音声通話定額を巡っての携帯業界横並びの美談

山本一郎です。音声通話が多いほうです。

携帯電話の音声通話定額サービスを巡りドコモとソフトバンクがいち早く施策を打ち出した後、最後に残されたKDDIは一体どう対抗するのかと見守っていたわけですが、あまり面白い展開になることもなく再び事実上の三者横並びという結果に終わりました。

KDDIも国内通話定額プラン導入、3社2700円で横並び(ロイター 14/6/25)

KDDI(中略)は25日、国内通話の定額サービスなど新しい料金体系を8月13日から順次導入すると発表した。国内携帯電話会社で初めて、家族間でデータ容量を贈り合える仕組みを採用する。料金はすでにサービスを始めているNTTドコモ(中略)や7月1日に開始予定のソフトバンクモバイルと同じ水準に設定、価格競争を回避した。(中略)3社の料金体系はほぼ同じとなり、「協調的寡占」の側面が色濃く出た格好だ。

出典:ロイター

今回のKDDIの発表については、IT系ニュースサイトなどが概ね事実のみをなぞる報道に徹しているのに対して、ロイターはしっかりと「協調的寡占」といった言葉を使うなど業界のあり方に対して批判的な切り込みを見せたのはなかなか痛快です。

まあ、仰るとおりですわね奥様。

ロイターはさらに楽天リサーチの調査結果を引き合いにして通話に対するニーズが年々低下している現状を指摘した上で以下のような論考を記しています。

auの音声ARPUは2014年3月期が1870円。5年前の2009年3月期の3590円だった。今回の通話定額サービスの導入は、音声ARPUの下落に歯止めをかけたいという事業者サイドの思惑も透けて見える。

出典:ロイター

ここでは記事の流れからKDDI(au)1社のデータを取り上げていますが、音声ARPUの下落に歯止めをかけたいと思っているのは当然ながら携帯キャリア全社の思惑でもありましょう。

時間が前後しますが、音声通話定額制に基づく新料金プランを実施済みだったドコモの株主総会では、やはり事実上の値上げを狙った施策なのではないかという質問も出ていたようです。

ドコモ株主が質した「音声定額」への疑問(東洋経済 14/6/19)

「あまり通話を利用しないユーザーには値上げになるのではないか」「定額プランの中で基本料を設定すべきではないか」といった質問に対し、吉澤和弘常務は「音声通話はコミュニケーションの基本中の基本だと思っている。これまでは料金が高いということで抑制されていたと思うが、定額プランでもっと楽しんでいただきたい。実際、利用が少なかった20代女性の通話が伸びている。オプションとすることも考えられるが、複雑になるのでシンプルな設定にした」などと説明した。

出典:東洋経済

ものは言い様という感じがありありとしますね。もちろん言いたいことはよく理解できますが。複雑になるのを避けてシンプルに値上げしたということでしょうか。

で、このような現状に対して、当のKDDI社長である田中氏は発表説明会の質疑応答の場で「通話定額の料金、2700円はあまり通話しない人にとっては高いのでは?」という問いかけに対して以下のように回答されたようです。

プロ「いわゆる少し高いかなという気もしないではない、本音では」 本音言っちゃったwwww

出典:Junya ISHINO/石野純也

「あれ、高いよね」←ソフトバンクのプランに対して 「よう安いって書きますねー」←ドコモのプランに対して New!「少し高い気がしないでもない、というのが本音」←自社のプランに対して

出典:Junya ISHINO/石野純也

いや、この人は本当に天然なんでしょうね。もしこれが冷徹に計算しての言動だとするとすごく恐ろしいわけですが……。ちなみに「プロ」というのはネット民界隈でよく使われる田中社長の愛称です。

いずれにしても、中の人にとっても「少し高い」通話料金設定が今後ユーザー動向にどう影響するのかは気になるところです。

で、こうした大手3社横並びなんですが、他にもどうやら横並び施策が開始されるようです。

ドコモがスマホ画像を圧縮する「通信の最適化」を導入へ、その狙いは?(日経トレンディネット 14/6/25)

NTTドコモに関しては、確認したところ「現在は通信の最適化はしていない」とのことであった。だが2014年6月より店頭で契約するユーザーに対し配布している「ご利用にあたっての注意事項」で、「Xi-spモードパケット通信において、本書面でのご説明に基づくお客様の同意のもとで、画面の表示速度や動画の再生時間を早くするための通信の最適化を行う場合があります」といった旨の説明をしているとのことだ。今後同意を得たXiスマートフォンのユーザーを対象として、通信の最適化が導入される可能性は高い。

出典:日経トレンディネット

「通信の最適化」という話については、しばらく前に拙ブログでも取り上げたばかりの話題です。

ソフトバンクモバイルを中心に、業界界隈における「通信の最適化」問題が再燃したようです(14/6/6)

そのときはソフトバンクの話でしたが、日経トレンディネットの記事を信用するならドコモも同じ方向へ向かっている可能性があるようです。で、こうした状況から以下のようなことが考察されます。

今後は、一層の高速通信方式が導入されることで、ユーザーがやり取りするデータ量がさらに増大することが予想される。それゆえ、キャリア側も新たな通信の最適化を導入してくるかもしれないし、ユーザーに対して、使用した通信量に応じた料金の応分負担をさらに求めてくる可能性が高い。

出典:日経トレンディネット

携帯3社仲良く揃って、今度は通信の最適化を巡ってのオプション料金競争みたいなものが起きる可能性は十分にありそうです。で、またきっと蓋を開けてみたら事実上の横並びになって、ユーザーからすればどこを選んでも単なる値上げというオチが待っているのかもしれません。仲良きことは美しきかなという武者小路実篤の言葉を思い出してしまいました。まさに美しい国であります。

ここで美しい協調の世界に漬物石を投げ込むべくmixiあたりが通信業界に参入してですね、