「面白がり」大阪府民を地方自治のモルモット扱いにするべきではない

山本一郎です。生まれは東京都中央区八重洲、育ちは東京都中野区、いまの住居は東京都千代田区という典型的な江戸っ子ですが、南海ホークスのファンです。

一連の統一地方選挙については大阪を含む近畿各所が非常に興味深い動きをしていたわけですが、日本全国で見るとアベノミクスに対する穏やかな信認を受けて自民系が優勢のまま終わったように感じられます。もちろん、各選挙の数字を見ながら、支持内容を細やかに積み上げていく必要があります。ただ、大阪府に関してはやはり地域政党「大阪維新の会」がある関係で、とてもユニークであるのも事実です。

問題は、大阪維新のやりたいことが大阪府民のために本当になっているんだろうか、ということです。個人的には、大阪「都」構想自体は面白いと思っており、真の意味で大阪府の人たちが一致してこれをやっていくんだ、頑張るんだということであれば応援したい一方、選挙結果で見ますと必ずしも一枚岩で概ねの支持を得られているとは言いがたい状況かと思います。

先般、大阪府民の置かれた現状について産経新聞に帝塚山学院大学教授の薬師院仁志さんが書かれた内容は、いまなお示唆に富む内容ではないかと思うのですが、5月17日に投開票が行われる大阪都構想に対する市民投票でこの路線がそのまま進んでいくのか、支持半ばでなお混乱するのかといった情勢になっています。

実験台にされた大阪府民 都構想にみる橋下徹(iRONNA)

5月17日に行われる住民投票もまた、大阪市を5つの特別区に分割するか否を大阪市民にのみ問うものに過ぎず、大阪都なるものとは全く無関係なのである。もちろん、投票の結果がどうであれ大阪府は大阪府のままであり、大阪都ができるわけではないし、大阪市民以外の大阪府民には投票権があるわけでもない。堺市もまた、現行の指定都市(政令指定都市)のままである。投票するのは大阪市民だけなのだから、あまりにも当然であろう。

出典:実験台にされた大阪府民 都構想にみる橋下徹

もう前提からしてお腹いっぱいですが、橋下さんに批判的な立場で論ずる薬師院さんのお話も読んだ上で、みながうすうす感じているであろう感情もさし措き、それでもなお大阪維新が一定の支持を集め関西の政治シーンの中心にいるということは、それだけ「何かを変えなければならない」「どうにかしてほしい」という民意が大阪の中に渦巻いているようにも思うのです。大阪に限らず、閉塞的な地方自治の問題というのはたくさんあります。

橋下徹という人間

「スネ夫」的生き方を是とした橋下徹の少年時代 「橋下徹研究」第1部 口達者のハシゲ

以前、ジャーナリストの佐野眞一さんが週刊朝日に「ハシシタ 奴の本性」という微妙に品のない特集をやって炎上しましたが、政党の代表としては、いままでも資質を問題視する話はありましたし、それでも乗り越えて先頭に立ってやっているのもまた事実です。橋下さんや大阪維新への期待自体は下火になりつつも、その支持のエネルギーである「既存政治への幻滅」と「積極的なメディア露出」で命運をしっかりと保っている印象です。

選挙での投票行動分析においては、党や党首のイメージはとても重要で、無党派層の投票行動を大きく左右する要素のひとつです。橋下さんの場合は、今までの分析では「風頼み」であり、実力はなくとも知名度や勢いで勝ちにいくという一騎当千型というか橋下さんの知名度と期待に賭ける単騎勝負の政党でした。

それが、元都知事・石原慎太郎さんとの合流で全国政党への脱皮を目指し、しかし折り合いがつかず挫折といったあたりから党組織の結束や議論が深まっていったのか、今回の選挙では「維新+候補者名」が浸透して、維新といえば橋下という認識だけでなくなってきました。もちろん、みんなの党の分裂と維新への合流も背景にはあったにせよ、まだまだなんだかんだ言いつつ維新勢力は引き続き勢力を保ったままいくのではないかと考えられます。

民主であれ、維新であれ、非自民の勢力が燻ぶりながらも続いていくのは、自民系の政治の安定が良い意味でも悪い意味でも活力を削いでおり、もう少し他の奴に政治を任せてみようかという民意の表れでもあります。それだけ、いまの政治に魅力がないということで、投票に行く高齢者の目から見ると積極的に「この人に入れれば劇的に良くなるだろう」という評価ではなく、「誰に投票するのもアレだけど、コイツに投票したら面白いことをやってくれるのではないか」という心意気のほうなのではないかと感じ取れるわけです。

この傾向は、大阪の選挙区は抜群に高い「投票日直前まで、投票する候補者を決めていない態度未決者」に端的に現れていて、その点では分析屋泣かせのところはあるのですが、一方で、大阪の人たちの独特で鋭い嗅覚のようなものを知ることができます。かなり本気で「野球は9回2死から」と思ってるんじゃないかと感じるぐらいに、明るい土地柄なんだろうなあと数字からは読み取れるのであります。

地方政治の観点では、大阪はすでにポイントオブノーリターンをとっくに過ぎていて、橋下さんが何をしようと早い段階で行政のリストラを強制されるような財務状況に陥るものと見られます。これはもう、彼の能力のあるなしに関係なく起きることだと思うので、高齢化対策とセットで都構想がうまくランディングしないかなー、無理かなーと外部からは感じていたりします。

でもそれは、大阪の人をモルモットにするような話ではなく、東京を含め、いずれどこの地域でも来る避けられない問題なのだということは、良く認識をしておくべきでしょう。というか、大阪をまったく笑えないのです。むしろ、地域政党のような代物があることで、議論が活発に行われ、是か非か有権者があれこれ語れる状況にあるというのは、大阪の人は羨ましいなあと思う次第です。

東京なんてカバンにたかだか5,000万詰め込んだかと思えば、後任が権限もないのに大名行列でソウル訪問ですよ。あーあ。