興味深い事象が指摘されています。

人工知能と著作権 ~機械創作の普及でクリエイターは失業するのか?~(INTERNET Watch 15/12/1)

 この記事は基本的にAIを使って自動生成した創作物に著作権は生じるのかどうかを論考するのが目的なのですが、その中でいくつかの具体的な自動生成作品が紹介されておりまして、自動作曲ソフトが創ったバッハ風の曲などは普通に音楽として通用する出来になっています。なかなか恐ろしいのは、この自動作曲ソフトを使えば1曲作るのに1秒かからないほどに最近は進化しているというあたりです。

1秒1曲。しかも人工知能は疲れない。休まず作曲を続ければ1日に8万6400曲、1年で3150万曲強だ。これはどの位のペースかと言えば、JASRACが管理する世界中のプロの楽曲数(データベース上)の約10倍である。すごく乱暴に言えば、1電子作曲家が1年で過去のプロ作品全部の10倍に匹敵する曲を生み出す計算だ。

出典:INTERNET Watch

 下手な鉄砲も数打ちゃ当たるではありませんが、ここまで圧倒的な数を作り出せるのであれば、映像のBGM用途などの曲なら人間の作家に頼らなくても賄えるのかもしれません。つまり芸術方面の仕事であればAIに奪われることは絶対ないとは言い切れないなと。人間は意味のないものに意味を見いだすという優れた能力があります。別の言い方をすればそれが想像力だと思うのですが、もしかしたら人間味を欠いたAIの作り出す音楽の中になぜか芸術性を見いだしてはまってしまうという可能性さえあるのかもしれません。

 はたして実際のところ、どういった職業がAIの進化によってどのように淘汰されていくのかはその時がやって来てみなければ分からない部分も多いですが、今のところ一つだけ確かなのはAIはヒトという存在そのものと置き換わることはないだろうということです。もっとも、人としていかに生きるかみたいな哲学的な問題の回答をAIにたずねる時代はもしかしたら来るのかもしれないですね。鰯の頭も信心からと言いますから。

 もちろん、本来人がやるほどのことでもない作業は、いままでもAIに限らずどんどん機械化されていき、自動化の対象となって仕事が失われていきました。AIがあろうとなかろうと、どのようなものもAIやロボットの進化によって「人がやらなくていい仕事」になっていくのは当然のことです。しまいには、外科手術でさえダヴィンチの普及で人間は診断を下すだけという世界になるかもしれません。

 人間の仕事を機械やソフトウェアが置き換えて行くあいだ、人間は次の何かを探すことができます。生きるために考えることが、人間に残された聖地だと思うので、あんまり悩まなくていいんじゃないかと思ったりするんですが、楽観的過ぎるんでしょうか。

 こちらからは以上です。