フジテレビ『27時間テレビ』ネットでの酷評と隙間感

山本一郎です。似た名前の人がフジテレビにたまに出ているようですが、それは山本太郎か山本一太です。

ところで、25日から26日にかけてフジテレビ「FNS27時間テレビ2015」と題して「めちゃ×2ピンチってるッ!本気になれなきゃテレビじゃないじゃ~ん」とかいうどう見ても社内事情を前面に打ち出したスローガンにて不退転の覚悟の放送となったようであります。

ただまあ、意気込みとは別に、最終的な数字としてはビデオリサーチで平均10.4%、瞬間風速19.1%(関東地区)ということで、とっても、こう、普通な感じであったというのは良かったとするべきなのか、微妙だと言うべきなのか、いろいろと悩ましいところであります。

コンテンツ評価の定番指標、エモーショナルバイアスで伸び悩む本件。
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というのも、テレビ業界ではみんなが慣れ親しんだGRPでなんとなく一山いくらのスポンサー広告が回っていた時代とは打って変わり、リアルタイムで属性別視聴者データが類推できるようになったり、見逃し視聴サービスからの流入を加えてコンテンツを評価する動きがここまで本格化すると、この手の「テレビ局が、テレビ局のいままでのやり方の中で、テレビ局の強いと思っている手法を最大限にやる」ことでは最終的なリーチが伸び悩んでしまう傾向が顕著になるわけであります。

簡単に言えば、いままでのテレビ局は「同じコンテンツを同じ時間帯に多くの人たちに視聴していただくこと」を価値としてコンテンツを組み立てており、その中で最高の数字を出しうるものは「ライブ感のあるもの」や「そこでしか観られないもの」にだいたい集約されます。前者はスポーツ中継であり、後者は局制作のドラマやドキュメンタリーであります。

「日本人の世帯の30%が同じ時間帯にテレビの前に座って同じコンテンツを観る」世の中が過ぎ去ったいま、いわゆる視聴率やGRPがどこまで広告主のニーズに応えられるのかイマイチ分からないところではあるのですが、逆に言えば日本人の最大公約数に「面白い」と思えるコンテンツ作りは極めて困難です。

一方、総務省のデータでは、我が国のテレビ広告の占める位置は、諸外国と同様にいまなお高い割合を維持していることが分かります。

総務省 情報通信白書 第1部 特集 「スマートICT」の戦略的活用でいかに日本に元気と成長をもたらすか

情報通信白書を何年かぶん熟読すると、分かったような気になれるのでお奨め
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細かなデータはあれこれありますけれども、総論でざっくり言うと「テレビ業界を取り巻く環境はネットの勃興で大きく変わり、最大公約数の視聴率を取る選択肢が減った」形です。ただ、世界的に見てもテレビ業界をより大きな映像産業と見た場合、”多くの人に無料で画一化された映像を観せて広告をつけて売る”従来の産業構造を維持しながら”コア客向けにカネを取って観たいものを観せる”サブ構造が構築され、世界的には映像産業の市場規模は大きくなっています。

また、これはプロ野球でもメジャーリーグでも一緒ですが、視聴者の観たい企画やキャストを定量化されたデータから導き出して、コスト効率が良い方法論を編み出す方法は可能で、二年ぐらい前から日本テレビがやり始めてそこそこの効果を出しているように見えます。取れている数字から、意味のあるアウトカム(属性別視聴率や見逃し視聴再生数など)を引き出すにはどうしたらいいのか、フジテレビが本気なのであれば早く模索しとけよと思うわけですね。

先日、ビジネスジャーナルという媒体でこんな記事が出ておりましたが、もしもフジテレビがデータ精査・分析を編成やキャスティング、企画に生かし、二次利用やイベント化、CG/VRの活用、ネット再放送、動画広告といった打てる手を全部打ってなお駄目だ、ということであれば、27時間テレビでお台場本社大爆発で顔黒く塗った亀山千広しゃちょ自ら「だめだこりゃ」ってやればいいと思うんですよ。

フジテレビ末期症状…現役アナ自虐発言連発 「誰も見てない」「挽回はもう無理」(ビジネスジャーナル 15/7/6)

ただ、実際にはフジテレビ自体は社内調整やスポンサーへの気遣いからか、やるべきことの明確化が進んでおらず、予算の仕組みが硬直していて「やるべきことは分かっているのに、何となく左右を見て前に進めない雰囲気」を感じます。朝から社内で雨が降っている感じでしょうか。

このみんな「このままじゃだめだ」という危機感があっても、方向性がはっきりしないと有効な打ち手を見つけられず、みんなで牽制しあって先に他のところでみんなやられて埋没していく現象を打ち崩すには、まずは適正・適法な形でお客様、視聴者のデータを独自で取ってみるところから初めてみては如何でしょうか。

もちろん全部嘘なんですけれども。