赤字14億円も想定通りと豪語するGunosyが色々な意味で話題です

 山本一郎です。今下期は大幅黒字でも晩御飯は家内の手料理が最高です。

 ところで、しばらく前に最近盛り上がっているよね(棒)という感じで、拙ブログにてニュースキュレーションアプリの話題を取り上げました。

猫も杓子もニュースキュレーションアプリへ参入の時代到来(14/8/19)

 で、その中でも突出した資金調達力と並々ならぬ資金投下による広告展開で際立っていたGunosyでありましたが、先頃第2期決算公告が開示され、またもや世間の熱い視線を独り占め状態です。

Gunosy(グノシー)第2期決算公告(ベンチャー企業やスタートアップIT企業の決算公告を調べるブログ 14/08/29)

利益剰余金:-1,438,894千円

当期純損失: 1,393,673千円

(中略)

多分ほとんどをCMにつぎ込んで会員数の増加に費やした状況かと思います。

(中略)

今後はもう一度資金調達すると読んでいます。今ままでもどう売上げを上げて黒字化するかという点に関しては発表されていないように思います。

(中略)

今のままだとマネタイズするまでのプロセスが若干難しいのでこの辺をどう考えているかが公表されて欲しいなと思います。

出典:ベンチャー企業やスタートアップIT企業の決算公告を調べるブログ

 淡々とした語調で記されなかなか味わい深いです。もうちょっと熱い感じだとJ-CASTニュースの記事が煽り気味な見出しでまさに平常運転。

ニュースアプリ「グノシー」赤字13億9300万円 強気の拡大戦略、成功と失敗の分岐点にある(J-CASTニュース 14/9/1)

当期純損失13億9300万円と、巨額の「赤字決算」を発表したグノシー。2014年8月29日の官報に掲載された、同社第2期(2013年6月1日~14年5月31日)の決算公告で確認できる。さらに、売上高が3億5900万円なのに対して、販管費が16億2980万円と目立って多い。

(中略)

決算公告にある「販管費16億円」のうち大部分は、広告宣伝費とも考えられそうだ。

(中略)

出資を受けて「カネ」はあるが知名度が低いネットベンチャーが、テレビCMを通じてアピールするのは珍しいことではない。ITジャーナリストの井上トシユキ氏は、「近年ではソーシャルゲーム会社が同様の手法を取っていました」と話す。グノシーの場合、確かにダウンロード数はCM後の方が増えている。明確な数字は発表されていないが、競合他社と比べて圧倒的な差をつけるまでには至っていないようだ。

出典:J-CASTニュース

 いつか誰かが来た道をGunosyも辿っているということでしょうか。確かにソシャゲも大規模広告出稿でユーザー獲得というブーストに手を染めておりましたが、あちらの場合、今は禁止されてしまいましたがその当時はコンプガチャという伝家の宝刀があり、いくらでも金を稼いでくれるまさに打出の小槌状態でした。しかし、今のニュースキュレーションアプリにそういう仕組みはありませんから、同じ事をやっても広告費で金が出て行く一方で、全く儲けがないという状況も考えられます。

 他人事ながらどうするのだろうと思っていたところが、上記のような報道があった翌日辺りから今度は妙に景気の良い記事がわらわらと露出し始めております。

グノシー、500万DL突破 赤字14億円も「想定通り」(withnews 14/9/2)

ネットの一部では「運転資金が近く底をつくのでは」などの声が相次いだが、同社幹部は取材に対し「全く問題ない」と話した。

(中略)

グノシーの木村CEOは「ニュースキュレーションだけではなく、スマートフォンのポータルを目指す」とも明言。例えば、タクシーの配車なども同じアプリでできるように機能を拡充していくという。国内外の市場開拓と機能の増強。その拡大路線に、いまのところ変更はないようだ。

出典:withnews

 そうですか。

ニュースアプリ「グノシー」が500万ダウンロード突破(マイナビニュース 14/9/2)

グノシーのユーザー像、自己投資に積極的なバリバリのビジネスパーソン(マイナビニュース 14/9/2)

グノシー、ネイティブアドを10月開始へ--ユーザーの約半数が「毎日利用」(CNET Japan 14/9/2)

 この辺りになると、もはやGunosyの発表をそのまま垂れ流す単なるPR記事と何が違うのかよく分かりませんが、もしかしてこれが今話題のネイティブアドというやつなんでしょうか。CNETの記事には「関連タグ: 広告」という表記もありますが、これは単に広告にまつわる話題を扱っているということなのか、この記事そのものが広告であることを示すのか不明であります。

 いずれにしても、上記の記事で出てきてる諸々の数字は、同社が公開した媒体資料の中に書かれていることです。興味のある方はPDFで参照可能ですので下記リンクからどうぞ。

Gunosy媒体資料 2014 10-12(Gunosy)

 広告クライアント向けの媒体資料などというものはどこも似たりよったりですが、そこに書かれている媒体説明の数字や条件等が具体的かつ詳細になればなるほど、そのデータは一体どこから出てきたのか気になるのも人情です。しかし、その出所を明らかにするのはなかなかにむつかしいようですし、そこを突っ込まれると誰も答えられないというのもよくある話でして、あまりいじめるとブーメランが返ってきそうで怖いですね。

Gunosyの広告媒体資料、「ユーザー全体の80%が週1度以上閲覧。毎日見ているのは全体の50%」 「年収700万以上が25%」とのことだけど、調査概要やサンプル数、実査機関などがなにも書いてなさそうなんだけど俺の見落としかな?http://gunosy.co.jp/downloads/gunosy_salessheet_2014_10-12.pdf

出典:田端 信太郎

 それにしても、ネイティブ広告の出稿料は1週間掲載で120万円から。しかも、別途で記事制作費が発生するようです。これを高いと見るか安いと見るかはクライアント次第なんでしょうが、Gunosyのユーザー像は「第一線で活躍するビジネスマン、ビジネスウーマンで、プライベートも充実させつつ自己投資も怠らない」とありますから広告を出す側もちょっと期待してしまいそうです。広告枠が売れまくり、在りし日のソシャゲが誇ったコンプガチャのように稼げるといいですね。

……と、ここまで書いてボンヤリしていたところが、とんでもない報が入ってまいりました。

グノシーの木村新司共同代表が「退任」したことが判明! 大型資金調達を牽引(弁護士ドットコムトピックス 14/9/3)

グノシーの法人登記簿によると、木村氏は8月28日付けで代表取締役を退任した。同時に、取締役も退任している。9月3日現在、会社のホームページの役員一覧からも、その名前が消えている。

出典:弁護士ドットコムトピックス

 弁護士ドットコムというのはこういうネタも話題にするのだなという不思議な感慨もありつつ、事態の急展開ぶりに驚いた次第。で、なんぞなんぞと思っていたら、TechCrunchがかなりステキなポイントを突く記事を上げてきました。

グノシー木村氏が代表退任、真相は「任期満了」ではなくグリーとの訴訟リスク回避か(TechCrunch 14/9/4)

業界関係者への取材を続ける中で、「実はこのタイミングでの退任発表には、グリーとの競業避止義務でのトラブルを回避する目的があるのではないか」という話を何度か聞くことになった。

出典:TechCrunch

 どういう経緯で岩本記者が「グリーとの競業避止義務でのトラブルを回避する目的」という推論に至ったかについては是非リンク先のTechCrunch記事をご覧いただきたいと思いますが、現状Gunosy側ではこの論考を裏付けるための岩本記者からの問い合わせに対しては知らぬ存ぜぬという回答しかしていません。まあ、さすがにそういう事情があることは知っていたなどと答えてしまうわけにはいきませんからね。

 ただ、本当に競業忌避云々で共同代表を降りるんだということならば、そもそもなぜ共同代表に就任したのか、またスマートニュースにGREEが銭突っ込んだ時点で騒ぎになるだろうにどうしてこのタイミングなのかというのは不審に思うところではあります。

 面白いのは、この一連の事実が公になった後にもう一度withnewsの記事を見直してみたところ、「木村新司共同最高経営責任者(CEO、当時)」と表記が微妙に修正されていたことです。さらに先に引用した部分についても「グノシーの木村CEOは」が「木村氏はCEO在任中」と書き換えられておりました。まあ、こうした修正がこの記事の意味するところを大きく変えてしまうものでもないのであまり目くじらを立てることではないのでしょうが、一度公開された記事が何の説明もなくあっさりと書き換えられている辺りになんとも居心地の悪い思いをしました。ちなみに、withnewsは朝日新聞系のネット媒体であったりします。

 いずれにせよ、本件についてはニュースアプリ界隈が単なるバブルなのか、バイアウトでどうにかなるところが出てババ抜きみたいな状態になるのかといったあたりは大変に興味深いところであります。推移を生暖かく見守りたいところですね。