ドローン絡みで世の中がゴタゴタしているようです

 山本一郎です。穏便な性格ですので、ゴタゴタした話が嫌いです。

 ところで、首相官邸屋上で不審なドローンが発見される事件が起きて以来、メディアではドローン絡みの事故報道が増えた印象を覚えます。まあ、「ドローン」という単語が日本中に認識されたので話題にしやすいということもあるのでしょう。

 こういう向こう見ずな活動の数々を見ますと、少しわくわくしますが、こんなことでわくわくしてはいけないと自分で自分をたしなめたりしています。

 で、直近では以下のようなニュースがありました。

ドローン撮影で無許可の周波数使用容疑 全国初の摘発(朝日新聞 15/5/20)

昨年11月に開かれた第9回湘南国際マラソンで小型無人飛行機(ドローン)を使って空撮した際、無許可の周波数で動画の送受信をしたとして、神奈川県警は20日、空撮専門会社「フライトエディット」(東京都武蔵村山市)と同社社長(51)を電波法違反の疑いで書類送検し、発表した。社長は容疑を認めているという。

(中略)

「他社のドローンも飛行していたので、電波障害を心配し、許可を得ていない周波数を使った」と説明しているという。

出典:朝日新聞

 明らかに確信的な形で違法行為に及んでいた事例ということのようですが、「同社のドローンは撮影中に墜落し、マラソン大会関連スタッフの女性(40)がプロペラで顔を4針縫うけがをした」という傷害事故まで起こしており、もはやプロの空撮事業者としては失格の烙印を押されても仕方ないといえます。

 良くも悪くも、今日のテクノロジーを最大限に活用したドローンという飛行装置は、誰もが簡単に使えるのが大きな特徴です。しかし、誰もが容易に飛ばすことができても、一旦その制御が困難な状況に陥ると事故も簡単に起きてしまう可能性があります。事実、上記の事例では女性が顔に怪我をするという不幸な事態を巻き起こしています。

 悪質かつ無責任なドローンの運用がまかり通るようでは安全な社会と言えませんから、やはりここは何らかの法規が課されるべきでしょう。ただ、その際には闇雲にドローンの飛行を禁止するという方向ではなく、是々非々でバランスのとれたルール作りを期待したいと思います。

 さて、ドローン絡みということではもう一つ話題性のあるニュースがありました。

三社祭でドローン飛行示唆、15歳少年を逮捕(読売新聞 15/5/21)

今月15~17日に開かれた東京・浅草の三社祭で小型無人機「ドローン」を飛ばすことを示唆する動画をインターネット上に配信したとして、警視庁は21日、横浜市の無職少年(15)を威力業務妨害容疑で逮捕した。

(中略)

少年は今月9日、長野市の善光寺で御開帳ごかいちょうの法要中にドローンを落下させ、臨時の派出所に「自分が飛ばした」と名乗り出た。この後も、同14日に東京都千代田区の国会議事堂近くで飛ばそうとしているのを見つかり、警視庁に厳重注意を受けたほか、翌15日にも同区紀尾井町でドローンを所持し、同庁麹町署から事情を聞かれるなどしていた。

出典:読売新聞

 しかし、こちらはドローンそのものが問題という話ではなさそうですし、ドローンという切り口にこだわると本質が見えてこないでしょう。

 いつの時代にも世間を騒がせる青少年はいるもので、この15歳の少年もそうした一人なのかもしれません。昔ならば、盗んだバイクで走り出し校舎の窓ガラスを壊してまわったのが、今の時代はドローンで社会に一石を投じてみるということなのか。警察が威力業務妨害容疑で逮捕したのは行き過ぎではないかといった意見も見受けられますが、この場合は少年の将来を考えて早めに更正機会を設けたと解釈するのが妥当なのかと。こうした若者が現れた時、我々社会いにる大人達は、警察に任せる前にもっと適切なやり方で対応してあげることができないのかとも感じる次第です。しかるに、その大人達がこの少年を助けるのではなく、逆に誤った道へ陥れたという話もあるようです。

踊る子供、煽る大人-ドローン少年の逮捕とドローンを与えた大人の共犯関係-(Togetterまとめ)

 ここにまとめられたツイートの内容の信憑性は確かめようがないため、この情報だけからどうこうということはあまり言いたくありませんが、少なくとも警察の発表によれば少年が動画共有サイトを通じて資金を得ていたことは間違いないようです。

逮捕の少年 ドローンで撮影の動画配信で金得たか(NHKニュース 15/5/22)

警視庁によりますと、少年はドローンを飛ばして撮影した動画などを、動画共有サイトを通じて頻繁に配信していたということですが、このサイトは、動画を見た人から特定のアイテムをもらい、それを電子マネーや商品券に換えられる仕組みだったことが警視庁の調べで分かりました。

このサイトで少年が配信した動画をのべ22万人近くが見ていたということです。

少年は仕事をしておらず、親から小遣いをもらっていないにもかかわらず、15万円近くすると思われるドローンを所持していたほか、動画の撮影のために京都市や長野市などに出向いていたということです。

出典:NHKニュース

 完全に、自己顕示欲や承認欲求を満たすためにネット動画をやっている若者を大人が煽って犯罪に向かうよう示唆するような話になっていますね。

 少年が一部の大人達の慰み者のような形でのせられてこうした事件へ発展していたのだとすれば、そうした大人達のやったことは青少年への虐待行為として戒められてしかるべきです。

 改めてもう一度書いておきますが、この少年の事件はドローンとは直接関係のない話です。茂木健一郎先生が妙にベクトルのずれた感がある熱いツイートをされていましたが、本来の意味での「イノベーションの精神」とは全く関係ないことは明白であります。非常に茂木せんせらしいと言えばらしいお話ですが、もしもそういう切り口でメディアが騒ぐとしたら非常に不毛で残念な事態ということです。

ドローンを飛ばしてその映像を配信して金を得ていたって、直ちに違法じゃないし、新しいビジネスにつながるし、15歳少年に関する印象操作、ひどい。やはり日本のマスコミはアンシャンレジーム側だなと再認識。別にいいけど、イノベーションの精神、ゼロだよね。

出典:茂木健一郎

 本質的には、「ドローンが云々」ではなく、適法とはいえない行為をするよう、右も左も分からないような少年の虚栄心を煽り実施させてしまう仕組みの問題です。これ単体はイノベーションを少年が起こしたというよりは、アフリカtvやニコ生のビジネスの仕組みがある意味で良くできているからでしょう。表現の自由もありますし、承認欲求を満たすために視聴者とコミュニケーションをとり、資金の提供までされて犯罪紛いの行為を起こしてしまったのであれば、当然のことながら煽ったり資金提供した「大人」にも責任追及される可能性はあります。

 それが新しいビジネスにつながっていたのは少年ではなくニコ生をやっているドワンゴや、少年がメインで使っていたとされるアフリカTVであって、しかも善良に配信している人たちが圧倒的に多数であるとするならば極少数のこういう問題に対してサービス側の責任を追及するのも社会的に正しいとも言いづらい。そうなると、地下アイドルもKickstarterのようなクラウドファンディングも悪用しようと思えばいくらでもできてしまう仕組みだからです。

 結局のところ、この手の話はドローンのようなハイテク機器だイノベーションだという意識の高い目線のお話ではなく、クラスの片隅で行われていた「お前、なにか面白いことしてみろよ」の延長線上であって、お調子者がなにかしでかして職員室に連行されるという断ち難い連鎖のひとつに過ぎないのではないかと思ってしまうわけですね。

 やはり、ここはイノベーターの第一人者として、茂木健一郎せんせがドローンを両手に持ってどっか高いところから飛ぶしか方法はないのではないでしょうか。飛んだら魔女であり、落ちて生きていたら魔女であり、落ちて死んだら魔女だったというオチでいかがでしょう。