渋谷和宏さんが「若い人たちは海外に行かなくなった」と微妙な説を披露した件で

まあまあ順調に海外旅行者数が維持されているグラフ。

 山本一郎です。年の三分の一ぐらいはトラベラーです。

 先日、渋谷和宏さんが「若い人たちは海外に行かなくなった」という微妙な話を掲載していて、何これ感があったんですよね。円安を感じている国民が多ければ為替レートで不利になる海外旅行を忌避して国内旅行でのんびりするなどのレジャーのオルタナティブは普通に起きることなので。

なぜ若い人たちは海外に行かなくなったのか 危機意識を募らせる国と旅行会社(幻冬舎plus 15/1/23)

しかし海外旅行者の減少は実は1990年代の円高時代からすでに始まっていた。大手旅行会社の担当者は「高齢者向けの高額ツアーを除くと、海外旅行ビジネスは長期低落傾向が続いている」と言う。

 とりわけ落ち込みが目立つのが20代、30代の若い男性だ。別の旅行会社の幹部は「若い男相手の海外旅行はもう商売にならない」とまで言いきる。

出典:なぜ若い人たちは海外に行かなくなったのか 危機意識を募らせる国と旅行会社

 そんな馬鹿な。国土交通省の元データ見てみたら、ぜんぜん違う数字がそこに掲載されていてまぶしいわけです。「円高の時代から海外旅行者が減少していた」というのは明らかにガセネタですね。せいぜい横ばいで、人口構成を考えたら率としても決して下落はしていないというデータしかありません。渋谷さん… どういうことなんでしょう。

90年代、バブル崩壊で経済危機後も旅行者が回復し順調に推移しているグラフ
90年代、バブル崩壊で経済危機後も旅行者が回復し順調に推移しているグラフ

 法務省の出入国管理統計を見ても、大きく下落するようなインパクトはなく、日本の人口構成の変容とともにニーズにあった規模の出国者が各年代コンスタントにいる、としか読み取れません。

政府統計

 日本人が減少すれば、それに伴って前年対比などの指標が下落するのは当たり前のことで、右肩上がりの旅行者数の確保なんて画餅を考えず、また減少しても「外の世界への興味を失ったからだ」なんて的外れな論評をせずに、淡々と規模の縮小を受け入れるしかないんですよね。

「着実な縮小計画」を怖がるな(日経ビジネスオンライン 15/1/23)

 民間の日本旅行業協会が掲載している統計データを見ても、そもそも海外旅行においては2012年にシニアの海外旅行ブームに引っ張られる形で海外旅行が過去最高ののべ1,850万人、年代別の構成比率も20代、30代ともに2%の低下も、人口に占める割合の減少幅を考えればほぼ横ばいという数字になっています。

旅行者数の変遷(2014年度)(日本旅行業協会)

海外旅行者の性別・年齢階層別構成比率

 と思ったら、データの出典はさっき見た法務省の統計でやんの。「ほーん。法務省と同じ結論に民間も落ち着いてるんだな」とか一瞬でも思っちゃった自分が恥ずかしいです。

 さらに、渋谷さんの「年末年始の旅行者が落ち込み」というネタを冒頭に持ってきていたので興味深かったんですが、結論から先に言うと2010年ぐらいまで年末年始の旅行先として人気だった韓国中国香港が敬遠されて、国内旅行に吸収された感じですね。この話は仮説にしか過ぎず、反論というわけでもないんですが、少なくとも「日本人の海外旅行熱はこのところめっきり冷え込んでいる」というトーンは読み解けません。

5.海外旅行者の旅行先トップ50(受入国統計)(日本旅行業協会)

 そんな「若者の海外旅行離れ論()」に対して、トリップグラフィックスが人数ベースではしっかりと反論していました。

若者の海外旅行離れって本当?

元画像がでかすぎるけど、人数ベースの議論はこれが決定的じゃないでしょうか。
元画像がでかすぎるけど、人数ベースの議論はこれが決定的じゃないでしょうか。

 いわゆる若者の絶対数不足による各分野での「若者の○○離れ」現象の最たるもので、その原因は今の団塊の世代前後が子供をたくさん生まなかったからで、解決としては社会現象の理由を若者に押し付けない理性をメディア関係者がしっかりと理解することなんじゃないかと思うわけです。

 で、問題の設定としては「なぜ若い男は海外を目指さなくなったのだろうか」ではなく、「なぜ若い男は日本の大手旅行会社を使わなくなったのだろうか」であって、率として別に若い人の海外旅行頻度は減っていないのに海外旅行を扱う旅行業界は苦しいのは何故なのかという話にするべきだと思うんですよね。

 この辺もスマホの影響にされちゃうんでしょうか。まあどうでもいいんですけど。