「低調」地方統一選における、日本人の民意(訂正あり)

山本一郎です。42歳です。いい歳なので、酒を控えようという決断をして、任意で禁酒時期を作ってみたんですが、体調がすこぶる良くなりました。最近、健康のためなら死んでもいいという人たちの気持ちが少し分かったような気がします。

ところで、今回の地方統一選挙の前半戦が終わり、いろいろと数字を見返しているんですけれども、有権者の意識に二つの変化があるようでして、興味深く見ております。

一般的には「有権者の地方政治への無関心」みたいな言われ方をされがちなものの、細かく見ていくと地方政治や議会が自分たちの生活に対してどのような影響を与えているのかについての有権者意識は引き続き低迷。その一方で、生活に対する不安は亢進しており、社会の中で自分の一票が有益なものであるという考えも低いままなので、結論から言えば無関心というよりは無力感に近いのではないかと感じるしだいであります。

細やかな数字を読み解く内容については私のメルマガで概要と解説をし、また告示日前に木下斉さんと何故か週刊プレイボーイでの対談で一部メカニズムは説明しております。少なくとも、地方議会に対する期待度が低下している分、地方経済の生活の基盤は地方政治でどのように頑張ったところで解決しない、という結論を有権者が感じ取っているようにも見受けられます。

東日本大震災の復興事業は地方創生の失敗モデルになっている(週プレnews 15/4/8)

統一地方選は“できないこと”をはっきり語る候補者を選ぶべき(週プレnews 15/4/12)

人間迷路 Vol.126 ここらで統一地方選挙(ただし前半戦)の総括でもしとくかという話(夜間飛行 15/4/16)

投票率の低調の原因分析はかなり切実なものがあるわけなんですが、統一地方選の後半戦終了をまっておそらく出てくるであろう内容は、日本の投票行動における「高齢者パワー」の実情と、そこのバックグラウンドにある「人口問題」と「地方経済の中央依存」です。特に、与野党衝突となった北海道知事選と大分県知事選は重要なファクターでありました。

投票率は低調…知事選の平均、初めて5割切る(読売新聞 15/4/13)

北海道知事選については高橋はるみ女史(無所属・自民党推薦)が四選。前回より30万票以上減らした、と北海道新聞が嬉しそうに書いてますが、低調とされる今回の統一地方選挙のなかで59%の投票率となりました。

高橋氏、道政初の4選 北海道知事選、佐藤氏善戦114万票(北海道新聞 15/4/12)

同じく注目の選挙戦、与野党が推薦候補で争った大分県知事選も告示日前の調査では他の地方選挙よりも10ポイント以上高い有権者関心があると見られ、それなりにホットな戦いになりました。前回よりも若干高い57.82%と、何らか中央政治とリンクして争われる選挙は、やはり投票率は回復する傾向があるということが見て取れます。

後半戦スタート 統一地方選おおいた(大分合同新聞 15/4/19)

つまり、争点がきちんと提示され、有権者に少なくとも与党派なのか野党派なのかが明確になっている選挙であれば、有権者も地方政治に関心を払い投票に行くのだということの裏返しでもあります。すなわち、地方政治の低迷とは政治に業として携わっている政治家や政党の力量不足の側面はどうしてもあって、最低でも地域の問題について白黒つけるべき問題を明確にし、政治的態度を表明する有権者に分かりやすい選挙を行うことができれば、自ずから投票率は改善するのだといえましょう。

そして、現在で政治の抱える問題の最たるものは、単純な話、高齢者が選挙に行くことです。もちろん、日本の社会を支えてきた高齢者が選挙に行くことは権利ですし、選挙にいって当たり前であって、若者が政治に関心を払わず選挙に行かないのが悪いのは言うまでもありません。一方で、日本社会において、特に地方と中央の問題、また世代間の問題は日本の行く末を考える上で非常に重要な問題点です。私のメルマガで指摘したところ多くの人から憤激の反響を頂戴しましたが、事実として、日本の高齢者率が上がり、有効投票数の中に占める高齢者の割合が増えると、どうしても高齢者を優遇するような政策を地方政治は打ち出さなければならないプレッシャーが加わります。

地方政治が地方経済の中だけで回っていれば、地元の高齢者の意向を斟酌する候補者が多数出て議会が占められることは何も問題ありません。

しかしながら、実際に地方経済で起きていることは、人口減少といえば簡単ですが、要するに働いていない高齢者が地方に多く住んでいる、ということです。つまり、彼らのかなりの割合は年金で暮らしており、その財源は日本政府から高齢者に支給されるお金です。

今回の選挙で、選挙区の有権者向けの意識調査において、かなりの選挙区で、従来の主要論点であった経済問題「景気、雇用」より「社会保障・年金」が上回りました。中でも、和歌山市長選ではいわゆる一区型選挙区であると誰もが思っていたところへ、地方選挙に関わる有権者の主要な関心政策に社会保障が早くも躍り出たというのは重大です。大阪以外での維新の会低迷を分析するよりも、この高齢者に関する政治のムーブメントについて、もう少し細かく調べていくべきなのではないでしょうか。

言うべきことはたくさんありますが、In Depthで安倍宏行さんが興味深い論考を挙げておられました。これから政治的にマイノリティの度合いが高くなる若者の政治参加の促し方は重要で、老人天国云々は別としてももう少し切り口を考え、投票にいってもらう仕組みは大事だよなあと思う次第であります。この方面におかれましては、女性問題に充分ご留意のうえ引き続き鋭い論評をしていただきたいと願っています。

[安倍宏行]【低調統一地方選にも一筋の光】~若者・女性の政治参加が不可欠~(Japan In Depth 15/4/14)

最後になりますが、選挙分析をやる側も、従来どおりの支持政党別その他の方法で有権者意向を占う方法を考えなければなあ… と思案するところであります。8月をめどに、地方政治や高齢化問題についての調査結果と論考をまとめた論文や本でも出そうかと思っております、ご期待ください。

(訂正 16:43) 大分県知事選のくだりで、選挙前に執筆した予定校が混ざってしまいました。内容については添削し、訂正しております。ご指摘くださった方、ありがとうございました。