スマホ向け広告の金儲け臭さを感じ取るユーザー心理

山本一郎です。広告とか踏む踏まれる自体あまり興味ありません。

まあスマホの広告がウザイというのはスマホユーザー万人が普段当たり前に感じていることだと思うわけですが、そういう庶民の気持ちをわざわざ改めて調査した結果を取り上げた記事が出ておりました。

スマートフォン広告にイラッとした経験、ある?(Business Media 誠 14/6/2)

スマートフォンの画面上に広告が表示されて、誤って押してしまったことはありますか? ジャストシステムがスマホユーザーに聞いたところ、62.8%が意図せずにクリックした経験があることが分かった。

出典:Business Media 誠

「62.8%が意図せずにクリックした経験がある」という数字は素晴らしいですね。Web画面やアプリ画面の設計において、明らかにユーザーが間違ってバナーをクリックすることを期待して設計してる開発者は決して少なくないと想像されますが、彼らのそうした地道な苦労がここに成果として遺憾なく発揮されているということでありましょう。

もっとも、そうしたクリック誘導については、「58.1%のユーザーが不快感を覚え、66.7%のユーザーがストレスを感じ」ているわけですから、ある意味で開発者の皆さんはユーザーに喧嘩を売っているに等しいという話でもあります。このあたり、広告収入によるアプリの改善部分や採算のところとどう両立させるかが問われるわけですよ。で、その結果、喧嘩を売られたユーザーの20.3%は、なんと「クリックを誘導したアプリをアンインストール」したこともあるそうですから、なかなか恐ろしい結果であります。しかしながら、奇特とも言える6.0%のユーザーはそうした意図せずクリックしてしまった結果「商品やサービスを購入」した経験があるそうですから、こうしたお客様だけを相手に開発するのが正しい開発者の心意気ということなのかもしれません。

で、上記記事を読んだ一人の方が興味深い論考記事をブログに書かれておりました。この方は地域情報CGMサイトの運営に携わっているようです。

スマホユーザーの過半数が嫌儲かもしれなくて震えた(sakedrink.info 14/7/3)

インターネットにおけるコンテンツ基本無料のエコシステムは広告収益に寄って支えられているといって差し支えないかと思うのですが、「広告踏んで!」というコンテンツ供給者側と、「広告なんて要らねえしタダでコンテンツ読ませろ!」という需要者側の意識がここまで盛大に食い違っているというのは甚だ気持ちが悪い状況といえましょう。情報発信にもコストがかかるわけで、それを無償で与えることが前提となってしまったのなら、インターネットには有閑貴族の施しと、有償でも発信したい何らかの思惑を持った情報(広告・宣伝・承認乞食・プロパガンダetc.)しかなくなってしまいます。

出典:sakedrink.info

商業Webコンテンツの多くが広告モデルに頼らざるを得ないという不幸な現状は確かにいかんともしがたく、できれば広告バナーを踏んで欲しいという事業者側の思惑は大いに理解できるのですが、だからと言ってエンドユーザーがその広告を不快に思い踏まない状況を簡単に「嫌儲」であるとする見方はどうなんでしょう。例えば、天下の大手新聞サイトをスマホで閲覧すると、なぜか記事内容には全然関係ないエロコンテンツの広告バナーが表示され、しかも画面をスクロールするたびに間違ってそのバナーを押してしまいそうな事態に何度も遭遇すると、さすがに広告バナーはウザイとしか思わない人が増えても仕方なかろうと感じます。

また、人にはそれぞれ好き嫌いがありますから「子どものころに見たハローマックやトイザらスの折込チラシのようなワクワク感を持てる広告が増えたら喜んで広告に触れてくれる人が増える」というのも、もしかしたら逆にさらに嫌う人が増える可能性もあります。この辺りは広告のマッチング技術が向上すれば何らかの解決が見えてくるのかもしれませんが、一方でそうしたマッチングするための情報収集がプライバシー問題にも抵触することになり、なかなか悩ましい話でもあります。

それはともかくとして、この話題の元ネタになった調査の内容を改めて確認してみたのですが、ちょっとひどいですね。

今、話題のネイティブ広告は、「騙された気分になる」(Fastask)

株式会社ジャストシステムは、セルフ型アンケートサービス「Fastask(ファストアスク)」を利用して、 スマートフォンを利用している10代~60代の男女1,297名を対象に『スマートフォン広告に関する調査』を実施しました。 詳細をまとめた全29ページの調査結果レポートをダウンロード提供いたします。

出典:Fastask

おお、いまをときめくジャストシステム様じゃないですか。ご健勝のようで何よりです。

詳細資料をPDFでダウンロードして目を通してみたのですが、いわゆる「今、話題のネイティブ広告」に関する質問がまるでダメです。

Q17.あなたは「ネイティブ広告」という種類の広告手法を知っていますか?

なんですかねえ…。

この質問では、ネイティブ広告の定義がまったくなされておりません。まあ、ネイティブ広告という言葉を聞いたことがあるか否かという質問であればこれでも良いのですが、そうではありません。まず、回答者の65.5%がネイティブ広告は知らないと答えてましてこれは良しとします。しかし、回答者の9.0%は「ネイティブ広告と知った上でクリックした経験がある」、また回答者の25.5%は「ネイティブ広告とは知らずにクリックした経験がある」と答えているんですね。ネイティブ広告が何を意味するかも定義されていない質問で、「ネイティブ広告とは知らずにクリックした」という回答設定もどうなんだろうかという。

さらに「ネイティブ広告について、あなたの状況であてはまるものをお選びください」という質問が続き、こちらの回答項目では「印象に残る」「クリックしたくなる」「騙された気分になる」「他の広告手法より好感が持てる」「ストレスを感じる」「嫌悪感・不信感を持つ」などが列挙されているわけですが、ハッキリ言って世界中の広告業界の中の人でさえ「ネイティブ広告」とはなんぞやという議論が沸騰中であり、何をもってしてネイティブ広告とするのかも定まっていなような状況でするから、こういう適当なアンケートを実施すること自体がデタラメではないかと思うわけです。明らかにネイティブ広告というバズワードに振り回されている情弱クライアントをひっかけようという目論見が見え見えというか、もしかしたらアンケートを作った本人達自身さえもがネイティブ広告が何であるかをよく判らないままでやっているのかと疑える節もあります。

もうちょっと考えて設問作ってくれないと、結果を見た人たちが「ああ。お金をどぶに捨てたのだなあ」と風情を感じる状態になるわけですね。

まあ、ネイティブ広告については業界の人達が熱く語り合ってなにがしかの新しい儲け口を作り出そうという感じなのでしょうが、まずはエンドユーザーを騙すような不愉快な手法だけはやめていただきたいと切実に願う次第です。

先日、ラーメン二郎について調べた記事を別で書いたわけなんですが、やっぱこう、ネタやテーマはちゃんと絞って質問したほうがいいと思いますよ。

【コラム】ラーメン二郎を日常的に食ってる人は「かわいそう」と思われてるらしいよ

40歳過ぎると不摂生は敵だ、というつもりで頑張って今日も徹夜仕事をしたいと思います。