新興旅行サイト『Find Travel』のプレスリリースが水増し過ぎる件で

山本一郎です。私も十倍に水増しして山本十郎とかにしたいです。

ところで、先日「旅行キュレーションプラットフォーム」を名乗るDeNA系『Find Travel』というサイトで盛大な来訪者水増し事案があり、ちょっと興味深いので取り上げてみたいと思いました。

旅行キュレーションプラットフォーム「Find Travel」サービス開始1年で月間アクティブユーザー数1200万人を突破

『Find Travel』必殺技、他サイトの画像への直接リンク跡地。資源を大切に
『Find Travel』必殺技、他サイトの画像への直接リンク跡地。資源を大切に

一般的なスマートフォンユーザーに対するサイトの認知度は30位程度で、確かに数ある旅行サイトの中では勢いのあるほうですし、頑張ってほしいと思っているサービスのひとつなんですけれども、さすがに「月間アクティブユーザー数」が1,200万人を突破という盛り過ぎ事案には驚きを禁じ得ません。

外形的には、いうまでもなく日本の国内・海外旅行者は国内総数で4億7,000泊あまり、海外旅行者数が延べ1,700万人ほどであり、実数の推計は国内観光の宿泊数平均と同行者数を除すればなんとなく2,700万人、都合日本人平均で約4,100万人から4,700万人は毎年何らかの旅行を楽しんでいるということが推定で分かります。あくまで何となくの体感値にすぎませんが、家族での一泊旅行なんかも含んでおりますので、まあだいたいこんなもんなんじゃないかと思います。

旅行者数の変遷

国内宿泊観光旅行の回数及び宿泊数

「おひとりさま旅行」の増加など、物悲しい指標が満載のデータの数々
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一方、本来の意味での月間アクティブユーザー数はニールセン(旧ネットレイティングス)が一部情報を無償で公開していて、業界トップの楽天トラベルがPC、スマホのダブルカウントありで1,700万人推計のDAU。また同じくPC、スマホダブルカウントはありますが全体の利用者推移の合計は2,800万人程度で、一般的なネットサービスのPC、スマホのダブルカウント率である0.65から0.73程度を除して旅行業協会が店舗での旅行商品販売実績を加えると概ね4,300万人ぐらいになりますので、上記旅行業協会の数字と何となく合致して、たぶんこの辺が正味の日本人の国内・海外旅行の年間実数であろうと予測されます。

もちろん細かい数字はたくさん出ているわけですが、知りたい奴は金払ってニールセンから情報を買ってニヤニヤするのがいいと思います。

旅行予約サービス、スマホからの利用者増も一人あたりの利用時間ではPCが2倍以上 ~ニールセン PC、スマホからの旅行予約サービス利用状況を発表~(ニールセン 14/8/27)

さて、本件「Find Travel」は旅行予約サイトではなく、あくまで「旅行キュレーションプラットフォーム」を標榜しています。なので、上記旅行予約サイトとの純粋な比較は当然無理なのですが、ただし実需を担う旅行予約サイトよりも、旅行情報サイトがアクティブユーザーが多いというのは考えづらい現象です。

当方も比較的このようなサービスの実数に興味を持って日々暮らしておりますため、今回掲載された上記プレスリリースの中身を見て疑問に思い、Find Travel社長の井出一誠さんがFaceBookで「Find Travelが1200万MAU超えましたー!」と仰っていたので話を聞いてみると、どうもGoogle Analyticsというツールで計測した結果、1,200万人の「月間アクティブユーザー数」を突破したということらしいんです。

さすがに統計で出すパネルで重複をはじいた数字と、Google AnalyticsでサイトにやってきたアクセスのCookieを数えた数字とを比較するのは無理だと思うんですよね。

不審なので、Find Travelの広報にもメールを打って質問をしたところ、「プレスリリースに用いている数字は当社サイトにPCやスマホなどで訪問された人数のみをカウントしたもの」との回答を頂戴しました。

カラクリとしては、多くのウェブマーケターの皆さんが指摘するとおり、Google Analyticsも含めた一般的な計測ツールの仕様として「アプリごとにCookieが設定されていて、複数のアプリで見れば当然それはダブルカウントの対象となる」ということです。つまり、iPhoneからの利用者はSafariからのアクセス、ヤフーニュースなどスマホアプリ経由のアクセス、Facebookから、hootsuiteから、Twitterアプリからなどなどのアクセスは同じ人のアクセスでもすべて別人としてカウントされ、「月間アクティブユーザー」として認識されてしまうということです。

別にこれはツール側に悪意があるわけではなく、現状ではWebだと端末IDもMacアドレスもUUIDもAdvertisementIDも、何か個体識別できるものが取れない以上、Cookieによる計測に頼らざるを得ないのは仕方がないことです。

ただ、事業者側の発表がこれらのツールに依存しているのは、本来望ましいものとはいえないと個人的には思います。常識的には登録会員数の伸びや、サーバー側でカウントできるPVなど、事業者が正確に把握できる実数と単位でこれらの数値は発表するべきだろうと思うわけです。「月間1,200万人のアクティブユーザーがいます」といってもそれはCookieの数であって、それをあたかも実訪問者であるように喧伝して、例えばそれが連動広告などの営業数字に盛り込まれるのだとしたら、それは単なる騙しになってしまうのではないでしょうか。

実際、旅行関係のデジタル広告を扱っている会社が出している成果報告書を見ますと、Find Travelからの流入効率は、媒体資料に記されている数字と見比べてそこまで優秀というわけではありません(劣るわけでもないのですが、Find Travelの閲覧者の傾向からか、単価の安い旅行や、旅慣れた人からの広告参照数がほかの旅行関連のウェブ媒体よりも多く、そういう属性に強いのがFind Travelの利点だともいえます)。

やはり、これらの界隈の発表は無料会員数やリピート率、アクティブ率、月間PV数といった指標のほうが外形的に勢いの有無を判断しやすく、また類似サイト等との比較が容易だという点で望ましいのではないかという夢を見ました。