ケータイ料金が家計を圧迫していて大変なんだそうです

 山本一郎です。先週までお腹の調子が低空飛行だったのですが、ヤクルト大量投入で制圧に成功しました(ステマ)。

 ところで、自民党総裁選で無事再選をはたした安倍首相でありますが、依然として内閣の支持率は微妙に低空飛行な状況と言えなくもありません。

内閣支持、最低の38.5%=衆院解散「任期満了まで」3割半ば(時事ドットコム 15/9/11)

内閣支持率43・5%↑ 消費税負担軽減策「反対」7割超 橋下新党「評価せず」53%(産経ニュース 15/9/14)

安倍内閣「支持」43% 「不支持」39%(NHKニュース 15/9/15)

 直近のデータではようやく支持が不支持を上回る数字となりましたが、安保関連法案や米軍普天間飛行場問題、さらには消費税率10%引き上げなど、国民の理解を得ることがなかなかに困難な課題を多数抱えた状況を如実に反映しているのかなと感じるところです。政府としても国民の支持をより多く得られるような話題が欲しいところではないでしょうか。それにしても、各紙の調査で支持率が割れており、なんかいろんな背景に思いを馳せてしまう日々であります。

 そうしたところで、新型iPhoneの発表日に合わせたのかどうかは分かりませんが、老若男女を問わず国民の多くにアピールできそうな提案が首相から発せられました。

安倍首相、総務相に携帯料金の引き下げを指示(ケータイWatch 15/9/12)

安倍晋三総理大臣は、9月11日に行われた第15回経済財政諮問会議で、高市早苗総務大臣に携帯電話の料金引き下げを検討するよう指示を出した。会議終了後に甘利明内閣府特命担当大臣が明らかにした。

出典:ケータイWatch

首相「携帯料金負担大きい」…引き下げ検討指示(読売新聞 15/9/12)

総務省は携帯電話大手3社に対し、料金制度の見直しを度々促しているが、首相は家計負担を軽減して消費を拡大するには携帯料金の値下げが欠かせないとみて、新たな引き下げ策を求めたとみられる。

出典:読売新聞

 お、おう…。

 総務省はこれまでも国内キャリアに対して様々な指導を行い、その結果キャリアが絶対に認めようとしなかったiPhoneのSIMロック解除さえも実現してきたわけですが、安倍首相からするとまだまだ手緩いということのようで、遂に料金引き下げにまで言及されるに至ったと解釈すればいいのでしょうか。

 しかるに、総務省では携帯電話料金などを含めた電気通信サービスの料金に関する状況を適切に把握する目的で、毎年度、電気通信サービスに係る内外価格差について調査を行っているんですね。7月末に今年度分の調査結果が出ております。

電気通信サービスに係る内外価格差調査(総務省 15/7/29)

詳細はPDF書類で公開されているのですが、スマホの料金については以下のように分析されています。

スマートフォンユーザについて、

・ 一般ユーザでは東京は7,263円であり、7都市中4番目に安い(最安…ストックホルム:4,313円、最高…ニューヨーク:10,308円)。

・ ライトユーザでは東京は7,263円であり、7都市中6番目に安い(最安…ソウル

出典:総務省PDF書類

 この結果発表を受けて書かれた解説記事もあります。

日本のケータイ料金は国際的には高いのか、安いのか(毎日新聞 15/7/31)

日本は音声通話中心のフィーチャーフォンユーザーにとって、お得な国と言える。

(中略)

スマホユーザーにとって、日本は取り立てて高くもなければ安くもない、という結果になった。

(中略)

多かれ少なかれ、各国、各キャリアも似たような状況にあり、もはやユーザーにとって、携帯電話1契約あたりの正味の通信料金を国際比較することの意義は、薄れているのではないだろうか。

(中略)

今後通信事業者の間で、よりシンプルで分かりやすい料金プランへの移行競争が巻き起こることを期待したい。そのためには消費者が、MVNO(仮想移動体通信事業者)を含めて誠実で、分かりやすい料金体系の通信事業者を選ぶことが求められている。

出典:毎日新聞

 なるほど、日本の携帯電話料金は世界的に比較してもそれほど法外に高いものではないことが分かります。もしそこに問題があるとすれば、むしろ複雑な料金体系のあり方にあるのではないかという論考ですね。

 こういう状況ですから、安倍首相からケータイ料金高いので何とかしてねと突然振られてしまった総務省の中の人はもしかしたら心外だったかもしれないですね。一応、官邸側からは事前にこういうことを発表するので後はよろしくという伝達もあったようですが。

甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨(内閣府 15/9/11)

(問)先ほど携帯電話の負担を引き下げてほしいという官邸の意向を先取りして高市さんが持ってきたというお話をされていましたが。

(答)いえ、官邸や総理からそういう指示が出るということを総務省に全く話を入れず、いきなり会議で取り上げるというわけにはいかないですから、官邸、総理の方からこういう問題意識を持っているという話が総務省に当然行っていると思います。それで先に総務大臣が発言されたのだと思います。

出典:内閣府

 根回しはあったと。

 で、高市総務相からは以下のような回答も。

携帯料金引き下げ策、年内に結論 総務相(日本経済新聞 15/9/15)

高市総務相は「家計支出に占める通信量の割合は10年で2割増えた」と指摘。「総務省は格安スマホの振興やSIMロック解除など事業者間の競争を促す努力をしてきた」とした上で、「細かい料金設定をする方法もあると思う。さまざまなアイデアをいただきたい」と述べた。

 いずれにしても、首相の名前で検討を要請したということはそれなりのメンツもかかっている状況ですから、文字通り待ったなしの最重要案件ということは間違いないでしょう。関係者の皆さまも色々と調整が大変そうではありますが、ここは頑張っていただきたいところ。これで内閣支持率が大幅に向上すれば万々歳であります。

 しかし、ケータイ料金が家計を圧迫という話については、本当のところは国内における労働環境の有り様や経済バランスなどがおかしいという話であって、抜本的な改善策は違うところにあるのではないかと感じなくもありません。以下の発言など見ると、首相ご自身もよくよく分かった上でのパフォーマンスなのかなと思うのですが。

携帯料金引き下げを首相が指示、家計負担増を懸念=諮問会議(ロイター 15/9/11)

会議では安倍首相は、「最近の金融市場に変動が見られるが、回り始めた経済の好循環を民需主導で拡大・深化させることが肝要」と指摘。そのため「過去最高水準の企業収益にふさわしいよう、賃金の継続的な引き上げや正社員化の推進とともに民間投資の拡大実現が不可欠」と強調したという。

出典:ロイター

 ちなみに安倍首相の発言を受けた週明けの株式市場はこんな感じになったりもしました。

出ばなくじかれたiPhone商戦 首相発言で携帯3社の株価急落(SankeiBiz 15/9/15)

14日の東京株式市場でNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクグループの携帯電話大手3社の株価が前週末に比べ最大で1割近く急落した。週末の11日夕、安倍晋三首相が経済財政諮問会議で「携帯料金などの家計負担の軽減は大きな課題」と発言したことが要因とみられる。

(中略)

各社は「キッズやシニア層など幅広い年齢層で利用しやすい料金プランや割引を実施しているが、今後も顧客の要望に耳を傾け努力していく」(ドコモ)、「アイフォーン発売や新たな定額通話料金も打ち出したので、影響は一時的ではないか」(KDDI)などと話した。

出典:SankeiBiz

 とりわけ、昨今経営状態が心配されるソフトバンクグループについてはこのいきなりの株安は微妙なところで、おとといこんな記事を書いたばかりです。

iPhoneも老成してケータイビジネスの曲がり角がやって来そうですね(ヤフーニュース個人 山本一郎 15/9/13)

 ここにきて、米ヤフーINCが保有しているヤフージャパン株をアリババ集団が買って、ソフトバンクとアリババでオンラインショッピングで提携するなどと華々しくぶち上げて投資銀行を蛸足状に並べて資金調達とか、そのどさくさに紛れてスプリント売却交渉などという孫正義さんらしい大技を繰り出そうとするも、米FTCに敵性認定されて悉く暗礁に乗り上げるなど、イマイチついてない感じなのかもしれませんが、副会長になったアローラさんが思ったより動きが無くて外野としては面白くありません。

国から通信3社への値下げ圧力、通信料でなく株を緊急値下げ(全力株2階建 15/9/14)

 11兆も借り入れのあるところで時価総額が低迷して、成長性を市場が認めてくれなくて株が安くなったから非上場にとかいう某ホワイトナイト北尾みたいな展開になるとは思いもよらなかったわけですけれども、そんなことはソフトバンクが大株主のヤフージャパンのサービスで書くことじゃねえなと自制しつつ打ち合わせに旅立ちます。